親しげに微笑みかける人
「私、あの子に何かしたの？」
「うーん、したと言えばそうだけど違うとも言えるし……」
ナギが怒りながら帰った後、家に帰る前に近くにあった建物の屋上で座って休んでいたノエル達。隣でミコトに話しかけると答えに困りどう言おうか悩みだすミコトの側に、二人から少し離れた場所で話を聞いていたサクナがクスッと笑いながらノエルの質問に答えた
「ただ単に、あの子達との勝負にあなたが負けただけよ。別に気にすることもないわ」
「勝負？私がいつあの子と？」
ノエルが首をかしげながら聞き返すと、サクナがフフッと誇らしげに微笑む
「まあ、負けてくれたお陰で私が生徒会長になれたんだもの。あの子には感謝しないとね」
「私はサクナさんが生徒会長なんて認めません！本当なら私が生徒会長になってたのに！」
サクナの言葉に立ち上がり言い返すミコトを見て、またフフッと笑うサクナ。それを見たミコトがムカついたのか、サクナを睨んでいる顔をしている
「あの、その生徒会長って……」
「生徒会長はね、生徒の中で一番強いってことで、あっちこっちにある魔術学園の代表になってね……」
と、ミコトがノエルに説明をしていると、ふわりと横を通り抜ける強い風が突然吹いて、話の途中にぎゅっと目をつぶったミコト。ノエルの所にも風が吹いて、少し目を閉じると、そっと頬に触れられた感触が来て恐る恐る目を開けると、ノエルよりも背が高く髪の短い女の人が頬に触れながら、じっと見ていた
「んー、あんまり良い顔はしてないね……」
女の子に見つめられながら、呟いた言葉に戸惑うノエル。そんな二人の姿に気づいたミコトが、女の子に向かって大声で叫んだ
「ちょっと、ノア！ノエルを離して！」
その声にノエルの頬に触れながら少し振り向いて、ミコトを見るノア。はぁ。とため息をつきながらまたノエルの方に振り向いた
「せっかく会えたのに……」
ノエルを見つめながらそう呟いたノアに、ノエルが苦笑いをしていると、そっと頬に触れていた手を離した
「ノエル、またね」
そう言いクスッと微笑むと、また強い風が吹いて、ぎゅっと目を閉じた。すぐに風は止み、そーっと目を開けるとノアの姿は居なくなっていた
「……あの人は？」
ノアの姿を探すノエルの所に、サクナといたミコトが戻ってきた
「あの子はノアっていうの。さっきの女の子と同じ学園の生徒で、私の幼馴染みなんだけど、もう帰ったみたいだね」
「へー……」
空を見上げノアを探しながらノエルとミコトが話をしていると、サクナが足音をコツコツと鳴らしながら二人の元にやって来た
「二人とも！まだ私との話が終わってないわよ！」
声を荒らげるサクナにノエルが目を向けていると、ミコトがノエルの手を掴んで、サクナに向かってエヘヘと笑った
「サクナさん！悪いけど、ノエルの家にもう行くから、話しはまた明日ね！」
そう言うと、ノエルの手を引きふわりと空を飛んで行ったミコト。あっという間に二人の姿はどんどんサクナから離れていく
「ちょっと！」
大声で叫ぶサクナの声が聞こえていないノエルとミコトは、振り向くことなく去っていった
「サクナさん！」
ノエル達の飛んで行った場所から反対側から名前を呼ばれ振り向くと、サクナをずっと後を追っていた生徒達が疲れた顔をしてサクナの隣に着いて、ふぅ。と深呼吸をした
「ミコトさん、大丈夫でしょうか。昔から生徒会長が戻ってくるとあまり良くないと言われていますし……」
一人の生徒が不安げにそう話しかけると、サクナがグッと力を込め手を握りしめ、くるりと振り向き側にいた生徒達に向かって叫んだ
「そうよ！だからこそ、すぐにでもまた記憶を消さねばならないの！急いで学園に戻りましょう。先生に問いたださなければ！」
