第23話 魔境の森大戦①
その日はいつも通り、朝ごはんの良い匂いで目が覚めて、顔を洗って、アムールとピーマンを押し付け合いながらご飯を食べていた。
食べながら、今日は何をしようか、どんな修行をしようかと考えていた。
当然のように、日常が続くと思っていた。
黒幕がいつ襲ってくるか分からない。お母さんがいつ崩壊して暴走するか分からない。そんなの知っていた。
でもね、頭では分かっていてもどこか他人事のようで……起こるわけないって謎の自信があったの。
こうなるって分かっていたら、もっと違った行動をしていたのかな? 結果は違っていたのかな?
♢♢♢
「……ぇぃっ‼」
「……ぅー‼ ぃゃっ‼」
お母さんが見ていないのを確認してから、私たちはピーマンを押し付け合う。
この世界にもピーマンがあるとはっ‼ ピーマンが栄養満点じゃなければこうして食卓に出てこなかったのにぃ~‼
もう7歳になったけど、それでもピーマンは嫌いだっ‼
「こ~ら~‼ ピーマンを押し付け合ってないでしっかり食べなさぁい♡」
「「……はぁぁい」」
くっ、この何とも言えない苦みと臭み。ぅぇぇぇん。ピーマンを食べる代わりにキャロッティをたくさん食べるから許してよぉ。
――……ズン
「「「――ッ⁉」」」
突然、空気が変わった。
何がが現れた。ゆっくり近づいて来たわけじゃない。何らかのスキル……転移(?)とかできっと来たんだと思う。
「二人とも、この気配は……北の主死霊王よ」
……やっぱりね。遂に来てしまったか。
強大な気配に足が竦みそうになる。でも、アムールは怯えてなんかいなかった。臨戦態勢に入って、まっすぐ敵がいるであろう方向を見ていた。
アムールが怯えてないんだ。なら、私も怯えるわけにはいかないよね‼
「この際、家のことなどどうでもいいからね。ガンガン破壊しましょぉ♡ 私から攻撃するから、後に続いて攻撃して」
私とアムールは頷く。
家には少し申し訳ないけど、仕方ない。住む人が居てこその家だから……ごめんね。
「それと……絶対に無理しないでね」
「うん」「……分かった」
お母さんも、無理しないでね。
「はぁっ」
お母さんが蔦を伸ばし、家の壁を貫通させながら攻撃を仕掛ける。
その隙に私たちは二手に分かれて家から飛び出す。勿論、壁をぶち壊してね☆
こいつが死霊王……‼
骸骨がローブを着ていて、全身から黒い靄が噴出している。そう、想像していた通りの見た目だった。
始めから全力で攻撃をするよー‼ この修行期間で完成させた【煌炎】を使って、全力で攻撃する。
「「はぁぁあああっ‼」」
私とアムールの左右から同時攻撃。効かないわけがないと確信していた。なのに――
「なっ」
黒い靄に阻まれて、攻撃が通らなかった。どうやらアムールも同じだったみたい。
それに、なんだか肌がピリピリして痛い。ううん、これはピリピリと言うよりも……生命力が吸われているような感覚だ。
もしかしてこの靄のせい?
「二人とも離れてっ‼」
すぐさま離れると、お母さんの蔦が死霊王目掛けて振り落とされた。お母さんの攻撃はどうやら通るようで、死霊王は防御する。
そのまま二人の世界に入るかのように、お互いだけを見つめ合い戦っていく。
お母さんは手が離せないから、【真実の鑑定】でステータスを見れない。なら、私がやって情報を得るしかない。まずは敵の靄の正体を知らないと攻撃も出来ないしね。
「――【鑑定】――」
【名前】???
【種族】死霊王
【スキル】
暗黒魔法Lv3 支配Lv5 無属性魔法Lv5 体術Lv4 隠蔽Lv3 憤怒Lv3…………
【称号】
厄災……
【総合戦闘力】2500
【ランク】SSS+
――鑑定レベルが不足しているため、一部表示不可。
【暗黒魔法】
――闇魔法の上位派生形スキルの一つ。常時”瘴気”を身体から放出する。
【瘴気】
――触れるだけで体力が削られる。(闇魔法保持者はある程度ダメージが軽減。暗黒魔法、深淵魔法保持者はダメージが無効)
纏うと強力な防御となる。ある程度の攻撃でないと、そもそも攻撃が通らない。光魔法、神聖魔法による攻撃が有効。
この【瘴気】のせいで攻撃が通らなかったのか。
光魔法と神聖魔法が有効なのが幸いだ。なら、【煌炎】を応用で光の要素を強めれば攻撃が通るかもしれない。それに、アムールと相性ばっちりだしね‼
アムールに死霊王のステータスを共有する。
「って、アムールその腕……!?」
アムールの腕は黒く変色していた。
「あ、あぁ。さっき攻撃した時に瘴気に触れちゃったからね。――【回復】――」
瘴気……。
私も触れたけど、嫌な感じはあれどアムールほどのダメージは負わなかった。
もしかしたら、【煌炎】で瘴気のダメージを軽減出来るのかも……?
「触れるだけでダメージが入るなら、アムールは遠距離攻撃の方が良さそうだね」
「え……じゃあパープはどうするの?」
「お母さんのサポート。アムールより体力値あるし、【煌炎】で瘴気のダメージを軽減出来るみたいだから、これが最適だと思う」
「で、でも危険だよ……? それなら僕も【限界突破】を使って――」
「駄目、代償があるのを忘れた? 私なら大丈夫、信じて!!」
「ぅ……分かった」
「――【神罰の槍】――」
「――【煌炎】―― お母さん、加勢するよっ‼」
光の要素を強くしたおかげで、さっきよりも瘴気のダメージが少ない気がするし、死霊王へ攻撃が通る。幸い、敵のスピードは遅いから、攻撃も避けられる。
ランクがお母さんを超えたSSS+だったからどうなるかと思ったけど、意外といける……?
『ええい、煩わしい‼』
しゃ、喋ったー⁉
「パープ‼」
お母さんの蔦で後ろに引っ張られた瞬間、さっきまで私がいた場所が濃い瘴気で包まれる。
あ、危ない。いくら【煌炎】で瘴気のダメージを軽減させていても、あの瘴気はまともに浴びたら動けなくなる。
『我、世界を滅ぼす者。西の主、目障りなり。――【滅びろ】――‼』
さっきよりもっともっと濃い瘴気が襲い掛かってくる。あれはヤバい。触れたら最後、腐り落ちると分かる。
避けなきゃ。でも、範囲が広すぎて避けられない――‼
覚悟を決めた瞬間、地面から木の枝が生え、瘴気から私たちを守ってくれた。
この木は――
「悪い、遅れちまった」
「「デュランタさん‼」」「遅いわよぉデュランタ」
なんか暗黒とか深淵とか聞くと疼くわ。
……中二病からまだ抜け出せてないのかもしれない。これはきっと、不治の病なんだっ!! そう、しょうがないことなんだっ!!
そしてなぜか鼻血止まらん助けてっ!!




