第19話 模擬戦① ―パープVSデュランタ―
「それでは、パープVSデュランタ、模擬戦開始っ!!」
お母さんが使っていたあの技を使えるよう頑張ったけど……無理だった。やっぱり1日だけの修行は無茶だったよね? 成功確率は3割程度で魔力消費が半端ないというめちゃくちゃな技だけど、これがないと勝てない。
だから使うしかないってわけよ。
これは止めの一撃。それまでは絶対に見せてはいけない。一度見せたらきっと、今の私では避けられてしまう。初見だからこそ当たる一撃。
もっと時間をかけて修行すればきっと、最強の必殺技となるだろう。
今は付け焼刃みたいになってしまったけど、ね。
その時間を補うかのように、私の手にはお母さんが作ってくれたこの武器がある。
籠手に結晶で作られた刃がついた武器。こういうのをたしか手甲鉤って言うんだよね。可愛く作るって言ってたけど、、、本当に可愛くしてる。籠手は白いふわふわした布で作られているみたいで、なんか兎モチーフのグローブみたい。燃えないのか心配で聞いてみたけど、『その布は特殊な布だから大丈夫♡』って言ってた。なんの布かは聞かないでおこう。
「はぁっ」
「――‼」
掠っただけでデュランタさんの枝が切り裂かれる。枝って言っても、ただの枝じゃない。大量の魔力が通っている枝だから、下手したら鉱石よりも硬い。それを掠っただけで切り裂けてしまった。
……これ、うっかり自分まで切っちゃわないように気をつけないとだね。
「それはカレンデュラから貰った武器か?」
「うん」
「なるほど、だからそんなに切れ味がいいのか。だが、良い武器を持ったからって自分が強くなったと思わないことだな」
――ずずず
この音は……下っ⁉
突如地面から生えてきた枝を避ける。が、逃げ場を無くすように分裂し、追尾してくる。避けられないと判断し手甲鉤で攻撃する。
――ギィィン
「切れないっ⁉」
そのまま枝に殴打され、吹き飛ばされる。
「だから言ったろ? お前にはまだ武器を使いこなせる力が無い。俺が力を入れただけで切れなくなる。俺も幼女をいたぶる趣味はねぇ。大人しく降参しな」
「……ヤダ」
このまま負けて前世の歳を公開するわけにはいかない。アムールだけには知られたくない。だから……
「ふぅ――」
溜まった熱を吐き出す。
これは戦い。もう模擬戦だとは思わない。デュランタさんを”殺す”。そう覚悟しないと絶対に勝てない。デュランタさんには悪いけど…………死ね――――
♢♢♢
パープを吹き飛ばした瞬間、空気が変わった。
感じたことも無いような鋭い殺気。たとえSSSランクの魔物でさえあんな冷たい殺気は出さねぇ。……まだ6歳のガキだぞ⁉ ありえねぇ。俺、恨まれるようなことしたか?
うまく身体が動かなくなる。俺が恐怖しているだと? 戦闘力も歳も格下の子供に? ……相手は子供だという侮りを瞬時に心の底に沈め、恐怖を受け入れる。
もう手加減はしない。
本気でいくぞ。
「おらぁぁ」
全力の力を込めた無数の枝で攻撃する。枝は俺の意思で自在に動き、追尾も可能。パープのスピードでは避けきれまい。万が一避けられても先ほどのように追尾して攻撃すればいい。
「――【炎壁】――」
「なっ」
あの魔法は攻撃用じゃない。目くらましか⁉
パープが見えなくては攻撃も追尾もできない。いつもなら魔トレントと視界の共有で攻撃するが……模擬戦での使用は禁止だからな。くそっ!
【炎壁】は消えたが、肝心のパープの姿はない。
さっきまであれほど殺気を感じられたのに今は何も感じない。まさか、殺気を調節できるのか⁉
どこだ……。
――ガサッ
木の葉のこすれ合う音……そこだっ
攻撃するも手ごたえは無し。しまった、罠――
「――【煌炎】――」
振り返るとそこには、煌めく炎を身に纏ったパープがいた。どうやってだ⁉ どうやって武器に炎を纏わせているんだ⁉ そうとう正確に魔力操作が出来ないと無理な芸当だ。長く生きてきたが、見たことないぞ⁉ こんなことが出来る奴は……人間じゃねぇっ‼
「はぁっ‼」
パープの武器が俺の身体を切り裂く。
【煌炎】よりも光り輝くその瞳の奥底を見て、理解する。こいつぁマジもんの化け物だ、と。
♢♢♢
よし、切り裂いた。
でもまだ致命傷じゃない。もう一撃――
――シュッ
「――くっ」
「悪いな、もう一撃のチャンスはやらねぇぞ」
デュランタさんの枝が巻き付いてきて、身動きがとれなくなる。
「ま、まだ……っ」
デュランタさんは尖った枝を首に突き付けてくる。
「これで終わりだ」
「そこまで! この模擬戦、デュランタの勝利」
「そ、そんなぁ」
「パープっ火傷してるじゃんか‼ ――【高回復】――」
「ありがとう、アムール」
「はっはっは。パープ、いい線いってだぞ。最後の攻撃が完成していたら俺が負けていただろうな」
くそ~。最後の技は結局成功しなかった。
刃に炎を纏わすことは出来たけど、私の爪術の技術が足りなかったせいで攻撃力がガタ落ちしてしまった。
【煌炎】は光魔法と火魔法の複合魔法を刃に纏わせるというオリジナルの技。魔物は大体光魔法に弱かったりするから、火魔法と混ぜ合わせてみた。刃に魔法を纏わせるのはかなり難しかった。本当は刃だけに纏わせるつもりだったけど、まだ魔力操作が未熟で身体にまで纏わせてしまう結果となった。
だから私にもこの技はダメージが入る。今後は修行して要改善って感じだね。
この技はね、お母さんが蔦を身体に纏わせて身体能力を無理やり上げているのを見て思いついたんだ。私も何かを纏わせれば良いかもってね‼
「さてパープ、負けたんだからアレを言わなきゃね」
「あ……」
そうだった。
約束は守らなきゃ。
大丈夫、アムールなら本当のことを言ってもきっと…………
「アムール、私実はね」
「??」
「私、前世で28歳だった、の」
――ドクン、ドクン
心臓の音がうるさいくらい鳴る。大丈夫、きっと大丈夫。
「えっ⁉ そうだったの⁉ 敬語で話さなきゃダメかな?」
「え……ため口でだいじょぶ」
「友達解消? 嫌だよ⁉」
「いや、こっちのセリフだよ。友達のままでいて、欲しい」
「良かった~」
こんな軽い感じなの?
「ね、パープ。歳が違くたって何も変わらないでしょ?」
「っ、うん‼」
「お前、つまり34歳なのか⁉ どうりで子供っぽくないわけだ」
「あんたの目は節穴~? パープはこんっっなに子供っぽいのに⁉」
「あぁ? カレンデュラも見たろ? 子供ならあの殺気は放てるわけねぇし、自分への怪我覚悟で攻撃したりしねーだろ」
「はぁ? 友達に幻滅されたくなくてびくびくしてる所とか、私が死ぬのが嫌で駄々こねる姿とかが子供っぽくて可愛いじゃないのっ‼」
「「…………(汗)」」
お母さんのこんな姿初めて見たかも。
もしかして二人って……‼
「二人は夫婦なんですか?」
「あぁん?」「はぁ⁉」
あー‼ それ私が言いたかった‼ ずるいぞアムール‼
「ばっ、誰がこんな女とっ‼ 好きなわけね―わ」
出た、ツンデレおっさん。この反応は図星なのかなぁ?
「……アムール、ちょぉっとお話しようか♡」
「あの、カレンデュラさん、肩、痛いです」
oh……笑っているのが逆に怖い。
♢♢♢
「はぁ、それじゃぁそろそろ模擬戦始めるわよ」
「アムール、デュランタさんをボッコボコにしちゃえ!」
「そうよ、手加減は必要ないわっ♡」
「うん、敵はとるよっ‼」
「俺の味方はいねーのかよ」
「「いない」」「いません♡」
「それでは、アムールVSデュランタ、模擬戦開始っ‼」
ま、友達は良い奴ばっかとは限らんよ。
上辺だけの子もいれば、本当に良い子もいる。(当たり前) パープは良い子と出会って良かったね。




