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第1話 転生

「〇〇さぁ、いつになったら仕事上達するの?」

「すみません」

 私は頑張っているのに……。



 疲れた。


「△△さん、ここ間違えてませんか?」

 私の時とは違って、△△さんには丁寧な言葉遣いなんだね。羨ましいなぁ。

「部長……でもこれぇ、〇〇さんがミスしたんですよぉ?」

「え…………?」

 そんな記憶ないし、やっていない。

 また、△△さんに仕事を押し付けられるのか。私がここで弁解しても誰も信じてくれないんだろうなぁ。友達いないし。

「また○○か。全部やり直しだ。終えるまで帰らず仕事しろ」

「……すみません」



 疲れた、、、



 今日も残業。もう何日まともに眠っていないんだろ?

 あれ、おかしいな。目の前がぐわんぐわんするし、耳鳴りが酷い。あ、△△さんったら凄い不細工になってる~。笑える――


――バタン


 あれ、もしかして私、倒れた?分からない。もう目の前が真っ暗で手足の感覚も薄れてきた。


「おい○○、寝るんじゃない。給料泥棒のお前は死ぬまで働け」


 私、寝てないんだけど。死ぬまで働けって……今死ぬ寸前っぽいんですけど。

 誰も……誰も救急車呼んでくれないの……?

 本当に私ってついてないね。仕事や上司にも恵まれないし、親だって早くに死んじゃったし。せっかく、アルバイトで学費稼いで大学を卒業したのに……。なのに唯一内定もらったのがこのクソ会社だったなんて……。


 パワハラ上司とセクハラ上司、あとは私が何も言わないからって仕事を押し付けてくる後輩ばっかり。あぁ、こんな会社辞めておけば良かった。

 ていうか、このご時世でパワハラとか古いよね。音声録音して裁判しておけばよかったな。そしたら慰謝料とかたくさん貰って、美味しいものたくさん食べたのに。ま、無理か。裁判をする勇気も、お金も、何にも持っていないし。



 せめて”友達”、作っておけばよかった。

 親が居ないから、学費稼ぐためにクラスメイトとの付き合いを断り続けてきた。始めは皆、私のこと”遊ぼう”と言って誘ってくれた。嬉しかったし、それが唯一のよりどころだった。”バイトのシフトを頑張って調整するから、待ってて”と言って何度も断った。そうしているうちに……誰も誘ってくれなくなった。

 ひそひそと”○○ちゃん大変そうだから誘うの悪いよね”とか、”私たちが誘うの気まずいし”とか聞こえてきた。

 時間に空きが出来たときにはもう遅かった。私は孤立していた。私から遊びに誘えばよかった……でも、そんな勇気私には無かった。私には弱虫って言葉がぴったりだね。

 それからはずっと……ひとりぼっちだった。


 死ぬって分かったからかな。寂しい。寂しいよ……。後悔ばかりが湧き出てくる。

 友達を作っておけば、こうはならなかったのかな?あのとき、私に一欠片でも勇気があれば、何かが違ったのかな?



「――――っ! ――――!」



 部長が何かを言ってる。もしかして、私を怒鳴りつけてるの?ふふ、私が死にそうなのをまだ気づいてないのかな?

 きっと、明日のニュースは私の死についての見出しが話題になるね!


『ある会社に働いていた28歳の女性過労死。一体何が――!?』


 みたいな見出し。

 そしたらこの会社は終わりだね。パワハラ上司などはネットによって特定され、炎上。記者会見でツルツルテカテカの頭を見せながら頭を下げるんだ!

 そう考えたら笑えるね。そうなったら私も少しは報われるかな?



 ――――来世では、”友達”を作りたいなぁ、、、




♢♢♢




 凄く永い時間、眠っていた気がする。重い瞼をあける。

 ん、んんっ!?

 私、死ななかったの!? 起き上がろうとしたが、体がうまく動かない。あれ、おかしいなぁっと手を見た瞬間、私はびっくりして目玉が飛び出そうになる。まぁ飛び出すわけないけどね

 手が小さい。まるで赤ちゃんみたいに。

 これはいわゆる…………”転生”というやつでは……?


「ほぎぃぃぁぁぁああ‼」


 やったーと声をあげようとしたが、すっごい奇怪な声になってしまった。

 とにかくだ! 私は、夢にまで見た転生を果たしたのだ!

 後悔? するわけないじゃないですか。血のつながった人は皆死んだ。友達もいない、同級生だって疎遠。会社はブラック超えて漆黒だよ。未練があったら凄いってくらい、お先真っ暗な人生だった。私が死んだって、誰も、悲しんでなんかくれないんだ…………涙を流してくれないんだ…………。


 よし、切り替えよう! せっかく頂いたチャンスなんだから、今度こそ友達たっくさん作るぞっ!


 小さい拳を握り、力いっぱい上へと掲げる。女神様に会えなかったのは残念だけど、まぁいいや! 私は二度目の人生を楽しく謳歌してみせる!



「あらあら、パープったらどうしたのかしら?」

 拳を掲げていたら突然、若い女性がこの部屋に入ってくる。キラキラと輝く金髪に碧眼…………それとうさ耳!? 兎獣人!?

 ということは、、、ここは異世界っ! 燃える……! 大興奮だよっ! 魔法、早く見たいっ!


「お母様はここですよ」

 なんと……この若くて美人なうさ耳さんはお母さんでしたか……。ならきっと、私もとんでもないくらいの美人に成長するんだろうね。よし!

 そして、このお母さん……。かなり身分が高そう。服がドレスだし、宝石とかの装飾品がたくさんついてる。

 転生人生勝ち組ですか? ありがとう、神様…………‼ きっと、前世で可哀そうだった私に慈悲をくれたのですね…………っ‼



「ソニア、出産おめでとう」

「コニーリョ様!」

 冠を被った若い男性が入ってくる。コニーリョって……すっごく言いずらい名前だなぁ。なんか可哀そう。この冠被った人は金髪に紫色の瞳で、お母さんと同じくうさ耳。いや、それよりもびっくりなのは冠についてだよっ!

 もしかして……王様? いや、まだ分からないわよ、この世界では男性が冠を付けるのが普通なのかもしれないしっ!

「いいのですか? 国王であるあなたが仕事を抜けてきてしまって……」

「終わらせてきたからよいのだ。それよりも我が愛しい娘の顔を見たくてな」

 あ……王様確定。そして私が王女であることも確定。


「パープ、こっちを向いてくれ」

 これは……異世界あるあるの溺愛系ですか!? ならばここは、手を伸ばしながら笑いかけるのが正解っ!


「――――っ!?」

 お父さんは私の目を見た途端、息を飲む。

「どうしたのですか、コニーリョ様――――っ!?」

 そして、お母さんも私の目を見て息を飲む。

 え、何々?何かついてるの……?なんだか不穏な空気が流れている気がするのですが……。


「っ、王族の印が…………ない」

 王族の印…………?

「コニーリョ様、正常な子を産めず申し訳ありませんでした」

 お母さんはお父さんに向かって、深々と頭を下げる。涙を浮かべながら……ね。

「いや、お前のせいではない。だが……このままにするわけにはいかない…………」

 お父さんは顔を上げさせ、慣れた手つきでお母さんの涙を拭う。お母さんのせいではない。なら、誰のせい……? お父さんの言葉の節々から私への怒りが感じられた。私の、、、せいなの……?

「殺処分ですか?」

 お母さんはサラッと恐ろしいことを言う。え、本当に私を殺すの……? 目がマジだ。私、せっかく転生したのに死ぬの?


「いや、様子を見よう。成長したら()()するかもしれない。それまで幽閉しておこう」

「はい」


 お父さんは私に冷たい視線を向けながらそう言う。

 部屋に屈強な騎士がたくさん入って来て、私を抱きかかえる。甲冑がほっぺに当たって痛い。そして抱き方が雑。ねぇ、私をどこへ連れて行く気なの?

 私、どうなっちゃうの……?

 転生後数時間で幽閉確定!



 5話目まで2時間おきに投稿します。ぜひ読んでください!

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