桃花兎2 公爵家掌握大作戦②
アムールのお話です!
「神殿に来たついでだ、アムールの魔法の適性も見てもらおうか」
「魔法の……?」
まずい、それが種族が分かるような……【鑑定】に近いものだと困る。バレたとしても、もう僕は公爵家の一員だから処刑は無いだろうけど、面倒臭いことになるのは間違いない。
「ああ、水晶に手を置き、光る色によって属性が分かるんだ。まぁ、適性が無い者がほとんどだから、光らなくてもあまり気を落とさないようにな」
なるほど、種族がバレるような代物ではなさそうだね。
でも、僕は属性が分かってるし、やる必要はない。神聖魔法が使えるのは珍しいらしいし、隠しておきたいからやんわり断ろう。
「僕なんてどうせ魔法使えないと思うんです。だからやらなくて大丈夫です」
「――っ、そんなに自分を卑下しないでください。きっとアムール様には才能があります!」
「そうだぞ、アムールはきっと魔法が使えるさ。それに、もし魔法が使えなくてもお前に価値が無いなんてことは無い! 安心してやってみなさい」
えぇ……? どうしてそんなに勧めるの? それと、なんか二人の好感度が既にMAXな気がするんだけど……。僕まだ何もしてないよ?
まさか【好感】スキルのせいっ⁉ いやいや、一瞬で好感度MAXにするほどの効果ないはず……。なんで??
なんだか断れない空気になり、そのままやることになってしまった。うぅぅ……もうどうにでもなれーっ!
――パァァァ!
「「――ッ‼」」
「――こ、これはっ⁉」
水晶に手を置いた瞬間、真っ白な光が溢れ出す。あまりにも強い光に、神殿から光が漏れてしまったようで、外が騒がしくなる。
「大神官よ、これはどういうことなのだ?」
公爵が光に驚きながらも神官に状況の説明を求める。
「こ、この純白な光は伝説にあったあのっ――」
「大神官様、今の光は一体なんでしょうかっ⁉」
部屋の扉を勢いよく開け、何人もの神官が入ってくる。
「皆の者、よく聞け。今ここに、神の御使いである……『聖者』様が誕生したっ‼」
聖者ってなんだろう? 神官さんの言い方からしてなんか凄い人なんだろうけど……。
「何百年ぶりの聖者様だ⁉」
「あぁ、神よっ! 我々を見捨てたわけではなかったのですね‼」
「聖者様、我々をお救い下さい!」
部屋に入ってきた神官たちが一斉に膝をつき、祈り始める。
僕のことを聖者と宣言した見知った神官までもが跪こうとしたので、慌てて止める。
「あ、あのっ、『聖者』って何ですか?」
「聖者とは、生まれつき【神聖魔法】を行使できる者です。神の声を聞き、世界の危機を救い、人々を導く……とても尊い者のことでございます」
「な、なんで僕のことを聖者って呼ぶの?」
「水晶が純白に輝いたからです。その場合、適性は【神聖魔法】。【光魔法】を極めた者は【神聖魔法】を使える場合がありますが、それは神に授かった力ではありませんので『聖者』ではありません。ですが、アムール様の年齢を考えるに、貴方様の御力は紛れもなく神に授かったもの‼ まさに真の聖者です‼」
……どうしよう。この人が言ってることが本当なら、僕は本物の聖者じゃない。偽物だ。
だって、僕は生まれた時から【神聖魔法】スキルを持っていたわけじゃない。パープの眷属となり、人型になってから【光魔法】が使えるようになり、それからスキルが進化して【神聖魔法】スキルになったんだ。
それに、僕は魔物だし。魔物って人間から忌み嫌われてるし、神聖さとかとは真反対じゃないの⁉ あれ、じゃあなんで僕は【神聖魔法】が使えるんだろう? カレンデュラさんやデュランタさんは、【光魔法】を使える魔物は存在しないって言ってたけど……?
きっとパープが凄いからだね! 僕はそのパープの眷属(誇り)だから異例中の異例で【神聖魔法】が使えるんだろう!
とにかく、僕は神官さんが言うような聖者ではない。
バレたらどうなるんだろう? 聖者を騙った罪で処刑……? 聖者がどんなに大切な存在なのかまだ分からないけど、でも神官さんのこの対応を見ていたら、間違いなく凄く大事な存在だろうね。
【神聖魔法】の適性があることを隠蔽しようにも、これだけの目撃者がいれば厳しい。
……。
……うん、よし、もうしらばっくれよう。僕は何も知れない純粋な少年。
それに、プラスに考えれば聖者って地位が高いんでしょ? ならお金だってたくさん手に入るだろうし、国だって掌握出来るかもしれない‼
『やっぱりモテる男になるにはお金と高い地位を持ってないといけないわぁ♡』ってカレンデュラさんも言ってたし(?) うん、だからこれもきっとパープと付き合うために役立つはず(?)
聖者のイメージだってきっと良いものだろうから、魔物だってバレるリスクも減るかもね!
「ああ、聖者様よ、神はなんと言っておられますか?」
僕にそんなこと聞かれたって分からないよっ! 偽の聖者なんだから神の声なんか聞こえるわけないし!
……よし、ここは倒れるふりして誤魔化そう!
神の声が聞こえないって言ったら怪しまれるかもしれないしねっ!
――バタン
「「「せ、聖者様っ⁉」」」
「アムールッ‼ 大丈夫か? 神官、早くアムールを見てやってくれ!」
「は、はいっ」
はぁ、これでまた心配性の公爵の命令で当分ベット生活かな。
一人になったらまた今後の事について作戦を立てないと。
実は、時代が経つにつれて間違った解釈になってしまっただけで、【神聖魔法】スキルを持つ者全員『聖者』なんですけどねぇ。
だから偽物とか本物とかないんだが……まあアムールには知る由もないか。直接創造神に会わない限り。




