第32話 ここは一芝居打ちましょう
えー現在、私はとある街(名前はまだ分からない)にやって来ました。
魔境の森からは西側かと思いきや、東側から出てきました。なぜかというと……西側には我が憎き故郷であるステラ王国があるからです‼ もう何年も経ってるし大丈夫だとは思うけど、万が一”お忍び”で私の見た目を知っている王族や高位貴族がいたら困るからね。アムールが居るのはおそらくステラ王国……だけど、私が捕まって今度こそ殺されちゃったら元も子もないからね。安全をとって、真反対側の東側に来ました。
え? じゃあなんで私が最初に西側じゃなくて南側に捨てられたか? そ~れ~は~ね~、ラファールおじさんの優しさのおかげよ‼ 本来なら西側にポイっと楽々捨てられたんだけど、西側は強い魔物がうじゃうじゃいるからね! 私を可哀そうに思ったラファールおじさんが、弱い魔物(それでもAランクね笑)が多くいる南側に捨ててくれたのよ‼
本当にありがたい。どうお礼を言うべきか……。
そういえば……ラファールおじさん、無事に魔境の森出れたのかな? 魔境の森はある程度強くないと出れない。まあ目安としてはAランクってデュランタさんは言ってた。
ラファールおじさん、Cランクだったはず……。ま、きっと大丈夫でしょ‼
いつかまた会えるかな?
で、現在。
街の関所のようなものの前に来てます。街に入るのに身分証が必要だったらどうしよう。そういうの何も持ってないし……異世界漫画あるある”田舎生まれで身分証持ってないです”とか”記憶喪失で可哀そうな幼女”を演じるのもありだけど……もし衛兵がクソだったら最悪奴隷商に売られかも?
考え過ぎかな? もしそうなっても、そんじゃそこらの人間じゃ私に傷一つ付けられないだろうし、まあいっか。最悪逃げて別の町に不法侵入しよう‼
「お嬢ちゃん、一人? 身分証を提示できるかな?」
「一人、身分証は持ってない」
「じゃあこれから身分証を作ろうか、お金持ってる?」
「うん」
あ、意外と楽勝。
衛兵さんは優しいし、身分証も簡単に作れるみたいだし。お金は、ラファールおじさんから貰った金貨があるからね!
「金貨ッ⁉」
私が唯一持ってるお金だけど……なんかおかしかったかな?
「嬢ちゃん……こういう所では金貨を出してはいけないよ」
「なんで?」
「金貨は高額と言っていい。これは服屋や高級料理店で出すといい。こういうしがない関所や屋台で嬢ちゃんみたいな子供が出すと、悪い奴らに狙われるかもしれないんだ」
ふーん。そっか、確かにそういうこともあるかもね。
「今回は俺が金貨を両替してやる。世の中おじさんみたいな良い奴ばっかじゃないんだから気をつけるんだぞ?」
「ありがとっ!!」
「おっし、じゃあこの魔道具で簡易鑑定するから手を置け」
水晶みたいに透明な球体に手を置く。
すると少しの光が発せられ文字が浮かび上がる。
「えーっと、名前はパープ・ステラ……。……ステラッ――!?!?」
あ、あぁ〜……。
しまった。一応私は”死んだ”扱いになっているけど、除名されたわけじゃないから名前に家名がついたままだ。
頼む、王族だって気づかないで‼ どっかの貴族のお嬢さんくらいに思ってくれ‼ 説明してくれと問い詰められても困るし、この事がステラ王国の国王の耳に届くと困る!
き、きっと大丈夫だよねっ‼ ステラ王国はこの街は遠いし!
「……お、俺は何も見ておりません。なので……じゃなくて、ですので処分はご勘弁下さい……殿下!」
完璧にバレてるー。そしてめっちゃ震えてる……。
え、もしかして王族の秘密を知っちゃったから殺されると勘違いしてるの? この衛兵のおじさんには悪いけど、勘違いされてるのはむしろ都合良いし……ここは一つ芝居をしようではないか‼
「ええ、あなたは何も聞いてないし知らない。この関所にはパープという平民しか来ていない、いいわね?」
いかにも悪役令嬢のような冷たい表情を作り、跪いて冷や汗をかくおじさんを睨みつける。
「は、はいっ‼」
おじさんは土下座しながら返事をする。そしてテキパキと動き、身分証を完成させた。勿論、身分証に書かれている名前はパープ。ステラとはついてない、ただの平民のパープ。
「ご苦労。この事は他言無用だ」
「かしこまりました」
ふぃー‼
めちゃくちゃ焦ったけど、何とかなった‼ せっかく優しくしてくれたのに……おじさん、ごめんね。貴方の優しさ、忘れないからねっ‼
てか、金貨って高額なんだね。そんなものをラファールおじさんったらすぐに死ぬかもしれない子供に渡すなんて! お人よしにも程がある。
街には何とか入れたけど、これは世間の一般常識の調査から始めないといけないかもね。本当は最初に冒険者登録して魔物の死体を買い取ってもらおうと思ったけど……お金の計算とか価値を知らなくては詐欺に遭うかもしれない!
というわけでまずはそこら辺の屋台で調査だー‼
――ザワザワ
……の前に、まずは顔を隠せる服を買おう。ふふん、私はめちゃくちゃ可愛い顔してるからね‼ このままじゃ変な奴に絡まれちゃう。
可愛いって罪っ‼
この野郎……事実顔良いから誰も何も言えない。それもまたムカつくッ‼




