閑話2 奇妙な出会い
パープや魔樹木王と協力して放った【銀狼王の一撃】は今まで繰り出した攻撃の中でも最高の一撃だった。
だが我は奴を殺せなかった。
そのせいで、パープは母を失った。
我も親を失う苦しみは分かる。だから、何も声をかけずにその場を去った。……違う。”逃げ出した”の方が正しい。
我が弱かったせいで、奴を殺し損ねたせいで……我を信じて止めを任せてくれたパープを失望させてしまったかもしれないと、怖くなった。
声もあげずに、息を殺して涙を流すパープ。我を見つめる瞳に失望の色が映っていたらと思うと怖くて、目を合わせられなかった。そしてとうとう我は逃げた。
数日後、パープが魔境の森の南側――我の縄張りに訪ねてきた。
謝ろうと思い一歩踏み出してみれば、パープは「一緒に戦ってくれて、命を私に預けてくれて……ありがとう」と言った。
パープはそれだけ言うと去っていった。我の弱さに失望しないのか……?
おそらくパープは魔境の森を出るのだろう。そうなれば一生もう会えない。我は一生、この罪悪感と業を背負って生きていく。
『主‼ 追わないのですか⁉』
「……」
我に次いで強い銀狼――リアンが念話で尋ねてくる。
『主の熱い想い、わっちにも届いております‼ ここで追わないと後悔しますよ』
「追ってどうする? パープは友達を探しに行くと言っていた。我のような魔物がいれば邪魔になるだけだ」
『……じゃあ人間に擬態できるスキルを手に入れればいいじゃないですか‼』
「だが……我は彼女より弱い。情けなくて顔など合わせられん」
『ここにいても戦闘の機会が無いから強くなれませんよ? 一人での修行には限界があります‼ 人間の世界には”冒険者?”という強者が集まっているらしいです‼ そこで修行をしてみては?』
「それではお前たちが……」
『安心してください‼』
同胞たちが一斉に吠える。
まるでここは我らに任せろといっているようだ。
『わっちはおそらく、数日で銀狼王に進化する身……安心してここを任せてください‼ 我ら銀狼は主の幸せを願っております‼』
「「「ガウ‼」」」
「お前ら……」
『主が戻るまでの間、命に懸けてもこの場はお守りします‼』
「ありがとう。だが、人間に擬態するスキルの手に入れ方が分からないのだが……」
「……(汗)」
(まさか主がそのやり方を知らないとは……わっちですら知ってるのに。主は意外とポンコツなのです?)
数カ月後、見事【人化】スキルを手に入れた。
思ったより時間がかかってしまったおかげで、リアンの銀狼王への進化に立ち会うことが出来た。
我にも引けを取らないこのオーラならば安心できる。
余談だが、リアンはあっという間に【人化】スキルを手に入れることが出来ていた。少し悔しかった。少しだけだからな?
「では行ってくる」
「主~‼ お元気で~‼」
パープにはまだ会わない。まずは”冒険者?”とやらに会い、修行をするのだ。我は強くなる。
♢♢♢
「レッドドラゴンの討伐完了した」
「……さすが『目つきの悪いヒーロー』様です‼ 誰も討伐出来ず困ってたんですよ~」
パープと出会い、別れてから四年と少しが経った。
あの時……謎の暗殺者に襲われたことから、俺は”用無し”になったことを悟った。おそらくこのまま帰っても殺される。だから俺は国外へ出ることにした。
人質にとられていた両親にだけは言おうと思ったが、、、どうやらあいつらとグルだったようだ。大金を貰ったようで、金貨で豪遊していた。よくも俺を売ったな? と怒りは不思議と湧かなかった。ま、期待なんてしてなかったからかな?
そんなわけで何の未練もなく国外へ行った。俺の命を狙った奴らは確実に俺が死んでいると思っているようで、指名手配とかもされずすんなりと逃げ切れた。
拍子抜けだ。
そして……何故か俺は急激に強くなった。本当に意味が分からない。
初めは強くなった自覚が無かったが、国外の冒険者ギルドで鑑定して嫌でも自覚せざる得なくなった。俺がSランクであることにびっくりした受付令嬢は大声で叫び、目立ってしまった。
ランクCからSへ急激に上がるなど聞いたことが無い。
鑑定器具の故障かと思ったが、難易度の高い依頼を受け、あっさり完了できたことで理解した。本当に強くなっている……。
何故か、偶然町に現れたドラゴンを一撃で仕留め、一気に冒険者ランクまでもSまで上がり、ヒーロー扱い。
目つきが悪いせいでいつも邪険にされていたから少し……いや、かなり嬉しかった。だからかなあ? 困っている人が居たら率先して助けた。そしていつしか『目つきの悪いヒーロー』と呼ばれていた。目つきが悪いは余計だがな。
でも、不思議と嫌な気はしない。周りの人が親しみを込めてそう呼んでくれるからか……?
ランクがSSに上がってからは頻繁に魔境の森に踏み込むようになった。パープを探すために……。
生きているのか分からない。だが、なぜかパープは生きているという確信があった。それに、この力もパープから授かった気がしてならない。
謝りたい。あの日見捨ててしまったことを。
「おぬしは”冒険者?”という奴か⁉」
突然、18歳くらいの銀色の狼獣人が現れる。
魔境の森に、丸腰の人間だと? ……いや待て、このオーラ。普通の人間とは思えない。警戒しながら大剣の柄を持つ。
「ああ、俺は冒険者だ」
「やはりか‼ 我と戦え、人間よ‼ おぬしとの戦いなら我も強くなれる‼」
そう言うと、急に戦いをけしかけてくる。
鋭利な爪を大剣でガードし、蹴りを入れて距離をとる。
「我は何としても強くなり、パープに会うのだ」
狼獣人がボソッとそんなことを言う。
「待て、お前……今パープと言ったのか?」
「む、そうだが?」
「パープの知り合いか⁉ あの紫水晶のような瞳を持った兎獣人のパープ⁉」
「そうだが……おぬしはパープのなんだ?」
「俺はパープの友達だ」
「……友達なら殺すわけにもいかぬ、か……」
まさかパープを知る人に会えるとは‼
「パープは無事か?」
「ああ。しかし困ったな。おぬしと戦えないのならまた”冒険者?”を探さなければ」
「そういえば、お前名前は? 俺はラファールだ」
「我はソリテールだ」
――その後、ラファールとソリテールのパーティー、『紫水晶の瞳』が結成された。そのパーティーが世界最強と名を馳せるのはまた別の話。
パープ大好き男たちの最強パーティー爆☆誕!
なーんかおもろいなぁ。




