第53話 友達パラダイス
やっと終わった……。
まさか優勝したら色々な義務が発生するとはね……。なんで誰も教えてくれなかったんだよ!? 私が優勝すると思ってなかったってこと!? まったく、酷いよ!!
私が帝国に課された面倒くさい義務事項は以下の通り。
一、帝国の威光を胸に刻み、永劫の忠誠を捧ぐこと。
一、帝国より下される勅命には、いかなる時も背かぬこと。
一、帝国の外境を越えることを禁ず。ただし、皇帝陛下の勅許ある場合はこの限りにあらず。
要するに、帝国に忠誠を誓い、命令には絶対に従う。そして国外には許可なく行ってはいけない……ということだ。
はあ……面倒くさい。もし、帝国で戦争が起こったら、絶対参加しなくちゃじゃんか。あ〜、私も準優勝くらいにしとけば良かった!!
三つの義務だけど、私の自由を縛るには十分だ。
なっがい説明のおかげで外はもう真っ暗だし……お腹すいた。
ふっふっふ……こんな事もあろうかと、キャロッティ持ってきてたんだよね〜♪
――ぎゅるるるるる
ん……?
「ジー」
いつの間にか、隣によだれをダラダラと流している雪の精霊が居た。
「ジー」
声に出して“ジー”って普通言わないよ!? そんな欲しいアピールしてもあげないよ!!
「ジー」
そんな、キラキラした顔でコッチ見ないで……!!
「ジー」
う、うぅぅぅぅ。
「た、食べる?」
「いいの!? 君って良い人だね!!」
く……あげてしまった。私のキャロッティ……。でもだいじょーぶ! こんな事もあろうかと、予備のキャロッティを持っているからね♪
「ん〜、美味しぃ〜!! お金無かったから、かれこれ5日ぶりのご飯だよぉ〜!!」
雪の精霊は口いっぱいに詰め込んで幸せそうに食べる。
美味しいものは誰かと食べた方が美味しいし、結果オーライってことで!!
「ごちそーさまでした!! えっと……はじめまして!! 私の名前はウィン! 君は?」
は、はじめまして……? 私たち、エトワール大武道大会で一回戦目に戦ったよね? この短期間で忘れちゃったんかい??
「パープです」
「パープ……じゃあパプたんって呼ぶね!」
ぱ、パプたん!? こんな独特な愛称を付けてくる人、お母さん以外で初めて会ったわ。
「パプたん、私と友達になって!!」
と、友達……!!
シーちゃんという最高の友達に続きまたしても友達が新たにできる!? 今まで全然友達作れなかったのに……ここはパラダイスか!?
ただ……ただね、不安要素が1つある。
「ご飯欲しいからじゃなくて?」
「ギクッ」
さっきキャロッティ食べながら、本人がお金無いって言ってたもんね。きっと私と友達になって、ご飯を貰おうとしていたのだろう。もしかしたら、衣食住全て私に頼るつもりだったかも……?
「うぅぅ〜だってぇ〜!! おししょー様と山奥で修行してたから、お金の使い方分かんないんだもん!! 気づいたら無くなってたんだもん!! お願い、哀れで可哀想で可愛い私を助けてよぅ〜!!」
可愛いが余計だね。まあ実際可愛いが……アホっぽい表情と自称しちゃってるところが勿体ないな。
ウィンは泣きながら私の服にしがみついてくる。それを見た周りの人がコソコソと何かを言っている。
ヤバいヤバい。変な目で見られてる!! 中には『金色の悪魔だ』という言葉が聞こえてくる。どうせまた私が悪者みたいになっちゃうんでしょ!? それは防がないと!! これ以上皆に嫌われたくないっ!!
「分かったから泣かないで!!」
「ぅぅ……私と友達になってくれるの?」
「なってあげる!!」
ポジティブに考えよう!! 私は友達が欲しかったし、ちょうど良かったって考えよう!
「じゃ、じゃあ私のこと養ってくれるんだね!!」
「えぇ……それはちょっと……」
私もお金に余裕があるわけじゃないしなぁ。
「それなら私が養うわ」
「えっ?」
「ほんとっ!?」
後ろを振り向くとシーちゃんが居た。なぜか頭に変なピンク色の生物を乗せてね。
これは……前世で言うメンダコに似ているような……。リアルなメンダコじゃなくて、ゆるキャラ化した可愛らしいメンダコのような見た目をしている。
メンダコのことは一旦置いておいて……シーちゃんがウィンを養う……? あ、そうか。そういえばシーちゃんのステータスには“雪の精霊の守り人“ってあったよね。
なーんだ、もう既に仲が良いってことか!! なら初めから私じゃなくてシーちゃんに頼んでおけばいいのにね。
「およ? 君、良い人だねっ!! 友達になろ!」
「……」
「私はウィンって言うんだ!! 君の名前は?」
ん……? 2人は知り合いじゃないの……?
「私はシーって言うの」
「シーちゃん、これからお世話になりますっ!!」
じゃあ“雪の精霊の守り人“っていう称号は一体どういうことなの?
「あーあ、私お腹空いちゃった! これから3人でなんか食べない〜?」
盛大にお腹を鳴らしながらウィンがそう言う。
は〜、なんか考えるのがアホらしくなってきちゃった!! 分かんないことを考えたって仕方ないよね! 今はただ、友達ができたっていう幸せを噛みしめればいいのだ!!
「ふふ、じゃあ何食べたい?」
「んー、お肉!! 奢りでお願いします!!」
「分かったわ」
「本当にありがとう、シーちゃん!!」
「この御恩、いつか倍にして返すから期待してて!」
「期待してるわ」
いいなぁ……私なんか勉強三昧だよ? 学期末テストが迫ってくる……怖い。




