第4話 銀狼の群れ
おはようございます。銀狼との戦闘から一夜明け、現在ラファールおじさんから貰った黒パンを食べているところです!
黒パン硬い……けど頑張って食べます!
黒パンを噛みながらどうやって森から出るか考える。
魔トレントぜーんぶ燃やしちゃう? いやいや、私まで燃えちゃう。てゆーか燃やせるかも分からないし、攻撃したら魔トレントが一斉に襲ってくるかもしれないからリスクが高すぎる。
ならば……とりあえず強くなろう!
安直な考え!
一晩中考えてやっと思いついた案とは思えないね。でも、これが一番だと思う。
強くなれば魔境の森でも楽々生きられるし、幸い魔トレントは【読心】スキルを持っている。知能があるということは恐怖心があるということ。なら、魔トレントが恐れるほどの強さを得られれば……魔トレント自ら道を空けてくれるんじゃないかな?
どう? 意外と良い案でしょ?
というわけで、修行開始だー!
♢♢♢
3歳児が急激に強くなる方法……それは魔法しかない!
もちろん、身体も少しは鍛えるけど、ぷにぷにの肌を持つはずの3歳児がムキムキの筋骨隆々になったら気持ち悪いでしょ? それに、鍛えすぎると背が伸びなくなるとどこかで聞いたからね。だからほどほどに鍛えます。
あくまで主は魔法!
どの属性から鍛えようかな……?
やっぱり、生活に役立つものから鍛えたいよね。なら水魔法からにしようか。水は生命の源! なくてはならないもの!
それに、レディーとしてしっかり体を清めたいし……。
3歳児だって立派なレディーですよっ!
♢♢♢3年後♢♢♢
【名前】パープ(・ステラ) ♀
【種族】兎獣人
【年齢】6
【魔力値】145/150◁100up
【体力値】80/80◁50up
【スキル】
鑑定Lv1 火魔法Lv1 水魔法Lv1◁NEW 風魔法Lv1◁NEW 地魔法Lv2◁NEW 光魔法Lv2◁1up 闇魔法Lv1◁NEW 無属性魔法Lv1◁NEW 体術Lv1◁NEW
【ユニークスキル】
なし
【称号】
??? 転生者 王族 捨て子 神童
【総合戦闘力】360◁300up
【ランク】C?
――???のため、ステータスが???
ふふふふ、私もついに6歳となりました。
この3年で火、水、風、地、光、闇、無の全属性を覚えられたので、遂に念願の家を建てられた……! そして地魔法を活用し、畑も完成。もう立派な人の住める場所が魔境の森の中にできたのです!
この試み……世界初かもしれないねっ!
はぁ…………でも鑑定スキルはレベル上がらなかった。毎日何回も色々な物を鑑定したのにな……。それに相変わらずステータスが???だらけ。もうっ、なんなのさっ‼
「グルルゥ」
私の力を見せつけるのにちょうどいい敵が現れたね…………と思って振り向いたら敵の多さにびっくりする。
これ……銀狼が50体くらいいるんじゃない?
私は定期的に食料を確保するために銀狼を狩っている。さすがにラファールおじさんから貰った食料は尽きちゃったし。
もしかして、仲間を狩ったからその報復に来た? 銀狼がそんなに仲間思いだとは思わなかった。
今の私は銀狼1匹くらいなら一捻りで倒せる。でも、50体はさすがに無理かもしれない。
…………無理でもやるしかない。私はここから出るために強くなるしかないの。そのための踏み台と考えればいいのよ。ここで負けるのなら、私はそこまでだったということ。
私の思いはそんなもんじゃない。友達を作るまでは絶対に死ねない。
さぁ、こい――!
「ガァッ」
前列の銀狼5体が襲い掛かってくる。
「はぁっ‼」
事前に魔法で作っていた武器である拳鍔――簡単に言うとメリケンサック的な物――を手に嵌め、銀狼を思いっきり殴る。
銀狼は情けない鳴き声をあげて吹き飛び、息絶える。
私はこの3年間、魔法の修行だけしてきたわけではない。魔力が底を尽きたら、回復するまで体を鍛えていた。
別に筋骨隆々を目指していたわけではないけど、以前銀狼と戦っている最中に魔力切れを起こして、仕方なく逃げたことがあったからさ……。私はまだ魔力量が少ない。魔力が切れてしまったらどうなる? 逃げようとしても逃げられなかったら?
魔法だけに頼ってはいけない。それに気づいたから体も鍛えることにしたの。
そう、今みたいな大多数と戦うのを想定してね! こういう時は大体長期戦になるし、魔力はできるだけ温存しなくてはいけない。
良かった、1度は失敗しておくものね!
できるだけ拳鍔を使って敵を減らし、体勢が崩れたら魔法で叩く!
私は簡単にはやられないわよ。だって私、中身はブラック企業に約8年も耐えた大人ですよ? この精神力舐めないでください!
さぁ、銀狼さんはどう出てくる⁉
「ぐ、グルゥゥ」
銀狼は私の剣幕に気圧され、一歩後ろに下がる。 場が乱れ統率が執れていない今が絶好のチャンス。
怯えて体が固まっている若そうな銀狼から容赦なくぶちのめしていく。
「ガァッ」
「――【闇束縛】――」
背後から飛びかかってきた来た銀狼を闇魔法で拘束し、殴って止めを刺す。
この拳鍔は銀狼の牙を火魔法で溶かし、地魔法でかたどって作った物。かなり硬いから、銀狼の頑丈な骨も砕く威力を幼女でも繰り出すことができる。
闇魔法の【闇束縛】や地魔法の【泥沼】を使って足止めをしながら攻撃し、着々と敵の数を減らしていく。
あと10体となったところで突然、銀狼の1体が遠吠えをする。
ただならぬことだと察した私は真っ先にその銀狼の息の根を止め、遠吠えをやめさせる。だけど、遅かったみたい。
「ガァァァァアアアアッ‼」
【名前】ソリテール ♂
【種族】銀狼王
【スキル】
爪攻撃Lv5 威圧Lv3 統率Lv5 風魔法Lv3 水魔法Lv3
【総合戦闘力】1500
【ランク】SS
――魔境の森の四天王の一人。南側を治めている。男前で仲間思いな性格であり、魔境の森では有名。
なんてものを呼び寄せるのよ、銀狼めっ!
銀狼王って、伝説級の魔物じゃないの? でも、少し小柄だしランクが銀狼王にしては低い……まだ成体ではないのかな?
なら……勝てるかも?
「なんてことを……我が同胞がこんなにも無惨に……」
しゃ、喋ったー⁉⁉
銀狼王は銀狼の亡骸を見て、私のことを睨みつける。
「同胞をこんな目にしたのは汝か?」
「……うん」
鑑定結果通り、仲間思いみたいだね。
でもさ、私も仕方なかったんだ。生きるためには……食料を得るため、襲ってきた敵を返り討ちにするため。これでも銀狼にはそれなりに誠意を見せてきたつもりだ。亡骸を無駄にすることなくしっかり使った。
でも言い訳はしない。銀狼王からしたら私は仲間を殺した敵なのだし、訳を話したところで何も変わらない。
良心が痛む? そんなわけないでしょ。私は別に銀狼を虐殺したわけでもないし、悪い事したと思ってないもん。
今は、どうやって生き残るかだけを考えなければいけない。
「我が名はソリテール。汝の名は?」
「パープよ」
「我は絶対にパープ、お前を許さない。我が同胞と同じ苦しみをその身に刻めっ‼」
次回、銀狼王との戦闘!