第27話 魔境の森大戦⑤ ソリテール戦その2
ずっと彼女に会いたいと思っていた。
常に強者であった我が初めて感じた痛みを、鮮烈に覚えている。痛みだけではなく、彼女の瞳をも忘れることが出来ない。
植物の葉のような形をした瞳孔を見てからというもの……我はどうしてしまったのだろうか? 敵であるはずなのに、彼女のことを考えると胸が高鳴る。
あぁ、生にしがみつき、惨めったらしく足掻くその姿は美しかったなぁ。
ではなくだな、パープは死んだんだ。彼女のことは忘れて強くなろう。再び相まみえた時に勝てるように……。違う、そうじゃない。どうして我は彼女が生きていると信じているのだ?
♢♢♢
彼女は生きていた。
だが、久しく会った彼女の纏うオーラは……悲しみと怒りにまみれていた。
そんなオーラを纏うお前は我が知るお前ではない‼ そのままでは、確実に北の主との戦いで命を落す。それは駄目だ。なんというか……我以外の者に負けるパープは見たくない。死ぬなどもっての外‼
始めから協力してもよかったが、パープの悲しきオーラを払うまでは共闘など出来ぬ。ましてや死ぬと分かっていながら戦場に送ることも出来ぬ。
そのオーラを払うには……心のうちに秘めている想いをぶつけてもらう必要がある。
よし、我と全力で戦えばきっと想いをぶつけてくれるだろう。拳で語らおうじゃないか、パープよ。
無茶振りだというのは分かっておる。だが、我は……お前のそんな姿を見たくないんだ。
――ゴン!
しまった、強く魔法を放ちすぎてしまった。
パープの頭から血が零れ落ちる。
そして――
「……せない」
「何だ?」
「……許せないっ‼」
また以前のように、一瞬で気配が変わる。瞳には何度も夢に見た輝きが宿っていた。
「美しいな……」
もしかしたら我は、この瞳を見たくて無理やりパープを戦わせたのかもしれぬ。深い悲しみのオーラを放っているパープを見たくないから戦いたいのだと思っていたのだが……どうやら違ったようだな。我は本当にどうかしているようだ。
「自分が、許せないのっ‼ どうしてどうしてどうしてどうしてっ‼」
パープの姿が消えたかと思うと、強い衝撃が頭に響いた。
「ガッ」
「なんでアムールを庇わせてしまったの⁉ 私が弱いからっ⁉ 友達を守れない弱い私なんて要らないっ消えちゃえっ‼」
「ガハッ」
ま、まさかこれほどまで強くなるとは……。
パープ、お前……我より断然強いぞ? なぜ我より強いのに助力を必要とするのだ? もしや……自覚が無いのか? その瞳の秘密を……。
「アムールは助かるっ‼ だから私は生き残らなくちゃいけないの‼ なのにぃっ――」
「ッ⁉」
なんだ、その腕に巻き付いている蔦はっ⁉ さっきまで無かったはずだぞ⁉
パープは蔦を両手で持ち、我の頭上を飛び込えながら腕を振り上げる。待て、待て待て待て待て⁉ その蔦で、我をどうする気だ⁉
「あんたはなんで戦おうとするのよっ‼ 北の主倒したら何回だって戦ってやるよ‼ だぁかぁらぁぁあああ‼ 黙って負けろぉ――‼」
「――っ――っ‼」
蔦で、我の首を絞めるだと……? ぐ、息が……参ったすら言えぬ……。このままじゃ本気で死ぬっ‼
意識が……。
だが、パープに殺されるなら本望よ。彼女の不思議な力で死ねるのなら、きっと我の親も喜んでくれる……くれるか⁇
♢♢♢
「はっ」
我は生きている?
横を見ると気絶したパープが居た。どうやら、我の首を絞めている途中で力尽き眠ってしまったようだ。お陰で我は今生きている。
あれからどれだけ時間が経った?
森に漂う匂いからして、そう時間は経っていない。それに――北の主と西の主の戦いもまだ終わっておらぬ。
今回の戦いはパープの勝利だ。
ならば……勝者の願いを聞き入れるまでだ。……我が勝っても願いは聞き入れるつもりではあったがな。
パープの悲しきオーラは払われている。今はスッキリとした表情でスースーと寝息をたてている。良かった、これなら我も心置きなく北の主と戦える。
「……」
やはりパープは美しい。
幼子にこのような気持ちを抱くのはちと恥ずかしいがな……。
パープの小さな鼻に我の鼻を重ねる。なぜ、こんな行動をしたかは我もよく分からない。ふむ、やはり我はパープに狂わされたのかもしれぬな。だが、気分は不思議と悪くない。
♢♢♢
「起きろ、パープ」
「う……ん?」
あれ、いつの間に寝てた? 確か戦ってた途中に無性にイライラしてきて……待って、戦いはどうなったんだ?
「戦いはパープの勝ちだ」
「へ?」
嘘……記憶無いんだけど? 木に思いっきり頭をぶつけたところまでは覚えてるけど……。
「乗れ」
「ん?」
「我の背に乗れ。お前の足で戦場に向かえば間に合わなくなる」
「――‼ うん、ありがとっ」
ぴょんっとジャンプしてソリテールの背に乗る。どうやら一緒に戦ってくれるみたい。よーっし、これなら百人力だ‼
……ソリテールは滅茶苦茶強かったはずだけど、私はどうやて勝ったんだ? まあいいや、今は戦いに備えないと‼
そういえば、プロローグを追加したので、そっちも読んでください‼
ブックマークと評価よろしくお願いします‼(久しぶり)




