第17話 ツンデレおっさん
「やぁぁああ‼」
「ふふ、甘いわよ♡」
私の攻撃を顔色一つ変えずに全てを避ける。うそでしょ……と呆けているうちに頭をはたかれて、模擬戦はお母さんの勝利で終わってしまった。
「パープ、お疲れ様」
「お母さん強すぎぃー‼」
「はぁ、この程度の攻撃すら避けられないなんて、先が思いやられるわねぇ」
修行を始めてからまだ三日。成果は出ていない。
「それでは約束通り、質問に答えてもらうわよ」
「うぅ」
私たちは模擬戦で負けた場合、勝者の質問になんでも答えなくてはいけない約束をしている。前世のことについても聞かれたら答えなくてはいけない。
話したくないことも質問されるかもしれないから、絶対に負けられない。ま、お母さんにもアムールにも負けまくってるけどね。
私、一応アムールの主ってことになってるのになぁ……絶対おかしいって‼
「では、パープの前世での黒歴史を一つを暴露して?」
「ひぃぃっ」
まじですか? 黒歴史は究極に話したくないから黒歴史なんだよ? それを暴露しろと? 死ねということでしょうか⁇
私も一度死んだ身よ。こんな危機、乗り越えずしてどうするの⁉
「7、8歳くらいの頃、学校で友達と『男子だったら絶対このビーカーをすぐ割るだろうね~ww』って笑いながら話していたら、私がビーカーを割っちゃったことです……。その瞬間その場の空気が凍り付きました……」
「…………(ビーカーってなんだろう? さぞ高価な物なんだろうなぁ)」
「…………なんか、聞いちゃってごめんねぇ」
その返答やめて? 私こそ、そこまでヤバい黒歴史でもなく、おもろくもないことを話しちゃってごめん。だってこんな話しか思いつかなかったんだもん。
「じゃ、じゃあ気を取り直して今までの模擬戦から、二人の問題点を言っていくね」
「「はいっ‼」」
「まずアムール。【神聖魔法】の威力は申し分ないわ。ただ、発動までの時間が遅いのと、魔力消費量が半端ないのが問題点ねぇ。なぜそうなるのか分かる?」
「……まだ【神聖魔法】に慣れてなくて詠唱が上手くできないからだと思います。上手くできない分発動まで時間がかかり、発音できなかった部分を魔力で補ってしまっている……何度も練習すれば改善できると思います」
「うん、洞察力は満点ね。あと、魔法だけに頼らず体術も鍛えておきなさいねぇ♡」
「はいっ」
あ、アムール、なんか頭良いこと言ってね? そんな会話を先に見せられたら……上手く分析できるか不安になっちゃうじゃん‼
「次にパープ。あなたは……一体何がしたいの? 全て出来るのに、全て中途半端。そんなんじゃ誰も倒せないわよ?」
「う…………」
遂に言われてしまった。
私は魔法を全属性使える。でも全属性使えるだけで、実戦で使えるものは少ない。ましてや強敵なんかに使える魔法がほとんどない。体術も出来るけど、これもやっぱり強敵には通じない。
生き残ることは出来ても、敵を倒すことはできない。それが今の私。
「パープ、これは致命的よ。どうすればいいと思う?」
「…………一つの属性の魔法と体術を鍛える。そして必殺の一撃を作る」
「そう、なら魔法は火魔法を鍛えなさい」
「え? でもそしたら森が燃えちゃ――」
「大丈夫、魔境の森の木々は燃えないわ。丁度良いことに私は火に弱いから鍛えておいて損はないわ。それに……北の主の弱点でもあるからねぇ」
「? 分かった」
どうして急に魔境の森の北の主が出てきたのかは分からないけど、とりあえず火魔法を鍛えよう。魔法の中で一番苦手だけど、強くなるためには仕方ない。
「さてさて、二人の修行を後押しするために、ある人を呼びました~」
え、誰々⁉ ずっとお母さんと戦って負けてたから、ちょっと辛かったんだよね。丁度良いくらいの強さの人がいいなぁ。
「さ、デュランタ出てきて~♡」
「へいへい」
「「っ⁉」」
木だ……。それもびっくりするぐらいの魔力量を持っている。お母さん以上かも。
【名前】デュランタ ♂
【種族】魔樹木王
【年齢】658
【魔力値】800/800
【体力値】――
【スキル】
統率Lv5 魔力操作Lv5 急成長Lv5 読心Lv3 身代わりLv2
【称号】
魔境の森の支配者 魔トレントの主 ツンデレおっさん
【総合戦闘力】1500
【ランク】SS
――体力という概念がなく、魔力が無くなると死ぬ。
「俺は魔樹木王のデュランタだ。おめーらと模擬戦とか面倒だが、カレンデュラの頼みだし、仕方ないから付き合ってやる」
「僕はアムールです。よろしくお願いします‼」
「ぱ、パープ、です。よろしくお願いします……」
ど、どうしよう……ツンデレおっさんっていう称号みたせいで、笑っちゃいそう。 こらえろ、いくらツンデレでもツンデレおっさんっていう称号はないだろって思っちゃダメ‼
……いい歳したおっさん(658歳)がツンデレか……。需要なさそーに見えて意外とありそーだな。
「おいパープ‼ お前、俺を鑑定しただろ⁉」
え、なぜバレた⁉ 誤魔化さなきゃ‼
「い、いえ? そんなことないですよ? それよりデュランタさんの木から咲いてるお花綺麗ですね~」
「お、おう。ありがとう…………ではなくだな、お前『バレた』って思ったろ⁉ 俺は【読心】スキルを持っているからある程度心読めるんだぞ‼」
え、なんてチートなっ‼ 隠し事できないじゃんか~!
「いいか、バラすなよ? 本気でバラスんじゃねぇぞ? カレンデュラのときも大変だったんだからな⁉」
「ふふ、懐かしいわぁ」
そっか、お母さんは【真実の鑑定】持ってるから全てお見通しだもんね。あの性格だし、隠し事バラしそう。さぞ大変だったんだろうなぁ。
「(僕はまた蚊帳の外か。でもパープのきょどった顔見れたからいいか)」
「ただデュランタと模擬戦するのはつまらないわよね? なのでルールを設けます‼」
「「えっ⁉」」
「はぁっ⁉」
え、デュランタさんも知らなかったの? うーん、驚いたってことは、読心スキルもそんなに万能ではないってことかな?
「ルールは簡単。私たちは今までと似たようなルールだけどね。アムールが負けたら、皆の前で初恋の人に公開告白してもらいまーす‼」
「そんなっ‼」
「負けた状態で告白なんて絶対かっこ悪いよねぇ? それが嫌なら死に気で頑張りなさいねぇ♡」
鬼だ……。デュランタさんも憐みのこもった目でアムールを見ている。
「デュランタが二人に勝ったら願い事をなんでも叶えてあげるわぁ♡」
「おい、本気かよ……」
「本気よ。だから全力で私の子たちと戦いなさい。ただし、魔トレントを使うのは駄目よ。それと身代わりも使った時点で負けだからね」
「うっし、願い事なんか全然興味ねぇけど、久しぶりに本気でやるかぁ」
うわぁ、なんか闘志が漲ってるぅ。
「パープが負けたら……前世で何歳だったのかを言ってもらうわ」
「――⁉」
お母さんは皆に聞こえないように耳元で囁く。
「もちろん、皆の前でね。私は当然【真実の鑑定】スキルで知ってるわよ?」
「ぇ、ぁ…………」
「歳を知ったところで皆は絶対に態度を変えないわ。でも、出来れば知られたくないでしょ? なら、勝つしかないわね」
今まで、私の歳(28歳)を知りながらもお母さんはお母さんとして接してくれていたの? 優しいな……。ただ、負けたらアムールにも公開っていうのは鬼だけど。
「模擬戦本番は一週間後。それまで私と修行するもよし、デュランタと試しに戦うもよし、自分で修行するのもよし。死ぬ気で頑張りなさい♡」
年齢公開を阻止するためにも、SSランクのデュランタさんに勝たなくてはいけない。
マジで死ぬ気で頑張ります‼ えいえいおー‼
さてさて、パープの話していた黒歴史とは一体誰の黒歴史だったんでしょう? え、私ではないよっ(汗)
私も勉強死ぬ気で頑張ります‼ えいえいおー‼
勉強と小説書くことを両立するためにも、心の安定剤である評価とブックマークよろしくお願いします‼




