第56話 追憶の澱③
目の前には蔦や苔が生い茂っている巨大な扉。これに触れればダンジョンの最後の試練が始まる。
「ついに最奥に来たね……!」
「らくしょーだったね‼」
そうか……? 出てくる魔物全部Sランク超えだったけど? まあ、シーちゃんの魔法のサポートやウィンのハンマー攻撃のおかげで苦戦はしなかったけどさ。それでも一瞬の油断で命が散るには十分な敵だった。
出現した魔物がSランク以上だったのを考えるに、最奥のボスはおそらくSSSランクだ。
私が今まで倒したSSSランクの魔物は死霊王とオークジェネラル。オークジェネラルくらいなら倒せるけど、もう一度死霊王と戦うとなれば勝てるか分からない。そもそも魔境の森で仲間と協力したから倒せたのであって、一人だったら絶対に死んでいただろうけど……。えーっと、私が言いたいのは、同じSSSランクであっても強さにはかなり差があるってこと!
死霊王とオークジェネラルがいい例! 括りでは同じかもしれないけど、そこでは文字では表せない確固たる"格の差"がある。
もし最奥のボスが死霊王のような強敵だったら……覚悟しないとね。
「ウィン、シーちゃん、気を引き締めていこう」
「ええ!」
「もっちろ~ん‼ レッツラゴーゴーゴーッ‼」
気を引き締めていこうと言った直後にコレだ。ズッコケそうになるのを抑えて目の前の巨大な扉に手を当てると重そうな音を立てて開いた。
中は想像していたよりもずっと広く、コロシアムのような空間が広がっていた。
中央には怪しい光を放つ宝石がはめ込まれた大剣を持つ全身鎧の騎士が立っていた。3メートルは超える巨体が仁王立ちしている姿はかなり威圧感がある。
(――【真実の鑑定】――)
【名前】???
【種族】暗黒騎士
【年齢】???
【魔力値】300/300
【体力値】500/500
【スキル】
暗黒魔法Lv2 無属性魔法Lv5 体術Lv5 大剣術Lv6 殺気Lv5
【ユニークスキル】
なし
【称号】
創造神の傀儡 堕ちた騎士
【総合戦闘力】2800
【ランク】SSS+
「――ッ‼」
こ、これは……かなりやばい。
「みんな、敵のランクはSSS、大剣と暗黒魔法を使うよ‼ 瘴気を放出するから近づくときは私から光魔法を付与されてからにして‼」
「……」
シーちゃんは敵を凝視したまま固まる。こんな時にどうしたの⁉ 早く戦闘態勢に入らないと攻撃されたら終わりだ!
「ウィンが前衛で敵をかく乱、私は魔法でサポートをするからシーちゃんは魔法でとどめの準備を!」
「だめよ!」
「えっ?」
「あの大剣を鑑定して」
シーちゃんに言われるがまま大剣に【真実の鑑定】をする。
【名称】封魔の大剣
【品質】SSS
【効果】使用者以外のスキル・魔法を封じ込める。ただし、ユニークスキルは封じ込められない。
見た瞬間、血の気が引いていく感覚がした。
普通に戦っても勝てるか分からないのにスキルと魔法を封じ込められたら……。回復すらも出来ない、必殺の攻撃すら繰り出せない。
一度目を瞑り心を落ち着かせる。
恐怖に負けるな、思考を鈍らせるな。考えろ、皆で生き残る道は⁉
ここはボス部屋だからボスが死なない限り脱出する事は出来ない。逃げることは不可能。つまり、生き残るには――あいつを殺すしかない。
スキルも魔法も使えないのにどうやって? ユニークスキルの『天から照らす太陽の光』……【煌炎】は使える。けど、爪術スキルの【陽焔裂爪】は使えない。普通に攻撃したくらいじゃ敵には通じない。相手は全身鎧だし、むしろこっちの武器が砕けるかもしれない。
この中で敵に一番ダメージを与えられるのは……ウィンしかいない。
「ウィン、この空間ではスキルと魔法が使えない。だからこの戦いはウィンに懸かっている」
「スキルと魔法が……! ん、いつも使ってないから大丈夫‼ 私に任せて!」
「瘴気を軽減するためにユニークスキルの【煌炎】を付与するよ。あくまで軽減だから多少はダメージが入るけど大丈夫かな……?」
「大丈夫、任せてよ!」
【煌炎】は過去にソリテールに付与したことがある。本来自分で使うものだから、私が使った時よりも効果は薄くなり、炎の色も私と違う。それでも瘴気をまともに浴びるよりマシなはず。瘴気は触れただけで黒く腐るからね。
「――【煌炎】――」
「私も敵をかく乱させてサポートする。ウィン、危険だと思ったら離脱するんだよ?」
「おっけぃ‼」
さあ、戦闘開始だ。




