SF風小論 ー 核弾頭ミサイル
21世紀が始まってまもなく地球的規模で疫病が蔓延し、その最中、東は世襲制の独裁者が頭角を現し、西は強力な一党独裁政権が誕生した。核の使用も辞さないと宣言する指導者が現れ、他国を脅かし始める。それは地球の破滅を意味し、サタンの行為であることは自明の理であるが、権力者自身は支配欲に目が眩み、あるいは、経済の先行き不安が強まるためであろうか、とにかくこの一見して当たり前の道理が無視されがちだ。
混迷の度を深めて行くにつれ、核弾頭ミサイルのボタンをいつ押してもおかしくない状況である。一方、アフリカでは大飢饉が発生。食糧を輸入に頼る先進国はその煽りを受け食糧不足に悩まされ、世界の穀物は高騰し続け、地球全域に大々的なインフレーションが起こった。こういった全人類的な課題の真っただ中、原爆投下を回避できたのはむしろ幸運であった。
30年後の2050年代に入ると、宇宙開発は今まで以上に長足の進歩を遂げ火星への移住民は増えたが、地球では再び疫病が発生し、と同時に、南北に独裁者が雨後の筍のように現れ出て、ワンマン政治が至る所に見られた。これらの国々の殆どの指導者は65歳を超えており、医療科学の発展は目覚ましいものがあったが、脳の老化により、あるいは、発狂・妄想などが原因で、他国への突然の核兵器の使用ということも十分考えられる。
核弾頭ミサイルの発射の即時性・即効力を高めるため、最高権力者一人のみに核兵器発射ボタンを委ねる国々も現れる(発射管制官なしのダイレクトアクセス)。現今の状況から察するに、核戦争が勃発すると地球の破壊は一瞬であることから各国は宇宙開発の競争にしのぎを削り、火星への集団移住、そして、木星の衛星エウロパに家族移住しようと試みる者が後を絶たない。
初期の搭乗者は金持ちが多く健常者が優先された。反対に、搭乗できない者というのは、運賃の即払いに難題を抱えているのが実際であり、又、選出方法は国・地域によってランダムであったり、くじ引きでもあったりするので、一筋縄ではいかない。家族の優先問題も絡み、搭乗口には不安と恐怖を募らせる人が競い集ってごったがえしていた。
暫くして、全面戦争が遂に始まった!核爆発は地球上のあらゆるところで起こり、地球から脱出した宇宙船内の人類は地球表面に幾つもの閃光が走るのを見た瞬間、大気圏上空に暗黒色の大量のキノコ雲が噴出する地球滅亡のこの日を呆然と眺めるだけだった。
コスモス と 雲