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第3話 銀狼との戦闘

 森の木々の隙間から太陽の光がキラキラと輝いている。

 まだ夕暮れではない。星も見えないし……何して待とうかな?

 じゃあ、自分に今できることを確認してみようか。魔物がいつ現れても大丈夫なようにね。


 では、――【鑑定】――!!



【名前】パープ(・ステラ) ♀

【種族】兎獣人

【年齢】3

【魔力値】45/50

【体力値】29/30

【スキル】

鑑定Lv1 火魔法Lv1 光魔法Lv1

【ユニークスキル】

なし

【称号】

??? 転生者 王族 捨て子 神童 

【総合戦闘力】60

【ランク】E?

――???のため、ステータスが???



 ふっふっふ……。この3年間、私はただ自分の運命に悲観してメイド達の言いなりになっていた訳ではない!

 何もしないなんて出来ない。

 だってここは異世界だよっ!? 夢にまで見たあの異世界! 希望とロマンの詰まったキラキラ世界!

 だから私はまず、【鑑定】が出来るか試してみた。定番だからね。

 そしたらできました! これがチートなのかは分からないけど、【鑑定】のおかげで命拾いしたのは確かだ。

 【鑑定】がなかったら、この世界に魔法が存在していることを思い出せず、傷を癒すことも出来なかった。なんで鑑定の事は覚えているのに魔法の存在を忘れるのかって? パニックになってみたら分かるさ……。


 私は、死にかけたことがある。

 きっかけはメイドに反抗したこと。3歳児に仕事を押し付けるのはおかしいって言ったらメイドは……ほうきで頭を殴ったんだ。

 幼児の体は柔らかい。頭から血が止まらずに、本当に死にかけた。私が頭から血を流して倒れると、そのメイドは一目散に逃げて手当してくれなかったし、人を呼ぶことすらしなかった。

 でも、魔法があることに気付いてなんとか危機一髪! 初めての魔法が命を懸けた回復魔法って……なんか嫌。


 ん、そのメイドはどうなったかって? 今はメイド長をやってるよ☆

 媚び売るのが唯一の取り柄だったからねぇ。

 名前はキーラという。まじで許さない。この名前だけは忘れない。いつか見返してやるから覚えとけよ、このクソメイド。



 うーん、今の所戦闘で役に立つのは火魔法くらいだよね……。え? 光魔法? 戦闘中に回復する時間があると思う? それに、この体力値を見て。きっと、一撃で即死だね☆

 火魔法だけだと心もとないから、風魔法とか使えるようにしたいな。欲を言えば全属性使えるようにしたいな~。

 ん? 鑑定結果が変なのは触れないのか? はは、触れたって謎は謎よ。明かされることはない。まあ、鑑定レベルが上がればいずれ分かるはずだから、いろんな物を鑑定しまくってレベル上げていきます! まぁまぁ、楽しみに待っててくださいってお客さん。


 ところで、新しい魔法はどうやって使えるようになるんだろ? イメージするだけで出来るのかな?

 想像するのは風魔法。風が私を支え、少し空を飛ぶイメージ。


「――【飛行(フライ)】――」


 できた! 想像していたのよりずっと低空飛行だけど……でも、これで速く移動できるから魔物に出会っても逃げられるかも! それに、練習したらそのうち雲の上まで行けるようになるかもっ!

 風魔法……風で物を切り裂いたりできるのかな?



――ガサッ



 後ろを振り向くと……狼と目が合った。な、なんか毛並みが銀色でキラキラ光ってるんだけど……。強そうな雰囲気だ。

 とりあえず――【鑑定】――


【名前】なし

【種族】銀狼

【スキル】

爪攻撃Lv3 

【総合戦闘力】750

【ランク】A

――非常に強力な魔物。Aランク冒険者と同レベル。鋭い前足の爪で攻撃してくる。


 オーマイガー。

 Aランク!?序盤に会ってはいけない敵じゃんかっ!!

 対して私はF?ランク。なぜ?がついているのかは謎だが、間違いなく私はF。

 鑑定結果だけ見たら、私は確実に死ぬだろう。だが……私の直感は違う答えを出している。

 ――勝てる。

 この狼を見ても恐怖が微塵も湧いてこない。確かにこの銀狼は強者らしい風格があり、隙を見せない佇まいをしている。


「――【身体強化】――」

 この魔法は魔力を全身に行き渡らせることで、身体能力や思考速度を上げることが出来る。

 これもラファールおじさんに教えてもらったんだ!

 どう倒そうか? あの爪……掠るだけで死ぬかもしれない。なら、距離を保ちながら攻撃できる魔法しかないね!

 火魔法を使うと森が燃えちゃうかもしれないしなぁ……。ちょうど攻撃用の風魔法を使ってみたかったから、やってみましょう!


「ガァッ」


 銀狼が口を開けながら私めがけて飛び込んでくる。私を一飲みするつもりなのだろう。相手が悪かったね、私じゃなかったら君も死ななかったのに……ね。


「――【風刃(ギロチン)】――」


 右手に魔力を込めて風の刃を放つ。銀狼は私に触れることなくその首が飛んだ。

 やった、初めて敵を倒した! 風魔法ってこんなに威力が強いんだね!

 十分はしゃいだ後、ふと床に転がっている銀狼を見る。切断面からは止めどなく血が溢れ出し、地面を赤く染めている。血の嫌な臭いが鼻につく。

 あれ? 私ってこんなに心が冷たかったっけ?

 普通、こんなにグロイ場面をみたり生き物を殺してしまったら……罪悪感とかに苛まれるんじゃないの? それなのに、血の匂いで他の魔物が来たら面倒だとか思ってしまっている自分がいる。

 異世界に来て、私の心は変わってしまったの? 元々はこんなんじゃなかったはず――――



 あ……あれ? 前世がよく思い出せない。私の前世の名前は? なんで死んだんだっけ?

 ……このことを深く考えたらダメな気がする。怖い。これ以上踏み込めない。踏み込んだらもう……二度と元に戻れないと私の勘が警告を鳴らしている。やめよう。



♢♢♢



「――【極小炎(プチファイア)】――」


 そこら辺で集めた木に火をつける。ん? この炎をどうするか? もちろん、さっき倒した銀狼を調理するために使うのよっ!

 ラファールおじさんから食料は貰ったけどさぁ、いつ無くなるか分からないじゃん? それに、このまま銀狼の死体が朽ちるのは可哀そう。勝者として私はこの血肉を喰らい、糧にする義務がある。一片たりとも無駄にはしない。

 あ、解体はラファールおじさんから貰った短剣でしたんだ~! 解体の仕方を教えてくれて、短剣までくれたラファールおじさんには本当に感謝だよ……。ただ、ラファールおじさんと一緒に解体したのは小さな狼だったから、この銀狼とはかなり大きさが違ってて……大変だったよ。

 そろそろ食べれるかな? 脂がしたたっている肉を見て、よだれがじゅるりと垂れる。もう我慢できない。それでは、いただきます!


「――っ」


 噛み切れない…………。ただ、噛めはしないけどお肉の美味しい味が口いっぱいに広がる。これは……たとえ噛めなくても食べなくちゃ!

 よし、噛めないのならしゃぶって食べよう!



♢♢♢



 銀狼を食べていたら、いつの間にか夕方になっていた。では、ラファールおじさんに教えてもらった星を見ながら脱出しよう!

 星を見ようと空を見ると、急に木の枝が伸びて空を隠してしまう。

 えっ⁉ さっきまで普通に空を見してくれたじゃんか! なんで急にダメになるのよっ!


 もしかしてこの木……魔物?

(――【鑑定】――)



【名前】なし

【種族】魔トレント

【スキル】

連携Lv1 魔力操作Lv1 読心Lv1 急成長Lv1

【総合戦闘力】250

【ランク】D

――魔境の森にだけ生息する魔物。人の心を読むことが出来る。魔力を巧みに操ることで己を動かし、魔境の森に入った者を2度と出れないようにする。



 ほーほー、なるほどね。つまり、私が星を頼りにして出ようとしたからそれを邪魔したのね?

 よく木の魔物がそこまで読めるなぁ。読心っていうスキルのおかげなのかな?


 おそらく『魔境の森』の木は全て魔トレントだね……魔トレント全てが【読心】スキルを持ってたら出れないじゃん‼

 あれ? 詰んだ?

 大丈夫、多分詰んでない…………はず。

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