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光の死。それを次へ

 山梨県庁についた翔は仁の元にいき戦いでの損害などを報告していた。

 仁はただ頷くだけでその話を聞いていた。

 光の死は山梨県庁内でも多くの衝撃を与えていた。そして大きな悲しみを生んでいた。

 翔の話が終わると仁は翔にしばらく休みを与えることにした。上司として、そして彼氏として彼女を失った痛みは仁には想像できないものだった。こういう時jには時間が必要だと直感的に思っていた。


 翔が県庁を後にした後大将仁、隆、早苗、大将を集めて会議を開いた。全員が重い空気に飲まれそうになっていた。重い空気を断ち切るかのように隆が口開いた。

「今回は山梨軍にとって初めての失敗です。光大将を失った悲しみはわかりますが今は戦争中です。そして長野県の旧政府軍を助けられなかった。次の作戦を直ちに考えなければなりません。戦争では多くの人が死にます。悔やんでいる暇はないんです。

 隆がいい終わると同時に仁が隆の胸ぐらを掴んだ。そして壁に押し寄せた。

「仲間が死んでるんだぞ。よくそんなことが言えるな。なんとも思わないのか。光大将はみんなからも信頼があつく死んだことで多くの人が悲しんでいる。お前人の心に痛みがわからないのか。」

 仁の怒号が響く。山梨県庁内の空気がさらに重くなる。

「悲しんだところで光る大将は帰ってきますか。帰ってこないですよね。悲しいのはわかります。私も悲しいですよ。けど今は戦国時代。こうしている間にも敵は勢力を伸ばしています。これに対処しないと山梨は滅びます。今一番にやることを考えてください。それが知事の仕事です。」

 隆は淡々と答えた。その冷静さに仁は更に怒りを覚えた。

「それは確かにそうだ。しかし日本には喪に服す時間も重要だという考えもあるじゃないか。今はその時期じゃないか。大切な人が死んで悲しみと向き合う時間。その時間をとるのが今先決じゃないか。」

 仁の怒号が県庁内に響きわたる。県庁職員がぞろぞろと会議室に集まってきてざわざわしている。


「そう言っているうちにもまた仲間が死ぬかもしれない危機が迫っている可能性があるんですよ。新たな死者を出さないために今考える必要があります。」

「それはわかっているって。けど今そんなに急ぐ必要がないでしょ。」

「急ぐ必要があるんです。常に最善の策を考えて行動していかなければ山梨は守れません。」

 二人の言い合いが続く。仁隆の意見は理解しているがどうしても光の死に対してないがしろにしている感じがどうしても許せなかった。

 一方隆も光の詩に対する悲しみはわかっているがこの先に迫っている危機にいち早く対応しない仁に苛立ちを覚えていた。

 二人が言い争っていると早苗が口を開いた。


「知事。副知事。二人のおっしゃっていることはわかります。けど今争うことになんの意味がありますか。それが山梨にとっても光に取っても何もメリットないと思います。私も山梨軍の元帥として、そして光の先輩として光がなくなったことがとても悲しいです。本当は立っているのもしんどいくらい悲しいです。けど私はどこまでも立ち上がります。光のためにも。そして山梨のためにも。」

 早苗の目から涙がこぼれ落ちていた。元帥として部下の死は悲しいのはもちろんのこと昔から先輩と後輩との関係で長い付き合いがあったので余計に悲しさが押し寄せてきた。このことで県のトップ2里がもめていることにも悲しさが膨れ上がっていた。


「私の意見としては2日だけ休みが欲しいです。2日立ったらまた新たな作戦を考えましょう。光の死と向き合うことが必要な人は多くいます。知事、副知事、窓から外を見てください。多くの県民が光に対して花束とかを献花しています。県民の気持ちにも寄り添いこの二日間を光をはじめとする全ての戦没者のための慰霊の日としましょう。」

 早苗の提案に仁は頷いていた。

「うん。そうしよう。知事の権限を使って2日間山梨郡全員に休みを与えよう。全ての軍に指示をお願いします。」

「わかりました。」

 そういって仁は早苗に指示を出した。

 隆は何か言いたそうだったけどあえて何も言えなかった。外の様子から山梨県民も喪に服す時間が必要だってことは伝わってたので仁の意見に従うことにした。


 大将四人も仁の指示を全軍に伝えた。そして光の葬儀にも参列する予定でいた。光のお通夜が明日、光の告別式が明後日執り行われることになった。


 次の日になり光のお通夜となった。山梨で一番大きな葬式会場で執り行われ仁を始め多くの人が参列していた。山梨軍の関係者や友人、知り合いなど数多くの人がいた。光の遺影は明るい笑顔だったが多くの人たちは光の遺影の前で涙を流していた。その涙は葬式会場を埋め尽くしていた。


 仁と隆、早苗も光の遺影の前に立ちお焼香をしていた。仁は目が赤くなり隆はぼんやり前を見つめ早苗は大粒の涙を流していた。

「光。戦いの前に見送ったのが最後の言葉になっちゃったね。本当に明るい笑顔だったの覚えている。こんなことになるなんて想像がつかなかった。また元気な笑顔で戻ってくると思っていたのに。なのに・・・これが戦争なんだなって改めて感じたよ。戦争なんて本当に早くなくなればいいのに。けど山梨郡元帥として平和のためにこれからも戦う。そして真の平和を作っていくね。だから天から見守っててね。」


 早苗の言葉に仁の目から涙を流れた。隆の目も赤くなっていた。

 そこに信之、早希、藤、薫、そして翔がやってきた。翔は他の大将四人に支えられながら歩いていた。

「大将。そして翔中佐。きていただいて光大将も喜んでいると思います。翔中佐。無理はしないでください。心身が回復するまで休める環境を用意します。」

 仁は涙ながら言った。その涙に大将四人もつられて泣いていた。

「知事。光大将。いや光は最後まで部下をできるだけ助けるために戦っていました。山梨軍の誇りです。大変名誉の死だと思います。しかし個人的な思いはもっと光と一緒にいたかった。一緒に笑い一緒に泣いて楽しい時間も悲しい時間も光と共有したかったです。一緒に平和な日本にして行きたいって言ってました。光とこれからも一緒に痛かったです。それだけです。僕の想いは。」

 翔はそう言うと下を向き大量の涙を流した大量の涙が地面に落ちていった。何もかける言葉がなかった。

「けれど僕は光が望んでいた平和な世界を作るまで戦います。そして行きて平和な世界を光るに報告します。」

 その言葉は力図良さがあった。そんな翔の背中を藤と信之がさする。

 そのに仁が近づき一言いった。

「私もそのために全力を尽くします。」

「お願いします。」

 そういって翔は前を向いた


 ある日突然大事な人を失う。こんなことが平気で起きている戦国時代の世の中。この世の中をどう平和にしていけばいいのか仁は深く考え込んだ。戦いがないから平和なのか戦った後に来るのが平和なのか考えれば考えるほどわからなくなるばかりだった


 次の日の告別式も終わり仁は明日に緊急会議を開くことを隆たちに伝えた。長野県の動きなど気になることも多くそして新たな大将も決めなければならないなどやることが多いので早めに決める必要があったからだ。早苗などの精神状態も考慮しつつゆっくり会議をしようと考えていた。

 早苗も緊急会議に賛同してくれたので無事緊急会議をすることが決まった。


 そして次の日。山梨県庁で緊急会議が開かれた。

 まずは長野県の様子を伺っていた。

 外務部の報告によると長野反政府軍は諏訪地域を完全に掌握して入り旧政府軍は山梨県との県境の富士見町まで後退していた。そしてミサイル攻撃をした富山県にも進軍して行き次々に富山県の都市を落としていると言う情報も入った。

「この情報から推測するに敵が富山県を完全占領するのは時間との戦いになると思います。こちらも早めの行動がなおさら必要になって来ると思います。」と隆が意見を言った。

「しかし先の戦いで山梨軍の損害も多くて浜松から軍を集めたとしても10万人が限界です。これ以上集めるとなると愛知県に対する圧力が弱くなります。長野県攻略に10万人。浜松に15万人の軍を配置するよう手配しときます。」と早苗が言って軍に指令を出した。


 そして早苗が続けていう。

「長野に派遣する軍の指揮は私がやります。私は軍のトップですが山梨のトップは知事です。知事が指揮を取れる状況であれば私が言っても問題ないと思います。」早苗の目から本気さが伝わってきた。仁は断る理由がわからなかった。早苗の心境からしてみても早苗に指揮をとってもらう方がいいと思った。

「わかった。早苗元帥お願いします。」

 仁は早苗に改めて長野派遣への部隊を託した。

「知事。長野侵攻に関してですが長野県の隣県も進軍を検討しているみたいです。侵攻を受けている富山県と愛知県以外の県は長野に軍を派遣するそうです。それで長野新政府軍を包囲できます。そして長野県と隣接していますが道で繋がっていない埼玉県も群馬郡と一緒に長野県へ侵攻するそうです。」と隆は近隣諸県の情報を伝えた。


「援軍が来れるのは心強いです。このことに関しては近隣諸県と話し合う必要があると思いますので緊急で埼玉県、群馬県、新潟県、岐阜県の知事と会議できないか外務部に連絡してほしい。」と仁は外務部に指示を出した。

 それを待っている間仁達は具体的な作戦を考えていた。


 前回は奇襲を受けなおかつトラップにも引っかかったので諜報舞台をフルに活用して進軍ルートに罠がないかどうかや敵の進軍の様子などを細かく確認することを徹底することは決まった。そのために他県とも協力してそれを進めていくことも決まった。

 そのために諜報部隊として先に千人送り込むとした。そうして長野県内の情報を細かく探るようにした。


 そんな話をしていると要請を出した各県から会議参加の知らせがきたのでオンライン会議の準備を急いでした。

 準備ができるとオンライン会議を始めた。

 仁が始めに軽く挨拶をして本題へ入っていた。

「長野県に侵攻する県ですが山梨県から軍を10万人出します。山梨軍は諏訪方面から侵攻して行き反政府軍を攻撃します。こちらの集めた情報ですと反政府軍は茅野市付近に約5万、富山県侵攻に約3万、長野市付近に約2万人展開しています。」

 仁は山梨が出す軍勢と長野県の状況を伝えた。それに群馬県知事が意見を言った。

「群馬軍は3万の群を派遣できます。その軍をつかって上信越道から長野県に入り長野市へ向かいます。」と群馬県知事は軍の侵攻ルートを伝えた。それに埼玉県知事も続けて意見を言った。

「埼玉は5万の群を派遣できます。群馬軍と一緒に上信越道を利用して進軍します。」と埼玉軍は群馬郡と合流して攻撃することを宣言した。」


「ありがとうございます。群馬軍および埼玉軍はそのルートでお願いします。岐阜軍と新潟軍はどれくらい軍を出せそうですか。」と仁が問いかける。

 すぐに岐阜県知事が返答する。

「岐阜軍は愛知軍の進軍に備えている影響であまり軍を出せませんが2万人は出せます。2万人の軍で国道158戦および中部縦貫道を使って松本市を目指します。そしてそのまま諏訪方面へ進軍します。」

 岐阜軍は松本を経由して諏訪方面へ進軍することを進言してくれた。これで茅野市にいる反政府軍を包囲することができる。

 そして新潟県知事も5万の軍で長野市に侵略することを進言してくれた。また新潟軍は最新鋭の戦車も導入すると言ってくれた。


「これで各県の進軍コースは決まりました。各県が進軍することによりミサイル攻撃を受ける可能性があります。先日送った迎撃システムが作動するかの確認もお願いします。山梨郡は今から偵察機を飛ばし長野反政府軍の動きを細かくチェックします。そして罠の可能性もありますので各軍諜報もお願いします。」

 仁が意見をまとめる。各県の知事は頷きこの作戦を決行する準備へと入った。

「攻撃するときは一斉に攻めてください。日時は2日後の午前9時決行します。幸いにもこのシーズンは雪が少ないので侵攻もスムーズかと思います。この作戦なんとしてでも成功させましょう。」

 仁はそう言って会議をしめた。


 長野県への2回目の進軍が始まる。前回のような悲劇にならないためにも入念な調査、作戦を考えて言った。


 会議が終わると仁は武田神社を参拝していた。死んだときに武田信玄が出てきた通り武田神社に行けば信玄公から意見がもらえると思ったからだ。

 社殿の前で参拝をすると急に体の力が抜け頭の中に声が入ってきた。

「長野県の侵攻は一回失敗したが今度は成功するだろう。この先も苦難が続くと思うが君なら大丈夫だろう。日本が平和になるには君みたいな戦争の怖さを知っている人が統治する必要がある。検討を祈る。」

 その言葉を聞いた途端体が暑くなっていた。信玄公の助言を受け今回の作戦の成功を期待するとともに日本を統一して幸せな日本を作ることを神前で誓った。

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