第7話 今日の運勢は大凶
おはようございます!!
いやー、ここが魔境の森ではなかったらピクニックを始めたであろう清々しい晴天ですね!!
朝ごはんは昨日の夕ご飯と同じ銀狼の肉です!! 調理? 知らんがなっ!! 女子力皆無のマンガ肉ですっ!!
さて、お腹も溜まったことですし、散策始めますか。
本当にここはどこなんだか……。魔境の森にいるっていうのに、まだ1匹も魔物と出会ってないのですが……? これはさすがにおかしい。
まぁ少なくとも不死者が蔓延る北側ではないね。
【探知】スキルを手に入れるため、魔力を薄く円状にして放ちながら歩く。魔力を放って敵を探知する……異世界の定番でしょ(?)
これで【探知】スキルを手に入れられればいいけど……。
「きゅっ!!」
「――っ!!」
突然現れた真っ白な兎。……どうやら【探知】スキルは手に入れられなかったみたい。そしてこの魔力を放つ行為も無駄なのかもな。
てゆーか! な、なんて可愛いのっ!!
このつぶらな瞳……まるで黒真珠のようっ!! 自然とこの子を守りたくなってくる。
本当になんなんだ……びっくりするくらい可愛い……。だからこそ、何かがおかしい。
違和感を覚えた私は【鑑定】する。
「――【鑑定】――」
【名前】アムール ♂
【種族】桃花兎
【スキル】
好感Lv5 土魔法Lv1
【総合戦闘力】40
【ランク】F
――戦闘力は皆無だが、その愛らしい見た目から人間には大人気。それ故に乱獲され、生息数が激減し、現在は幻の魔物と呼ばれている。
【好感】
――強制的に好感を抱かせる。相手の強さに比例して魔力消費量が変動する。対象が己に嫌悪感や疑念を抱いていたり、スキルを看破されれば効かなくなる。
尚、このスキルを持っていると本人の意思関係なしに常時発動する。
絶対この【好感】ってスキルのせいじゃん!!
気づいた途端、さっきまでの好感が一気に霧散する。ただ、この可愛さは本物らしい。
なんで『魔境の森』にFランクの魔物がいるんだ……? と一瞬だけ疑問に思ったけど、このスキルと見た目があれば、高ランク魔物も虜にできるのだと納得する。
ということは……? 近くにこの子を守っている強い何かがいるってことだよね?
え、私が近くにいたら「お前がこの子を攫ったのか!?」って勘違いされるかも……?
嫌だ嫌だ、またしても強力な魔物なんかと会いたくないよっ!!
「きゅっ」
「ひっ!!」
お願いだから、来ないでちょーだい!!
そんなキラキラした目で見つめてもダメったらダメっ!!
「…………」
少しだけなら、撫でてもいいかな……?
桃花兎に手を伸ばした瞬間――
「許可無く私の敷地内に入ったのはだぁ〜れだ?」
圧倒的な威圧感を放つ美しい女性が突如現れる。
そんな……いくら私が【探知】スキル持ってなくても、こんなに強大な気配が近づけばさすがに気づくはず。なのに気づけなかった……。それだけ気配を消すのが上手いんだ。
やばい、感覚的にソリテールよりもやばいことがひしひしと分かる。
(――【鑑定】――)
【名前】カレンデュラ ♀
【種族】???
【スキル】
水魔法Lv5…………
【称号】
???
【総合戦闘力】???
【ランク】???
――鑑定レベルが不足しているため、表示不可。
そんなっ‼
こんなときに【鑑定】が使えないなんて。見た目が少し人族に似ているけれど、明らかに髪とかが違う。
髪が植物の蔦みたいで、頭には大きな花が咲いている。それに……ありえないくらい美人だし良い香りがする‼
これではっきりしたわね。ここは魔境の森西側、そしてこの人は妖花女王。
「アムールに手を出そうとするなんていい度胸じゃなぁい? どう喰ってやりましょぉか?」
え、いやぁそのぉ……手を出そうとしたのではなく、ついていたゴミを取ろうとしただけでぇ……ってこんな言い訳通じないか。
というか相手はもう、やる気満々のようですね……。対話なんて到底できそうにない。
なんで昨日に続いて四天王に会っちゃうかな⁉ もしかして運ないの!?
ソリテールよりも凄い威圧感。逃げられるわけがな――ダメダメ‼ ネガティブ思考が一番勝率を下げる行為っ‼
なんとか考えろ、どうすれば生き残れる?
策を考えようにも、敵を知らないからどうにもできない……。
【鑑定】スキルを上げれさえすれば……。でも、この3年間レベルを上げようと努力しても駄目だった【鑑定】スキルが、都合良く上がったりするかな? ううん、やってみなきゃ分からないよ。やってみるしかない!
見ろ、相手の全てを、隅々まで見落とさないように、視ろ――‼
(――【鑑定】――)
【名前】カレンデュラ ♀
【種族】妖花女王?
【スキル】
水魔法Lv5 風魔法Lv5 闇魔法Lv1 無属性魔法Lv5 鞭Lv5 体術Lv4 魅了Lv5 隠蔽Lv2 憤怒Lv6…………
【称号】
植物の聖母……
【総合戦闘力】2000
【ランク】SSS
――鑑定レベルが不足しているため、一部表示不可。
魔境の森の四天王の一人。植物系の魔物をこよなく愛しており、たとえ敵でも植物系の魔物なら慈悲を施す。それ以外の敵は容赦なく喰らう。
視れた……‼
一瞬だったし一部だけだけど……ソリテールと戦ったときみたいに両目が熱くなった。なんでだろう? いやいや、今はウルトラピンチの状況なんだから、こんなこと考えてる暇はないね!
鞭スキルがあるってことは、あの蔦みたいな髪が伸びてきて攻撃してくるのかも。逃げようとしても一瞬で捕まっちゃうだろう。
相手には体術があるから、近距離戦を挑んだら死ぬね。
あれ、逃げるのも近距離も駄目? 詰みですか?
「あら、あなた……僅かだけど植物の気配がするわぁ」
え? 植物の気配って何? 私、植物身に着けてないけど?
「どれどれぇ」
妖花女王は瞬きしている間に距離をつめてくる。
ち、近いぃ‼ もう目と鼻の先っ‼
妖花女王は私の目をじいっと食い入るように見る。何分経ったか……いや、多分数秒だけどさ、こんな近くに敵がいたら生きた心地しないって!
妖花女王は満足したかのように、顔をほころばせて笑う。
「あはっ♡ ほんとぉに植物が君の瞳に存在してるわぁ。一瞬だったけど……そんなんで私のことは騙せないわよぉ」
私の瞳に植物が存在してる?
えっと、比喩ですか? それとも事実? 意味不明すぎてよくわからない。
でも、少し希望が見えた気がする。この妖花女王は植物系の魔物なら慈悲を施すのでしょ? なら、勝手に勘違いしてもらって見逃してもらおう!
「あー、でもぉ君は植物系の魔物じゃなくて兎獣人だしなぁ。見逃す義理はないかなぁ」
ええっ⁉ 見逃してくれる流れだったじゃん!
「ふふ、表情がころころ変わって可愛い♡ その可愛さに免じて君に選択肢をあげるわぁ。一つ、私の家族になる。二つ、このまま私に喰われる。どっちがいいかしらぁ?」
それ、全然選択肢じゃないよぉ。選択肢は実質一つじゃんか。
「か、家族になります……」
「ふふ、やったぁ♡」
「か、家族って具体的に何するんですか?」
家族になるとは言ったけど、とんでもない無茶振り言われたらどうしよう。
「特に何も? 君はただ、私のことを母と呼び、私から離れず、私に甘え、私に全てを任せるの。何もしなくていいよぉ? 私がぜーんぶやって……あ・げ・る♡」
すごい束縛系お母さんだ……。