第50話 エトワール大武道大会③
バレた!!
相手が探知系のスキルを持っていたのかも。迂闊だった……。
とにかく!! 逃げなきゃ!!
私はさっきまで自分の強さにまあまあ自信があった。だけど、あの殺気を知って……上には上が居ると痛感させられた。
私の気配を感じとった怪しい人物が私以上の強さを持つ可能性がある今、逃げるしかない。
壁に激突しない程度の速さで走り、勢いよく曲がり角を曲がった瞬間……人がいた。急に足を止められるはずもなくそのままぶつかってしまう。
「きゃっ」
「わっ」
うーっいたたた……って、やばっ!! 事故ってしまった!?
ぶつかってしまった人に目を向けると……目の前に天使がいた。
海を思わす青色の髪に宝石のようにキラキラと輝く瞳。天使の羽は……無いみたい。長い耳をしているから精霊か。なーんだ、私やアムールよりもっともっと可愛いから天使かと思っちゃった。
おそらく私と同い年……にしては小柄だな。
この子と友達になれたらどんなに幸せだろう……。女子トークしたり、パジャマパーティーなるものをしたり、もしかしてスイーツを一緒に作ったり出来るかも!?
はっ、思わず考え込んでしまった!! 安否確認優先!!
「ご、ごめんなさいッ!! 大丈夫ですか!?」
「うーん、大丈夫よ」
天使さんは額を押さえながらそう答える。
どうやら、天使さんが小柄だったおかげでうまく頭との激突は避けれたらしい。
「ちっ、どこ行きやがったんだ?」
足跡がどんどん近付いてくる。やばい、このままじゃ見つかる!!
「あなた、追われてるの?」
「う、うん」
「この部屋に入って」
「え?」
「早く!」
「え、あ、ありがとう!!」
――バタン
足跡はだんだんと遠ざかっていく。もう大丈夫みたいだ。
ここはどうやら天使さんの待合室のようだ。じゃあやっぱり同い年なのか……。
「助けてくれてありがとう!! それと、ぶつかっちゃってごめんなさい」
「追われていたのだから仕方ないわ。怪我もないし、大丈夫よ」
や、優しいっ!!
「私はシー・オシェロン。気軽にシーって呼んでほしいわ」
オシェロン……? オシェロンって、まさか……!?
「……もしかしてオシェロン王国のお姫様?」
「えぇ」
や、やばい。お姫様にぶつかってしまったのか……。大丈夫かな? 不敬罪で処罰されたりしないかなあ?
「た、大変ご無礼を……」
「いいのいいの! 硬くならないで……実はね、私ずっと同い年の友達が欲しかったの。良かったら私と……友達になってくれる?」
と、友達……? お姫様と……友達?
「もちろんです!!」
本当は身分差とかでダメだろうけど……友達という甘美な囁きには抗えるはずがない。
そう、これは仕方がないことなんだ。
やっと、2人目の友達ができた……!! しかも同性!! これで念願のパジャマパーティーだったり恋愛トークだったりが出来るんだっ!!
嬉しさのあまり体が勝手に動いてガッツポーズをキメてしまう。
天使改め……シーちゃんはそんな私を見てくすくすと笑う。ああ、笑顔まで天使だ。こんな人と友達になってしまっても良いのだろうか?
こりゃ〜神が嫉妬して私に天罰を下すかもしれないね。もしそうだとしても、関係ない。たとえ地獄に堕ちるとしても、私はシーちゃんと友達でいたい。
「本日からシーちゃんの友達になりました、パープです!! 末永くよろしくお願い致します!!」
「も〜かたいよ〜! 友達なんだから敬語はなし、ね?」
その仕草、声、一つ一つが本当に可愛らしくて、ドキドキしてくる。
これはもしかして、恋なのかっ!? 恋なのかもしれない!!
「わ、分かった!!」
「それでなんだけど……もし良かったら、なんでさっき追われていたのか教えてくれる?」
「えっとね……」
さっきあったことをありのまま話す。
私が嘘をついていると疑われるのが心配だったけど、どうやら信じてくれたようだ。
「その人の名前は分かる?」
「え? えぇ〜っと……たしかパプリカって名前だったと思う」
私の大嫌いな野菜の名前と同じだったから覚えている。
パプリカはピーマンより甘くてフルーティーで美味しいってよく言うけど、私は信じられなかった。ピーマンより少しはマシだけど、全然甘くもフルーティーでもない。大人になってからも、ピーマンやパプリカは大の苦手だった。
「パプリカ……もしかしたら、私の次の対戦相手かも」
「えっ!?」
だとしたら大変じゃん。もし私の勘違いじゃなくて本当に不正をしていたら……シーちゃんが負けちゃう。
オシェロン王国は精霊が多く住んでいる国だ。海に囲まれている島国で、緑が豊富。莫大な資源が眠っていると言われているが、交流が軽薄のため多くが謎に包まれている。
そんな国の王女が他国でエトワール大武道大会に参加するわけだ。もし一回戦目で負けたとしたら国の恥と見做されるかも……。
それだけじゃない。王女の力が無ければ国力がないと思われ、馬鹿な国から戦争を仕掛けられるかも。
「運営側に言いに行こう? きっと対応してくれるはずだよ!!」
シーちゃんは首を振る。
「この会場に不正道具を持ち込めた時点で、相手はこの国の技術を上回っているか、手引きした者がいるはず……。訴えたとしても揉み消されるだけだと思うわ」
「そんな……」
じゃあどうすればいいの? 王女様なんだから、きっと実戦経験なんか無いだろうし……矜持を守るために棄権するとか……?
「私、戦うわ」
「えぇっ!? そんなの無茶だよ!!」
「大丈夫、私強いから♪」
キュン……
いや、キュン……じゃないしっ!!




