第26話 魔境の森大戦④ ソリテール戦その1
今でもあの戦いを鮮明に思い出せる。初めての命を懸けた戦い、そして苦い敗北。
魔境の森南の主――銀狼王のソリテール。
彼は本当に強かった。当時生き残れたのが奇跡だった。
ソリテールの攻撃には”威”がある。もし、ソリテールと手を組めれば……その攻撃は私たちに欠けていた“決め手“となる。
ソリテールの居る場所は何故か分かる。詳しい場所は分からないけど、何となく感じられる。
でも……遠すぎる。
そこに着くころにはお母さんたちはきっと……。
だから、彼にここに来てもらうしかない。お母さんたちからは十分離れた。……よし。
「ソリテール――ッ‼‼」
魔力を乗せた声。これならソリテールにも必ず届く。
「生きていたか、パープ」
「久しぶりね、ソリテール」
数分もしないうちに音もなく白銀の毛をなびかせ、ソリテールは現れた。
【名前】ソリテール ♂
【種族】銀狼王
【スキル】
爪術Lv6◁1up 威圧Lv4◁1up 統率Lv5 風魔法Lv4◁1up 水魔法Lv5 無属性魔法Lv3◁NEW 体術Lv2◁NEW
【称号】
隻眼の男前 恋焦がれる者
【総合戦闘力】1700◁200up
【ランク】SSS
――パープに片目を潰されてから、彼女のことだけを想い、片時も忘れずに修行してきた。
めっちゃ強くなってる……。
これはもし戦うとなったら大変なことになるぞ……。全力回避しないと。
「ソリテール、私は貴方にお願いがあって来たの」
来たというよりも、来させたけという言葉の方が正しいけどね。
「ほぅ、一応聞いてやろう」
「今、魔境の森西の主と北の主が戦っているの」
「知っている。この悍ましい気配……西側が押されているな? そして、お前は噂に名高い西側の娘……違うか?」
「――ッ‼ そうよ」
全部お見通しって訳ね。
「我も北の主は気に食わん。力になってやってもいい」
「本当っ⁉」
「だが条件がある。パープ、今一度我と戦え‼ お前が勝ったら協力してやる」
「え⁉ 今⁉」
「そうだ。無論、以前と同じように命を懸けての戦いを望む」
本気……? その戦いが終わった後すぐに北の主とも戦うことになるってのに?
だから私は勝つことが絶対条件。その上ソリテールが万全な状態で戦えるように大きなダメージを与えることを避けなくてはいけない。
えーっと、無理じゃないカナ?
「後日っていうのは……?」
「駄目だ」
「そこをなんとか……」
「戦う気が無いのなら……無理やり戦う気にさせるまでだっ‼」
いきなり戦闘突入っ⁉
ソリテールはかなりスピードが速い。だから【煌炎】は常に使っておかないと一瞬で戦いが終わる。
「ガァアア‼」
「くっ」
これ、ガチなやつだ。本気で殺す目をしてる。
今回の彼は初めから本気。そして私は致命傷を与えてはいけないというハンデがある。これが男前なわけあるかぁっ‼ 私一応幼女なんですけど⁉ 優しくしやがれゴラァ‼
「どうしたパープ⁉ 本気で攻撃しないと死ぬぞ‼」
「本気でって……本気で攻撃したら、戦えなくなるじゃんかっ‼」
どうしてそんなこと言うんだよ⁉ あ、分かった、彼は馬鹿なんだ。ごめん、君のこと過剰評価しすぎだったみたい。本当はただの脳筋なんだね。
「そんなもの忘れろ。今はただ、自分の想いを我にぶつければいいんだ‼」
「はぁ⁉」
くそ、私は今、あんたの攻撃を避けるのに必死なのに、想いをぶつけろ?
「――【暴風】――‼」
「え、わぁぁああ‼」
――ゴン!
ソリテールの風魔法によって吹き飛ばされる。あまりの風圧に受け身すら取れず、木に頭を強く打ち付けてしまった。
「…………」
頭から何かが流れ落ちてくる。あぁ、血か。そりゃそうか、頭ぶつけてそこから流れるのは血しかない。まさか涙なんかが頭から流れるわけないし。
怒りが沸々と湧き上がってくる。これはソリテールへの怒りじゃない。私への怒りだ。
怒り……? ううん、そんな生ぬるいものじゃないな。
この感情は……“憎悪“だ。
思考が憎悪にどんどん染め上げられていく。
――ブツン
そんな音が聞こえたきがする。あぁ、頭打ったせいで狂ちゃったのかも……。
それを最後に、私の思考は完全に憎悪に飲み込まれた。
アムール……。
憎悪に飲まれたパープはどうなるのでしょうか⁉
多分、パープは酒飲んだら怒り上戸になると思う。




