第57話 追憶の澱④
また投稿予約ど忘れしてました!
すいません!!
「危険だからシーちゃんは離れてて‼」
「分かったわ」
まともに敵の攻撃を食らえば死ぬ。ま、いつも強敵と戦うときはそんなもんだし、慣れたもんだ。
だけど、今回ばかりは重みが違う。いつもは私が死ぬだけだったけど、今回は私が死んだら友達に負担がかかってしまう。それだけはダメだ。
緊張で身体が強張るけど、ゆっくり深呼吸して落ち着かせる。
大丈夫、いくつもの死線を乗り越えた私ならきっと……!
「……【太陽の光糸】……」
スーシリエールにユニークスキルの魔法をかける。
そして一気に距離をつめて暗黒騎士に攻撃を食らわす。
――ギィィィン
暗黒騎士にはかすり傷一つ付かない……けど、これでいい。私の役割はかく乱と拘束。ウィンの攻撃を成功させるための道を作れればいい。
死霊王との戦いでも使ったこの【太陽の光糸】は不可視の魔力の糸。武器にこの魔法をかければ、触れたところに【太陽の光糸】を張り巡らすことが出来る。そして――
「――【十字架刑】――‼」
この魔法を発動させると不可視だった【太陽の光糸】が一気に燃え上がり、敵を拘束することが出来る。しかも相手の属性は暗黒。この魔法は光と火系だから愛称はバッチシ‼
暗黒騎士は苦しそうに呻き声をあげ、動けずにいる。
「ウィン、今よっ‼」
「うっし、任せろー‼」
ウィンはハンマーを振り上げ、そして高く飛び上がる。
「たぁぁああああ‼」
超重量のハンマーが急降下し威力が増す。無防備な状態でこれを食らえば粉々になるはず!
だがハンマーが激突する瞬間、拘束されているのにも関わらず、暗黒騎士が腕をクロスさせてガードする。
「「なっ⁉」」
魔力を全力で注いで拘束していたのに⁉
ウィンの攻撃の威力は完全に殺され、ウィンは宙返りをして一度離れる。
――グ、ガガガガ
こいつ、瘴気で拘束を解こうとしている⁉
まずい、一度拘束を解かれてしまったら、こいつはもう二度と私にこの魔法を使わせないだろう。このまま押し切らないと負ける……‼
「ウィン、たたみかけてっ‼」
「う、うん」
『――――ッ‼‼』
「うっ‼」
ウィンがハンマーを振り上げたその瞬間、暗黒騎士からとんでもなく高密度の瘴気が大量に放出される。
拘束は一瞬で解かれ、瘴気はウィンのいる方向へ。
「ウィンッ‼」
咄嗟に【煌炎】を付与する応用で飛ばし、瘴気を出来るだけ相殺した。だが広範囲に広がっていた瘴気を全て相殺することは不可能。ウィンは瘴気をまともに浴びてしまう。
ウィンはその場で力無く倒れた。
「そ、そんな……」
絶望する暇も与えないかのように暗黒騎士はシーちゃんの目の前に一瞬で移動する。そしてゆっくりと大剣を振り上げる。シーちゃんはそれをぼんやりと見ているだけで避ける素振りがない。
――ドクン
心臓が大きく脈打つ。瞳がかつてないほど熱くなり、世界がスローモーションになる。
この万能感、ソリテールと戦った時の感覚と似ている。だけど、前とは違って今回は無理やり身体が発熱しているようで……全身が悲鳴を上げている。
痛い、痛い。
気が付けば私はシーちゃんを抱きかかえて宙を舞っており、次の瞬間には地面に叩きつけられていた。
「パープちゃん⁉」
背中がどちゃくそ痛い……。
あぁ、そうか。私はシーちゃんを庇って……あの大剣の攻撃を受けたのか。いや、まともに受けたら真っ二つなはず……じゃあギリギリ避けきれずに掠ったのか。
掠っただけでこれか……。
なんとか立とうとするが、力が入らない。
まだ戦いは終わってない、反撃をしなきゃ‼ 動け、動けっ‼
「ねぇパープちゃん、どうして私なんかを庇ったの……?」
そんなの決まってんじゃん。
「シーちゃんは私の大切な友達だから……っ‼」
う、痛みで意識が……。だめだめ、ここで気絶したらシーちゃんまでっ! 私が守らなきゃ、私が……
♢♢♢
「……」
気絶しちゃったか。
無理もないわ、あの傷なら死んでいてもおかしくない。早く治療しないと手遅れになってしまうわ。
「さてと」
パープちゃんも気絶して誰も見ていない。そろそろ力を少しだけ使っても良いわよね?
雰囲気の変わった私を前に気圧される暗黒騎士に向かって手を軽く振るう。すると暗黒騎士は真っ二つとなり崩れる。
「……安らかにお眠りください」
暗黒騎士のステータスを見た時は驚いた。
生前には正義を振るう聖騎士であったことは勿論だけど、何より称号にあった”創造神の傀儡”に驚いたわ。
以前のダンジョンボスはSSSランクの別の魔物だった。暗黒騎士ほど強くなく、パープちゃん達だけで難無く倒せる魔物だったはずなのに……何かの意図が合ってすり替えられた……?
……あの創造神は何を考えているの? パープちゃんの”PARP”も気になるし……何か企んでいるわね。
「”友達”……ね」
私はあの攻撃を受けても無傷であるはずだった。だから避けようとしまかったのに……。けれどもそれを知らないパープちゃんは自分の命を顧みず私を庇った。
パープちゃんをそうさせたのは果たしてパープちゃん自身なのか、それとも創造神がそうさせたのか……。
あんな言葉をかけられたのは初めてだったから嬉しい。だけど……本人の意思とは無関係だったのかもしれないと考えるとなんだか複雑な気持ちになる……。
「……。――【天使の奇跡】――」
回復魔法をかけたことで険しかった表情が和らぎ、傷は完全に塞がる。
私達の”害”となるかどうか様子を見なければ……。
「ウィンリー様……」
ウィンリー様とまったく同じ見た目をした女の子を見下ろす。
瘴気と激突する寸前でバリアを張ったからこの子は無傷。そのうち起きるだろう。
見た目も、魂も、同じはずなのに……私はずっとあなた様を待っていたのに……記憶は完全に失われていた。このダンジョンに来れば思い出してくれると思ったけれど……無理そうだった。
何かが起こっているようね……。
私より強い存在はこの世に居ない……けど、警戒する必要がありそう。ウィンリー様の敵は誰であろうと……私が排除する。




