火星民
宇宙空間に脱出しなかった火星民
「保存状態はどうでしょう」シンジがメリダに問う
「今任意にサンプルを抽出して検査中です結果がもうすぐ出ます」メリダ
「残念ながら他の20億民と同じでカプセル内の維持装置は全て停止してます
つまり現在の状態はフリーズドライ、今までと同じですけど」メイ
「それは見れば判ります問題は今の科学力で蘇生出来るかどうか」シンジ
「解析結果がでました」リン
「おおっ」
「損傷率は20%以下、驚くほどの良好状態です、これは行けます」メリダ
「いや、問題はウラシマ効果が発生するのかどうかだよ」シンジ
「そればっかりは・・・サンプルを蘇生させてみて経過を観察しなくては
分かりません」リン
「しかし、それやると犠牲者を作ってしまう可能性もある我では判断出来ない」
シンジ
「そのための全責任者、大王がいます」メリダ
「うむ、大王の肩には国民の生殺与奪という重い責任があるのだな」シンジ
「仕方がありません、判断を仰ぎましょう」メリダ
「あまりにも重すぎますね」連絡するシンジ
「・・・・分かりましたサンプルの実検を許します」大王
「分かりました、全身全霊をもって事にあたります」シンジ
「其方を信じてます」大王
「今回の実検は20億民との差異を測れる絶好の機会、心してかかりましょう」
一同「はい!」
今回は特別に護衛艦内に医療室を設置し完全体制で臨む
「さ、我が長年研究を重ねた渾身のナノポーションを試すぞ」シンジ
「はい」
「投入開始!」
「シュウウウウウウウ・・・」
干からび切った検体全体に水分が行き渡り始めは土色だった肌に生気が
どんどん注がれていくのが見て取れる
「ポーションの第一段階、失われたDNAの補完と予測再生中です」メリダ
「物理的な再生は99%を越えました、問題は脳内再生・・・」リン
「五臓六腑の機能が正常に戻ります血流が開始されました」
「検体の諸元は?」シンジ
「は、30代と思われる男性比較的筋肉質アジア系種と思われます」
「万一ウラシマ効果の所見が出たら直ちに実検中止して縮小体に封じます」
「は、ですが今の所所見みられません」計測データーを注視中のメリダ
「損傷修正率95%つまり記憶障害以外は全て蘇生成功です」
「うむ、大王の王命では第二段階つまり記憶障害治療は保留となってます
これでポーション治療は終了です、経過観察後自動リハビリ措置に移動します」
シンジが心血を注いで開発した自動リハビリ装置とは検体の努力を必要とせず
全てがEMS(電気ショック)にてリハビリを行う画期的な装置
「ここまで治療は完全に終了しました・・ご苦労様です」シンジ
「ウラシマ効果発生してません」メリダ
「うむ、後の研究のため今日の経過はすべて保存しておくように」シンジ
「はい」
「検体意識戻りました」メイ
「うむ、今は看護アンドロイドに任せ経過をみましょう」シンジ
「おめざめですか?」アンドロイド
「うううう、ここはどこですか?」男
「貴方は深い眠りから覚めました、絶対安静です」アンドロイド
「どうして寝ていたのでしょう?」男
「今は休んで下さい2~3日後からリハビリを開始しますその時に
事情をお話いたします」
「わかりました。とにかく体が全く動かせませんどうにかしてください」
「はい、意識は戻りましたがまだ神経細胞が脳に接続されてません
ただちにリハビリ運動をしなくては一生寝たままになってしまいます」
「なにも思い出せないのもそのせいなんですね」男
「はい、ですから今は回復に努めましょう私が全てサポートしますので」
「わかりました、今の私には貴女しか頼れませんお願いします」男
「確かウラシマ効果が発生したのは検体再生後2日から一週間だったね」
シンジ
「はい、データーによると今後を注視する必要があります」メイ
「一度意識が戻ったのにまた永遠に眠るというのは余りにも残酷」シンジ
「ですがシンジ様だけはもう数年が経過してるのになぜかウラシマ効果が
発症してません。ご自身で不思議に思いませんか?」メリダ
「全く不思議だね、なせ他の20億民と我は違うのか・・・」シンジ
「非科学的ですがやはり神でしょうか?」メリダ
「わたしは神を信じない」シンジ
「しかしシンジ様は第二の神を創造しましたわ」メリダ
「うーむ、確かに・・・宗教と科学は相反する物なのに確かに我は創造した」
「だが作った神様がなぜゴブヨを介さないとコンタクト出来ないのか?」
「神様は実体の無いもの、誰かに憑依しなければ伝えられないのでしょう」
「しかしゴブヨの話ではそれも違うらしい」
「ですが結果的に火星を調査し貴重な検体を得られたのは神の啓示です」メイ
「うむ、これは偶然ではないな」シンジ
「ゴブヨ様の規格外の魔法がなければ発見は更に遅れたことでしょう」メイ
「うむ、すべては必然だったのだろう」シンジ
「ま、神論は置いておいて今後なすべきことだが」シンジ
「はっ」
「今回の実検は全てを包み隠さず大王に報告し今後をゆだねる」シンジ
「は、当然かと」
「だがウラシマ効果発症がまだ未定このまま検体を一月ほど観察する」
「はい、賛成です」
「万一このまま順調ならのこり3千の民をどうするのか・・」シンジ
「難しい判断ですね」
「今回の初号実検体にのみ記憶障害を取り除くのも手かも知れません」シンジ
「そ、それはあまりにも高度な政治判断ですね」メリダ
「うむ、全ては大王に託す」シンジ
大王の判断「2週間経過を観察し問題無ければ記憶障害を取り除きます
火星での体験談は今後の政策に大きな影響を与えますので」
「さすがは大王最善策を打ち出してきましたね」シンジ
一方資料解析を急ぐゴブヨとMSチーム
「データー解析プログラムを構築したので順調に進んでます」ゴブヨ
「創造の雲増産を開始したのでそれに応じて解析が進むでしょう」
「いよいよ20億民救出への手がかりを得られるのでしょうか?」メイ
「どうでしょう、今までのことは全てが点と点、果たして結びつくのか否か」
シンジ
2週間が経過したが検体へのウラシマ効果は発症しなかった
「やはり太陽圏ではウラシマ効果が発症しない可能性が高まりました」
「ですが初号検体だけですので決めつけるのは早計かと」メリダ
「ゴブヨ君が知らせてくれた神の啓示だと太陽系とそれ以外ではなにかが
違うらしいのです。なにが違うのかは分かってませんが」シンジ
「記憶障害回復ポーション投与開始します」リン
「10分経過・・・」
「ううううう、頭が割れる・・・」もがく検体男
「大丈夫ですか?あまり酷いようなら投与を中止しますが」看護アンドロイド
「大丈夫ですこれは記憶がよみがえる症状です」シンジ
「20分経過」
「おおおおっ俺は・・・・!」男
「どうやら記憶が蘇って来た様ですね」メイ
「ここの責任者と話がしたいのですが?」男
「わかりました取り次ぎましょう」看護アンドロイド
「私が貴方の治療担当責任者のシンジです」
モニターTV越しにシンジが話し掛ける
「よろしくお願いします、私の名前はタクマ火星担当研究員です」
「タクマさん初めまして、体の方は大丈夫ですか?」
「はい、なにやら体中に取り付けられた妙な装置のお陰で全身に
力が蘇ってきました。ほとんど自由自在に手足が動かせる様になりました」
「それはなによりです、で?記憶の方はどうですか?」シンジ
「その前にこちらで質問してもよろしいですか?」タクマ
「はい、なんなりと」シンジ
「私はいったい何年寝ていたのですか?冬眠カプセルに入った筈ですが」
「お気を確かに聞いて下さい・・・15000年です」シンジ
「そ、そんなにでしたか・・して貴方達は異星人ですか?」タクマ
「いえ、紆余曲折はありましたが貴方の末裔です」シンジ
「え?それでは地球滅亡時に放出した冬眠カプセルの人々は救われたのですね」
「話せば長くなりますが残念ながらカプセルは回収できましたが蘇生については
ほとんど手つかずです」
「なんらかの技術的問題があるのですね・・・」タクマ
「はい、信じてもらえるかどうかですが別の手段にて人類は救われています」
「わたしも地球から代表して選ばれし者です多少のことでは動じません」
「私は神を信じませんが信じられない事に神によって人類は救われました」
シンジ
「むう・・・複雑な訳がありそうですね。今は多少混乱してますので
おいおい聞いてよろしいですか?」タクマ
「勿論です。タクマさんもお疲れでしょう今日はこれで終わりましょう」
「ですが私自身の体調がいつ激変するか分かりません。なるべく早く
お互いに話あったほうがいいですね」タクマ
タクマはすでに自分の事は実験材料かつ最初の蘇生サンプルであり
いつ生命維持がこと切れるのか覚悟はしている
「我々の全力をもって貴方の命を救います」シンジ
「よろしくお願いします全面的に協力します。」タクマ
まずは聞き取り調査の前にお互い報告書を提出する事になった
「2週間後にもう一度面会しましょう。それまでごゆっくりどうぞ」シンジ
「助かります。とにかく体力が弱り切ってるので話すのでさえ苦労です」
タクマ
シンジとの会話はモニターで全ての軍団が固唾を飲んで見ている
「うーむ、どうやら前回の地球王みたいな自決はないみたいだな」スタージナス
「しかも急激なウラシマ効果による劣化もどうやら心配なさそうです」大王
「しからばあわてずゆっくり事情聴取するのが賢明でしょう」タラン
「しかもタクマさんは優秀な研究員だったようです。これは人類に有益ですね」
ジパン
「うむ、話が早い方だと本当に助かるな」スタージナス
「しかし、改めていまの人類史を語るとなると複雑だな」スタージナス
「確かに信じる信じないに関わらず神の存在を否定できませんね」ウラアール
「大王の存在、王家王族の存在、重鎮達の存在・・・全てが絡み合ってますね」
イーシャ
「うむ、どう考えても神様の手のひらに感じる、ダクーミの存在すらも」
スタージナス
「いえ、そんな事はありません、全ては我々の努力の賜です」大王
「うむ、運命などは後から誰かが当てはめるものじゃな」スタージナス
「神様の差配ならば我の存在などは不必要以外なにものでもないですからね」
ジパン
「珍しくジパンが自分を卑下してる・・似合わん実に似合わん」スタージナス
「スタージナス様が茶化してくれるのが前提ですからね」ジパン
「おのれは・・本当に成敗してくれようか!」スタージナス
「脱線話はいいかげんにしてください、で今後はどうするのですか?」
ゴブータ
「まずはタクマさんの話をじっくり聴いて残りの民をどうするか判断だな」
スタージナス
「それは賢明ですね。場合に寄っては蘇生だけにとどめるべきですから」大王
「しかし、聞くところによると火星に派遣されたのは優秀な人材のみ
記憶を蘇らせた方が人類に有益なのでは?」」ヤコブ
順調に体力を回復しつつあるタクマが語り出したのは5日後
「報告書をまとめましたのでまずは読んで下さい」タクマ
「こちらも簡素ながら人類史を分かり易くまとめました」シンジ
「まずは意見交換前にお互いの報告書の精査からですね」タクマ
「そうですね、その方が結局近道でしょう」シンジ
タクマにウラシマ効果が起きない・・・
タクマの苦心があつたようです




