第44話 ギルドマスターの勘違い パープside
前の話を読んでからこの回を読むともっと面白いと思うので、ぜひ読んでください‼
今回はギャグ回ですっ‼
「病死したはずのステラ王国の第三王女殿下、何を企んでいるのですか?」
よし、ここはまた一芝居しようではないか。
なんとかめちゃくちゃ強い王族を演じて、この秘密を喋ったら確実に死ぬって思い込ませよう!!
目をスッと細め、ギルドマスターに冷ややかな視線を浴びせる。
そして……ゴブリンキング戦で新たに身に着けたスキル、【殺気】を手加減して使用する。
「――ッ!!」
ギルドマスターは全身を震わせ、膝から崩れ落ちる。私を見上げる瞳は案の定、恐怖に染まっていた。よしよしこの調子で続けよう……と思っていたが、禿げている頭からは大量の汗を流し、過呼吸になりかけていたので慌てて口を開く。
このまま気絶でもされたら困るからねっ!
「何を企んでいるのか、ねぇ……」
さっきからずっと綺麗だなあって思っていた薔薇を手に取る。うんうん、想像どうり良い香り。
「あなたがそれを知って得になることはあるのかしら? 失うものの方が大きいと思うのだけど……」
本当は傷つける気も殺す気もないけどね。私を心から恐れ、逆らおうとする気を起こさないようにしないとね。申し訳ないけど……。
「それでも知りたいというのなら――」
さっき手に取った薔薇を握りつぶしてギルドマスターの目の前に捨てる。
ごめんね薔薇さん。こうでもしないと私には悪役貴族に成りきるなんて出来ないし、演技力ゼロだから行動で示さないとって思って……。
――ガン!
「大変申し訳ありませんでした!!」
え……(ドン引き)
私の演技、もしかしてめちゃくちゃ上手かった?
可哀想に、ギルドマスターは本当に殺されると思ったのか震え上がり、思いっきり頭を地面に叩きつけたことで額からは血が出ている。
てかこの世界にも土下座っていうものがあるんだね。
――ガン、ガン、ガン、ガン!
何度も何度も頭を叩きつけながら何かをベラベラと勢いよく喋る姿に、さすがの私もドン引き……。
え、そんなに私怖かった? 血が出ても構わず許しを乞うほどに??
ほら私って可憐な美少女だし? この見た目もあってビビらせるのは難しいかな〜なんて思ってたけど、なんでこんなに怖がってんのよ!!
こんな見た目してる天使みたいな私が街滅ぼすわけないでしょ!! あんたの目は節穴かっ⁉ よく見てよく見て、蟻一匹殺せ無さそうなほど可憐で可愛らしいでしょ(自意識過剰)
なんかギルドマスターが壮大な勘違いをしていそうだけど……まあ怖がってくれてるなら私にとってむしろ好都合か、と思い直し演技を続ける。
「あなたの命も、この街が滅ぶかどうかなんて、心底どうでもいいわ。それよりギルドマスター……私の要求は分かるかしら?」
私の身分の隠蔽よ。さすがに分かるでしょ?
「パープ様の身分の隠蔽とギルドランクの昇格でしょうか……?」
ん? ギルドランクの昇格は願ってなかったけど、まあ上がって困ることないだろうし断らなくていいか。
「そうよ」
よし、もうギルドマスターに用はないし、そろそろ撤退するか。
とゆーわけで、最後に一押ししていこー!!
「ギルドマスター、この秘密を喋ったら……殺すぞ」
ほぼ全力で“殺気“を放つ。
ギルドマスターの実力じゃあ起きてることもかなり辛いだろうに、歯を食いしばり私が去るのを見送る。
「はぁぁぁぁぁ〜」
応接室から十分に離れてから深いため息を吐く。
まさか私が第三王女と気づくなんて……。今更偽名なんて使えないし、髪色や瞳の色だって【闇魔法】が得意じゃないから変えられないし。
このままじゃもっと色んな人にバレるかもなあ。
何か対策を考えないと。
♢♢♢
「おうパープ! よく来たな、噂は聞いたぞ!!」
そろそろ装備が直った頃だと思い鍛冶屋を訪ねると、ジェロンが酒を飲みながら私を待っていたかのように待ち構えていた。
「噂って……」
どの噂だ?
ゴブリンキングとゴブリン数百体を笑いながら殺しまくった“血塗れの戦鬼“の噂?
それとも、ギルドマスターがロリコンだった故に異例の早さでSランクに昇格したっていう噂?
……ギルドマスター、なんかごめん。私のせいでロリコンっていう音も葉もない噂が……。まあ私が美少女だから仕方ないのか。私って罪な女ねっ!!
「Sランクに昇格したっちゅー噂だ! 本当に凄いな、おめでとう!!」
あ、そっちの噂だったか……。じゃあジェロンはギルドマスターがロリコンって噂を信じたってことかな?
「あ? 俺はあいつがロリコンっていう噂に関しては信じてないぞ? まあ……もし幼女趣味だったとしても、それだけの理由でSランク冒険者を誕生させたりはしないはずだ。それに、あいつが不正なんかするはずがねぇ」
ギルドマスターをあいつ呼びってことは個人的な関わりがあるのか?
まあ、ジェロンは凄腕の鍛冶師だし、元Sランク冒険者のギルドマスターと関わりがあっても不思議じゃないか。
「じゃなくてだ‼ Sランク冒険者になったからにはふさわしい装備を身に着けなくちゃぁいけねえぞ?」
「……うん」
Sランクともなると、全冒険者の憧れの的、街の人の信頼を勝ち取る……つまり、冒険者の広告塔という役割が求められる。
そんな人がボロボロの装備を着ていたら憧れたり信じたりなんて出来ないからね。
その点はバッチシよ‼ 何て言ったって私には最高の鍛冶師がついてるからね‼
「俺が作った装備なら大丈夫だと思っているのか?」
ギクッ! え、それじゃあダメなの?
「そんな甘ちゃんじゃあ、この先やっていけねえぞ?」
あ、甘ちゃん……(ショック)
「俺は鍛冶師だ。俺の力、魂を存分に込められるものは金属だ‼ なのに……なのに俺がお前に作ってやってる装備は革製だ、これはどういうこったぁ⁉」
「――あっ」
そうだった……。
そうだそうだ、ジェロンは鍛冶師だってこと忘れたらイカン‼




