3-34 メンバーの1人が人生をまっとうしました
~~~ 第3発光炉:監視塔 ~~~~~~~~
ルジャンはウイングに乗り込み出撃の準備をしている。
死への恐怖はない。
このミッションを実施することによって
確実に死ぬことは理解している。
それはどこか他人事な感じで、どちらかというと
ミッションが失敗する方を不安ししていた。
ルジャン(タイムリミットは60秒が限界だろう。
30秒で到達し、起爆スイッチを入れる。
何の障害がなければ十分間に合う時間だ。
いける!)
鎮痛剤と興奮剤の投与によって、負傷による痛みはなく
今は頭も冷静だ。
ウイングに乗る際に、傷口が開き足元には血が広がり始める。
その状況にルジャンは気づいているが気にも留めてない。
人生最大のミッションをこれから開始しようとしている。
隊長の命令を無視して決行するのだ。
絶対に失敗は許されない。
この施設にいる全員の命も掛かっている。
事は重大なのだ。
作業は簡単だ。だがその重大際に、
頭の中では3番炉までのコース取りと作業内容を
何度何度もシミュレーションさせていた。
準備が整うと、ルジャンは倉庫のハッチを開ける指示を出す。
2重扉の内側が開く。
♪ビー、ビー、ビー、ビー
館内への放射線量が閾値を超え、警告音が鳴り出す。
内側の扉が開ききる前に、外側の扉も開き開き始める。
と、同時にルジャンはウイングを発進させる。
作業時間の確認用にあらかじめ表示させていたタイマーが、
ウイングの移動と共に00:00からカウントアップが開始される。
ウイングは、体勢を低くして、
半分しか開いていない外扉を潜り抜ける。
ウイングが通り抜けると、2重扉は自動的に閉まり出した。
ウイングは、3番炉を目指し、舗装された平坦な道を
全速力で疾走する。
ちなみに、通信は受信拒否にしてある。
メンバーからはおそらく激励の言葉をもらえると思うが
隊長は引き返すよう指示をするだろう。
決心が揺らがないようの処置である。
【タイマー表示】00:20
炉心は1番炉から5番炉までの建屋があり、
3番炉は監視塔から一番近い場所に位置する。
起爆スイッチの設置場所は、3番炉の右側面にあり、
直線距離的には若干遠くなるものの、
正面には調査団によるバリケードの残骸があるため、
幸いにも最短で辿り着ける場所となっていた。
しかも、建屋の天井からは光の柱が飛び出しているため、
最短で進まなければならないルジャンにとって
その光柱は良いガイド役割を果している。、
怖いほどに良い事ずくしである。
【タイマー表示】00:30
予定よりも早く、目的地に到着。
近くまで来て分かったことだが、3番炉の爆発による
破損はひどい。
壁が穴だらけで、内部の物が飛び出していたりする。
監視塔を出てから30秒が経過。
ルジャンの鼻と目元から血が出て来た。
♪プビュー
ルジャンが付けている首輪から薬が投与される。
ルジャン(頼むあと数秒、もってくれ!)
ルジャンは自分自身に言い聞かせる。
起爆スイッチは、建屋の側面に施錠されており、
1m四方の扉の奥にある。
ボタンは3つあり、内2つは起爆ボタンである。
その2つのボタンを同時に押すことによって
1時後に作動する仕組みとなっている。
残る1つは、緊急用で、即時に発動するボタンだ。
要するに3つのボタンを押せば即時に実施されるということだ。
+ーーーーー+
| | ● 起爆スイッチ
| ● ● | 〇 緊急用
| |
| 〇 |
| |
+-----+
解除する鍵などない。
ウイングは、起爆スイッチの扉を最大限の力でパンチする。
穴は開かなかったが、扉は拳の跡がはっきりと
残るほどへこんだ。
更にもう一度パンチする。
すると今度は、ウイングの拳が扉を貫通した。
拳を抜くと、扉は拳に絡みついたまま取れてしまった。
3つのボタンを確認した。
今度はゆっくり正確にパンチする。
♪ウー、ウー、ウー。
ウイングの拳が、3つのボタンを同時に押したのだ。
警告音のサイレンが鳴り、赤色ランプの警告灯が光る。
♪ババババババババン。
建屋内で小さな爆発音が大量に発生した。
それは、炉心本体と建屋との接合部分が破壊された音だった。
炉心本体を支えている接合部分が粉砕され、
必然的に下へと落ち始める。
その光景を見てルジャンは安堵する。
【タイマー表示】01:06
タイマーを見ると1分を超えている。
流石に意識がもうろうとして来た。
それは体内の血液が無くなっているせいなのか、
放射線の浴びすぎなのかは分からない。
ここまで、よく持ったものだと自分自身を感心する。
♪ギギギーー
炉心本体が1m下がったところで停止した。
地下まで落ちて行かない。
音をしたところを見て、原因はすぐに分かった。
炉心本体と建屋の間に鉄骨が挟まってて、
引っかかって止まったのだ。
どう見ても短時間に取り除けそうにない。
思考は絶望と判断したが、体は何とかしなければと
建屋の中へと入り、問題の場所へと行ってみる。
【タイマー表示】01:23
01:23の表示が見える。
ルジャン(なんだ!この数値は?
なんでオレは、こんな狭い中に
閉じ込められてる?
どこ?ここ!)
♪プビュー、プビュー、プビュー
大量の薬品が、ルジャンに投与される。
ルジャンは、一瞬だけ自分の目的とこの場所に居る理由を
思い出すことが出来た。
ウイングの背中にあるミサイルが両サイドの肩へ移動させ、
ウイングをジャンプさせる。
♪ドーン
2発、ミサイルが発射され鉄骨に直撃する。
だが、完全に取り除くことはできなかった。
細かな鉄屑が残っていて10cm
沈んだところで、また停止してしまった。
そこへ、ウイングが炉心本体の上部へ仰向けのまま落ちる。
♪バーン
その反動で、炉心本体が更に10cmほど落ちた。
すると、引っかかっていた鉄屑がはずれる。
♪ゴーーー
炉心本体は、急降下し、地下深くへと潜っていった。
ウイングは、仰向けのまま炉心と共にこの場から消えた。
この時、ルジャンの意識はもうない。
生死は不明だが、顔は笑みを浮かべていた。
~~~ 第3発光炉:監視塔 ~~~~~~~~
現在、調査団も含めて全員、倉庫に移動していた。
サララは、時折、涙を拭きながらも
無言で脱出準備を進めている。
ここに居るメンバーは、
サララ、ラグラン、プラス、ファルカのサララ小隊4名。
逮捕した15名の調査団とテレスを合わせた計19名。
対して、倉庫にはサララ小隊のウイングが3台しかない。
監視塔の出入口付近に調査団のウイングが1台はある。
あとは、あらゆるところに調査団のウイングが
点々と置いてある状況だ。
調査団とテレスは、逃げられないよう2台のコンテナに
8名づつ手錠を掛けたまま乗せることとした。
このコンテナをウイングでけん引してセキュリティセンター
まで運ぼうという作戦だ。
♪ウー、ウー、ウー。
遠くで警報が聞こえる。
サララ小隊のメンバーは、ルジャンが爆破に
成功したことを確信する。
サララ「死にたくなければ、急いで!」(T_T)
調査団の団員は次々とコンテナへと乗り込む。
テレス「あいつは英雄だ。
最高の人生をまっとう出来と思えたんじゃないか?」
サララ「なんでそんな事言えるのよ。
適当なこと言わないで。」
テレス「いや言い切れる。
炉心の破棄とここからの脱出。
まず親衛隊として、アリーを2度も救えたんだ。
そして、ZATとしてあの絶望から
ここに居るみんなを救えた。
彼にとってこれ以上望むことなどないだろう。
うらやましい事だ。」
サララ「分かったようなことを言わないで。」
テレスがコンテナへ入り、ラグランが扉を閉め鍵を掛ける。
ラグラン「準備が完了しました。」
サララ 「全員、無事でセンターに戻るわよ。」
隊員 「了解」
サララは、ラグランが操作するウイングの足にある
フックを掴み立ち乗りする。
いつでも出発可能だ。
後は、放射線量が下がればいつでも脱出できる。
サララ (これを計画した奴!絶対にゆるさいない。
メンバーの前で謝罪してもらうわ。)(T_T)
サララは無言で涙を何度もぬぐう。
♪ゴーーーー。ガタガタガタガタガタガタ。
地響きと小さな振動起こる。地震だ。
計器を確認する。
放射線量は100分の1まで下がった。
だが、まだ外を出歩くには数値は高すぎる。
そして、警報がなってから1分ほど待っても
数値が更に下がる気配がない。
サララはウイングから降り、1つのコンテナを開ける。
サララ「テレス!聞きたいことがあるんだけど。」(--#)
テレス「顔が見たいなら素直に言いなよ。」( ^^)
サララ「ふざけないで!」(--#)
テレス「オレは、いつでも大真面目なんだが。」 (;--)
サララ「線量が下がらないの。原因分かる?」
テレス「数値からして、炉心は廃棄場まで落ちたな。
だが通路がふさがってないんじゃないと思われる。
要するにクズ素がバラまかれてない可能性が高い。」
テレス「オレが行ってみて来るよ。
手錠を外してくれ!」
サララ「あんた。逃げる気でしょ。」(--#)
テレス「素直じゃないな。行かないで。
死んでほしくない。って言えば良いじゃん。」( ^^)
サララ「何言ってるの。死ぬ勇気もないくせに。」
テレス「そうなんだけどね。
はっきり言うなよ。はずかしい。」
テレスは手錠を掛けられたままサララの手を両手で掴む。
テレス「聞いてくれ。アリーを死なせたくない。
だから本気だ。信じて欲しい。」(-- )
サララ「策はあるの?」
テレス「現場を見てみないと何とも言えないが、
きっとある。
オレは臆病者だ。確かに死ぬ勇気などない。
だが、アリーをここで死なせたくない。
オレに掛けてみないか。」
サララ「なら、私がそれを...」
テレスは、サララの口を人差し指で軽く押さえる。
テレス「アリーが居なけば誰がここを仕切るんだ。
オレに格好いいところ見てれくれ。」
サララはテレスの腕を払いどける。
サララ「逃げないと約束して!」
テレス「愛してると言ってくれたら
死ぬまで付いていく。」( ^^)
サララ「どうなの?」
テレス「まづ第一に、逃げるとしても
この監視塔の前を通る必要がある。
そして、アリーは自在に
ウイングをコントロールできるはずだ。
アリーから逃げることなど不可能だと思うが。」
サララ「分かったわ。」
サララはテレスの手錠を外す。
テレス「ウイングは外の使うよ。あれ、オレのだし。」
テレスは、ロビーに戻り正面出口まで移動する。
テレス>>生きてたら濃厚なキスを頼む。( ^^)
サララ>>バカじゃないの。(--#)
テレスは、外に出ると走ってウイングに乗る。
発進すると全速で一直線に進み。
40秒ほどで3番炉に到着した。
線量が下がったとは言え、危険な状況には変わりはない。
炉心へ近づけば近づくほど、身体への影響は大きくなる。
テレスの鼻から赤い物がポタ、ポタと落ちる。
テレスは、10m離れた場所から壁面に空いた穴をうまく利用して、
1080度カメラを炉心が眠る穴へと放り込んだ。
カメラは、撮影しながら下へ下へと落ちて行く。
テレスは、カメラが撮影した映像を解析して、
クズ素の設置場所を特定する。
そして、持ってきた12本の小型ミサイルを同時に発射する。
ミサイルは、建屋の天井から、廃棄場への穴の中へと
軌道を変え進んで行き、指定された場所で爆発した。
爆発した箇所から大量の液体が噴出する。
そして、その液体はすぐさま白い泡へと変貌し、
大きく膨れ上がる。
更にそれが固まり、最終的にスチロールのように
硬くて軽いものへと変化した。
それが100m長もの壁となって放射線を反社したのである。
テレスは、ミサイル発射と同時に結果を確認せず
監視塔へと引き返えした。
クズ素の場所を特定できた時点で成功すると確信したからだ。
監視塔へ戻る間に、自身の健康をチェックをする。
顔が強ばる。
計器の値は降下が見られ、作成が成功したことを把握する。
サララ達も、計器を確認し塔を飛び出す。
3台のウイングが倉庫を飛び出す。
ラグランが先頭を走り。
その後ろをプラスとファルカが、
コンテナをけん引しなからついて来る。
サララはラグランに捕まって立ち乗りしている。
後ろを振り向き、テレスが向かって来るのを確認して安堵する。
テレスは距離を開けて、サララと並走する。
テレス>>ごめん。行かなければならないところが出来た。
一緒に付いていけない。すまない。
サララ>>ほら、逃げる気だったんじゃない。
テレス>>逃げない。
仕事が片付いたら必ず戻ってくる。
信じてくれ。
サララ>>もう、何を言っても信じないわ。
テレスは進行方向を変え、
徐々にサララ達一行から離れて行く。
サララは、テレスのウイングをコントロールするよう
ポポに指示をだすが、できないと返された。
テレス>>オレの居場所はアリーにだけに分かるようにしとく。
サララのタグにテレスの居場所が見えるようになる。
そもそもおかしい。
テレスだけは、居場所が見つけられなかった。
この世界では、ミューミューとサララだけが、
世界の全ての情報を知ることができる。
にも関わらず、監視塔内でも近くにいたのに
それすら検知できなかったのだ。
こいつは只者ではないと、強く感じた。
サララ>>今だけでしょ。
次、会うまで切断しない保証はどこにあるの?
テレス>>もう逃げ隠れしない。
キスする約束したから、オレから会いに行く。
サララ>>ほんと。あんた頭おかしい。
テレスとサララの距離は離れ。
テレスとの通信が途絶える。
サララはセンターを目指し。
テレスはフィジ国を目指して進んだ。
テレスから建国祭の真相が聞けず。
見す見す逃がしてしまった。
きっとミューミューはわざと逃がしたと思うに決まってる。
なんて言い訳するか考えながら、何もない荒野を眺めて進む。
心地よい風を受けながら、ふとルジャンとの思い出す。
テレスの言う通り、彼はここの全員を救った
英雄なのかも知れない。
少なくとも隊員達はそう思っていることだろう。
だが、サララにはどうしても彼を殺したのは
自分だという思いが強く、英雄に思えなかった。
走馬灯のように彼との思い出が蘇り涙する。




