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一欠片の勇気から始まるうさ耳少女の冒険〜今世こそ勇気を振り絞って友達を作ってみせます!!〜  作者: 氷河の一輪
第0章 受け継がれる一欠片の勇気

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第9話 人生初の友達

「取り乱しちゃってごめんねぇ。気を取り直して、食事の続きをしましょぉ」


 まるでさっきの出来事はなかったかのようにカレンお母さんは明るく振る舞う。口調も気が抜けるおっとりした声に戻っちゃった。


 カレンお母さんは席に着くと、両手に口を出して一気に白パンや肉を食べだす。

「んー、おいしぃ」

「あ、私の分のパンがっ」

「あれ、ごめーん間違えちゃったぁ♡」

 今日はパンなし。まぁこの人生で一番美味しくて豪華な食事だから白パンが無いくらいどうってことないけど、できれば食べたかったというのが本音。


 にしてもすごい食べるなあ。これなら大量に並んでいる料理も食べきれるかもね。



♢♢♢



「カレンお母さん、畑に水やりしてくるね」

「いってらっしゃい♡」


 家族になってからなんやかんや一か月が経った。意外とちゃんとした家族でびっくりしたわ。

 最初『君はただ、私のことを母と呼び、私から離れず、私に甘え、私に全てを任せるの』とか言ってたから、蔦でぐるぐる巻きにされて身動きができない生活になるのかと思ったけど、実際は結構自由。

 逃げようと思えば逃げることもできそう。でも、それをしないのは……この生活の居心地がいいからだ。

 朝、ご飯のいい香りで起き、挨拶を交わす。私専用の部屋があり、窓から見下ろす緑がとても綺麗。庭園から香るお花の匂いと窓から差し込むお日様の光でうとうとして、好きなだけお昼寝が出来る。もう、自然と笑いが込み上げてきそうなくらい幸せで充実した日々。


 でも、少しだけ違和感を感じる。

 私が”家族”となったのは計画されたものではなく、唐突なことだったはずだ。なのに服も、靴も、椅子も、スプーンも、(何故かお揃いで色違いの)コップも二組ある。

 ……まるで最初から2人暮らしだったかのような家なんだ。普通のことだと思う? 確かにスプーンとかなら何個あっても不思議ではないけど……でも普通、6歳児の大きさに合わせた服や靴、椅子とかある!? それでも普通だと思うのなら……とても独特な感性をお持ちですね……あ、私は尊重しますよ? 今は多様性だからね……うん。



「はーやく大きくなーあれ!」


 この言葉に意味があるかは分からないが、なんとなくそんなことを呟きながら畑に水をやる。

 なぜ私が野菜に水をあげているのかというと……まあお手伝いという意味もあるが、1番の理由はこのキャロッティだ。桃色で細長い野菜。色は違うけど前世でいう人参に瓜二つだ。味も同じ……同じなはずだけど、なんだか食べずにはいられない魅力がある。

 鑑定してみたんだけどさ……



【名称】キャロッティ

――桃色の細長い野菜。別名魔性野菜(キャロッティ)。これを食べた兎獣人や兎系魔物は魅了され、食べずにはいられなくなる。



 食べずにはいられなくなるって……禁断症状が出るってことかな? 現に私は今、目の前に超美味しそうなキャロッティを前に、よだれを垂らせずにはいられない。

 くそ、カレンお母さんがサラダにキャロッティを入れるからっ‼ もう一生キャロッティと付き合っていくしかないんだあ! 辛い……けどこんなに美味しいものを食べれるから幸せ♡


「きゅっ」

「あ! あんたは桃花兎のアムール‼」


 突然、茂みからアムールが飛び出してくる。私がカレンお母さんと家族になるきっかけを作った犯人だ。家族になったのは良いことなのか悪いことなのかまだよく分からないので、そのことは直接触れないでおくが……今はそんな些細なことは関係ない!

 大事なのは……お前がこのキャロッティを狙っているかどうかということのみ!


「このキャロッティは渡さないぞ!」

「きゅっきゅきゅっ‼」

 アムールはまるで違う違うというように二足歩行で立ち、首をぶんぶんふる。キャロッティを狙ってないなら何?

 アムールは1度茂みに戻り、再び戻ってくるとその口には美味しそうな赤い果実が咥えられていた。

「きゅっ‼」

 私の膝にその果実を乗せ、なにやら誇らしげに顎をあげる。本当にこれをくれるの?

 少し悪いなと思いながらも、毒があるかもしれないので鑑定する。


(――【鑑定】――)


【名称】アッポォ

――非常に甘い果実。栽培が困難であり希少なため、平民の間では流通していない。


 私はキャロッティが取られるかもしれないと思って怒っちゃったのに……それなのにこの珍しい果実をくれるの?


「ありがと」

「きゅー‼」


 なんだか罪悪感で押しつぶされそう…………。

「ね、半分こしようよ!」

「きゅ?」

 家に走って戻り、果物ナイフで半分にアッポォを切る。切りながらふと、この果実はリンゴに似てるなと今更ながら思う。


「はい、どーぞ!」

 駆けて戻り、アムールがまだいたことにほっとしながら声をかける。

「きゅ~~~‼」

「わ!?」

 アムールが飛びかかってくる。これは……最高に癒しだ……‼

 初対面で好感スキルを使ってきたことはもう忘れよう。今のこの子をちゃんと見なきゃ!


♢♢♢


 美味しかった~! アムールも今食べ終わったみたい。この果実、リンゴより断然美味しかったわ。……とはいっても、前世の私は貧乏だったし、安物のリンゴしか食べていないのでなんとも言えないな。

 あ、そういえば鑑定スキルのレベルが上がったし、もう一度アムールのこと鑑定してみようかな。


(――【鑑定】――)



【名前】アムール ♂

【種族】桃花兎

【スキル】

好感Lv5 土魔法Lv1

【称号】

無垢な女たらし 一目惚れした者

【総合戦闘力】40

【ランク】F

――魔力をお腹に流されるのが大好き。

  先日一目惚れをし、気に入られるためひたむきに奮闘中。



 【称号】の女たらしって……ああそうか、鑑定スキルがない人は自分のスキルが分からないのかな? つまり無意識にスキル使って無自覚に、そして強制的に惚れさせているのか……。本当の意味で罪な男だね。

 ていうかさ、鑑定結果に一目惚れの説明いるかな? 説明するなら誰が好きなのかまで書いてくれればいいのに。気になるじゃん。


「ねぇ、好きな人……いや、兎がいるなら私と話さない方がいいんじゃない? ほら、兎獣人の匂いとかついたら避けられちゃうかもよ」

「きゅっ⁉⁉⁉」

 アムールが顔を真っ赤にさせて固まる。……魔物も顔が赤くなるんだね。


「おーい、大丈夫そ?」

 お腹をツンツンするけれど反応はなし。

 さっき「私と話さない方がいいんじゃない?」とは言ったけれど、もっと話したいのが本音。人生初の友達を作れるかもしれないからね。後悔しないよう、ここは私の我儘を通そうかな?

 だからこのまま固まられては困るのだ!

 さっき鑑定結果で、お腹に魔力を流されるのが大好きとあったよね……ふむ、やってみようかな。これを機に仲良くなる!



「――きゅっ⁉」


 びくんと一瞬跳ねるが、すぐ気持ちよさそうに目を閉じる。

 ふふふ、これで骨抜きにしてやる…………ではなくて、私は健全な友達関係を築きたいの!



「アムール、私と友達になってください‼」


 魔力を流すのをやめてそう言うと、アムールはどこか残念そうな……悲し気な顔をする。

「……魔力流すのをやめたからそんな顔してるの?」

「きゅっきゅきゅ‼‼」

 違うとでも言いたげに暴れる。じゃあなんでそんな悲し気な顔したのよ?

「やっぱり友達になるの、嫌?」

 そうだよね、急にお腹触って魔力流すような子と友達なんかになりたくないよね。

「きゅぅ……」

 ため息らしきものをついた後、アムールが手をさし伸ばしてくる。これはもしかして…………!

「私と友達になってくれるの?」

「きゅっ」

「やぁったー‼」

 前世含めて、人生初の友達ができた! 生きててよかったぁ。



♢♢♢



「ふふふ、()()()ったら友達ができてあんなにはしゃいじゃってる…………」

 寂しいげな瞳でパープを見下ろし、誰かの名を呟く。

 パープに今は亡き()()()の幻想を重ね、心を(いた)わろうとしている者の名は――――……カレンデュラ。





 アムールが一目惚れした相手とは一体――!?

 お互い兎系だし、不可能ではないのかな? 頑張れ、アムール。めげずに茨の道を行け!

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