3-3 救助活動ガンバリます ①
♪ハァ、ハァ、ハァ
野外の被害者を優先しようと、ミューミューは会場出口へと走る。
ミュー>>命の危険があるのは外の人達なのね?
ネロ >>はい、会場内は26℃と空調管理されておりまして
問題はありません。症状はただ眠るだけです。
体温さえ下がらなければ危険は回避できます。
ミュー(意味が分からないわ。犯人は何がしたいの。) (--#)
ミュー>>ステーション内の温度は上げられないの?
ネロ >>光力が足りません。
メイン会場のフロアーのみ集中させるにしても
他地域がまかないきれず極寒となります。
そもそも温度を10℃上昇させるのに8時間・・・
ミュー>>分かった。もういいです。
ステーションは、全長2kmで3階層からなる窓1つない
漆黒な壁面を持つ超巨大建造物。
そう、テネオン市庁ビルも含め、町そのものがステーション内に
存在しているのだ。
カリポス都市には、9棟のステーションが立ち並んでいる。
ステーション内は、温度管理され、壁に山などの景色を表示し、
天井に青空を映し出してる。
人々は、天候に左右されない生活を送っているのだ。
会場の外と言ってもステーションと呼ばれる建物の中。
ミューミューは、ステーション内の温度を上昇させれば、
被害者を全員救えると考えたものの、エネルギー不足の問題から
それが不可能であることを理解した。
ミュー(100万人は助けられなくても、
この会場だけでも全員救う。)
ミュー>>更に別の薬が打たれるとか。
タグが爆発するとかって、ありえないの?
ネロ >>今回使用された薬品は、体内で生成するタイプではなく、
製品にプリセットされた薬品であります。
搭載している量は1回分しかないことから、
2度目が投与されるとはありません。
また、プログラムを解析したところ
別の薬品を強制投与するよう組まれておりません。
おそらくこのタグを使って別の事件を起こすことは、
無いと想定しています。
ただし、同機種を身に付けてる者で、
運良く機能しなかった者が20万人ほどおります。
何かのきっかけで発動する可能性はあります。
ミュー>>分かったわ。
今は、目の前の被害者を優先します。
ミュー(別の事件が起きたらそのとき考えよう。)
ミュー>>あれ!うちの隊員は被害にあってないのかしら?
さっき全員返答が来たと思ったけど。
ネロ >>全員無事です。
軍から支給されたタグを身に付けているため
被害を受けておりません。
ミュー>>ありがとう。
ミューミューは倒れている人を踏みつけないよう
飛び越えながら走る。
ミュー(早く隊員達へ状況説明と指示をしなければ。)
隊員らは一刻も早く指示が来るのを待っているはず、
だが間違った指示を出してはいけない。
本部との連携が先決と考える。
ミュー>>こちらシルキー1。センター応答願います。
サララ>>こちらセンター。連絡しなくてごめんね。(>_<;)
国防省セキュリティーセンターの監視室にいる
親友のサララがミューミューからの連絡に応答する。
ミュー>>うんうん。状況はネロから聞いている。
サララ>>今起きている事件ね。
状況はセンターでも把握してて、館内では大騒よ。
とりあえず犯人捜しよりも救助優先で
進めているから、もうちょっと待ってて。
ミュー>>そっちは大丈夫だったの?
サララ>>オペレーターのゴルトくんが倒れた。
彼には悪いけど、そのおかげで原因究明は早かったの。
早急な対応策は、解毒しかないという結論になったわ。
体内で生成できる薬品で検索したところ、
フィジ国のCAT社が引っかかった。
薬品会社ね。
そこの品番T115という薬品を使うと数秒で
目覚めるというシミュレーション結果が出ている。
他に即効性のある薬品は見つからないから
これしか選択肢がないって感じ。
この薬品使う方向で、これからCAT社と
交渉を始めるところ。
ミュー>>ありがとう。先が見えたわ。
薬品があるなら安心した。
このまま何も出来ないんじゃないかと思ったから。
じゃ、任せるね。
こっちもこっちで、出来ることするから。
サララ>>早く薬を配布できるようガンバル。
ミュー>>お願い。
回線が切れる。
ミュー>>ネロ、ビルの中と外の人たちに伝えたいことが
あるから管内放送をジャックして。
ネロ >>準備できました。タグに向かってお話しください。
ミューミューは走るの止め、歩き出す。
う、うん。と1回喉のつまりを取る。
一呼吸吸って、タグを口元へ運ぶ。
ミュー>>ごめん。声は年配のおじさんに変えられる?
ネロ >>いつでもOKです。
歩きながらタグに向かって放送を開始する。
ミュー「館内ならびに野外の皆様へ、当館から緊急のご連絡があります。
パニックにならず冷静になってお聞きください。
現在、当ビル内におきまして多くの方が意識を失い
倒れこむという事態が発生しております。
意識を失っている方々は今のところ命に別状はありません。
冷静になられますようお願います。
この状況は、当ビルだけに限らず国内の
至るところで発生しております。
当ビル内だけで起きている問題ではありませんので、
どうかあわてずに行動されますようお願い申し上げます。
病状は、軍からの報告によりますと、
タグの誤動作によるもので、睡眠薬に似た薬品が投与され、
眠ってしまったとのことです。
ただ眠っているだけでして、他の病状はありません。
20時間ほどで薬品の効果は切れ、
目を覚ましますので、ご安心ください。
無理に起こそうとはしないでください。
特別な薬品でなければ覚醒できない病であります。
現在、政府の方では解毒する薬品を選定中でありまして、
安全が確認され次第、順次投与するとのことです。
不安とは存じますが、もうしばらくお待ちくだい。
また、大変恐れ入りますが、当ビルから救助の
ご協力を要請いたします。
命に別状がないとお伝えしましたが、
体温が下がれば凍死する恐れがあります。
館内に居る方は安全ですが、外で倒れられている方は危険です。
管内へ運び込むか、
毛布等を掛け体温が下がらないよう処置する必要があります。
一刻も早く家族や友人に目を覚まして欲しい気持ちはわかります。
ですが、外で倒れている方々も皆同じです。
このテオンビル周辺だけでも何万の人が倒れております。
手が空いてる方は、救助のご協力をお願います。
具体的な救助方法につきましては、
館内2階にある打ち合わせ室を全て解放いたします。
近くの被害者はこちらへ運んでいただくようお願い致します。
また、各アトラクションにブランケットを用意してあります。
それを持って、管内まで運ぶのが大変な、遠くにいる被害者へは
そのブランケットを掛けいただくようお願い致します。
一人でも多くの方がご協力してくれることを望みます。
今回、幸いにも館内には左腕に腕章をつけた
私服の警備隊員がおります。
彼らの指示に従って行動されますよう合わせて
お願い申し上げます。
業務命令、業務命令。
館内の職員は、直ちに作業を中断し1階広場へ集合せよ。
警備隊と共に人命救助に従順すること。
繰り返す。
館内の職員は、直ちに作業を中断し1階広場へ集合せよ。
警備隊と共に人命救助に従順せよ。」
放送終了と同時にミューミューは外へ出る。
身体が硬直し足が止まった。
その光景を目の辺りにて絶句する。
・・・ (>_<;)
タグの情報によると、会場周辺だけでも3万人もの犠牲者が出ている。
頭では理解してはいたが、見渡す限り人、人、人が倒れている。
今まで体験したのこない光景だ。
どこから手をつけていいかパニックになる。
果たして視界に入る全ての被害者を助けることが出来るのだろうか?
絶望感が全身を襲い掛かりる。
一歩が踏み出せない。
ミュー(ひどい、ひどすぎる。
どうしたらこんな酷いこと出来るの。)(TT )
ミューミューは犯人の行動が信じられなかった。
そして、涙で視界がぼやける。
ミュー(やばい、早くしないとみんな死んじゃう。)
思えば思うほど、頭が真っ白になる。
ミュー(何をしているよミューミュー。
泣いてちゃだめでしょ。
助けられるのは私だけなのだら。
一人でも多く助けるの。)
自分を鼓舞する。
ミュー>>こちらシルキー1。
全隊員に告ぐ。館内の放送は聞いたわね。
隊員全員、腕章をつけて外の救助に回ってください。
現場は広範囲に広がってます。
ちょっとまって。
ミューミューは、ふと先日見た救命救急のドラマを思い出す。
多くの怪我人が出て医者が足りない状況下において
医師の取った行動は、患者を振り分け、危険な人から手当する
ことであった。
ミュー>>ネロ、危険な人を教えて。
ネロ >>赤~青へ5段階にマーキングしました。
ミュー>>それメンバーにも転送しといて!
ネロ >>転送しました。
ミュー>>こちらシルキー1。
会場周辺の被害者情報を送りました。
一般市民を使って、
最優先の人から救助するようお願い。
以上。
全隊員>>了解。
ミューミューは、とっさの判断にしては的確な指示だったと感動する。
普段、人前で話すのは得意ではない。
声は小さく、話しているうちに何が言いたいのか、
分からなくなることがある。
なぜか、この世界では性格が変わってしまうのか、
堂々と話すことができる。不思議だ。
野外を遠くまで見渡すも、最優先の被害者が固まっていない。
広範囲に点々と散らばっている。
ミューミューのタグは、脳へ視覚情報を送ることができる。
これにより、モニタ越しではなく
肉眼でタグの情報をオーバーラップさせた風景が見えている。
感覚ではあるが最優先者は想像よりも少なく感じした。
何とかなるかもと絶望から使命感へと切り替わる。
隊員達は会場付近から救助にあたるだろう。
ならば、ミューミューは遠くからと、勢いをつけてジャンプする。
大きな弧を描いて3歩で1000m先へ着地する。
野外も数万の人で密集しており、
その中を飛んでいる少女が目撃され注目を集める。
誰にどう思われようと気にしない。
一人でも多く助けるため周囲が見えてないのだ。
着地して、正面に居る女性へと駆け寄る。
近づくと5才くらいの子供が女性の下敷きになっていることに気づく。
どうやら親子だ。
お母さんは被害者のようで、うつ伏せで子供の顔を覆っている。
子供は被害者ではないが、身動きがなく呼吸もない。
お母さんを転がすようにして仰向けにし、子供の顔を太陽に照らす。
ぴくりもとしない。
ミュー>>ネロ!この子、息してないみだいだけど? (o_o")
ネロ >>タグからの酸素供給で命はつないでいます。
ミューミューは、子供の体をゆすり目覚めさせようと試みる。
ミュー「起きて。起きてお願い。」 (o_o")
子供 「わー。あーー。」\(ToT)/
子供が目を覚ましくれた。
悲痛な叫びを耳にして、胸が苦しくなる。
そして、優しく抱きかかえた。
ミュー「怖かったね。んー怖かった。
大丈夫、もう大丈夫だから。」(i_i )
ミュー>>ネロ。この子のお母さん、目覚めさせることできる?
ネロ >>可能です。解毒剤の成分は入手済みです。
ミュー様の血液を使って薬品を生成することは可能です。
子供は、首を振ってお母さんを探す。
お母さんを見つけるとミューミューから離れて、
寝ているお母さんの元へと抱きつく。
動かないお母さんに気づくと、
子供は無言でお母さんを両手で揺らす。
この光景が更に胸を打つ。
ミュー(犯人はなんて酷いことをするの。
この親子が何をしたというの。)
ミュー「お母さんね。寝てるの。
今、起こしてあげるから、ちょっと待ってね。」(i_i )
ミューミューは、涙を流しながら子供に説明し、
自分のタグから糸のような細いコードを引っ張り出す。
そして、お母さんのタグへ直結する。
ミュー「大丈夫だよ。お母さん。今起きるから。」 (i_i )
ミュー>>いいわ、薬を送って。
ネロ >>ミュー様の血液から薬品を生成し投与しました。
ミュー>>こっちもお願い。
ネロ >>投与しました。
続けて、すぐとなりで寝ている70代のおじいさんへ
ケーブルをつなぎ変えて薬品を投与した。
効果は抜群で、数秒でおかさんが目を覚ます。
ミュー(よかった。ほんとよかった。)
ミューミューは、袖で涙を拭きとる。
ミュー「どこか具合の悪いところとかありますか?」(^_^ )
子供 「ママ。ママ。ママ。」( T_T)
お母さん「いえ、何ともありませんけども。えっと、私」(..)??
ミュー 「今まで眠っておられました。
ご自身のタグから睡眠薬が打たれるという
テロにあわれたんです。
あなただけではありません。
周りを見てください。
倒れている人みな、その被害者です。」
お母さんは自分のタグを見て、不安になる。
ミュー 「ご安心ください。
もう一度睡眠薬を撃たれることはありません。」(^_^ )
お母さん「はあ。」( ..)
お母さんは、ぽかんである。
理解が追い付かず状況が掴めていないようだ。
ミュー 「お母さん、目覚ましてよかったね。」 (^_^ )
子供に話しかけたが、無言でお母さんに
しがみついてて返答しなかった。
慎ましい親子の姿を見て、止まった涙がまたあふれ出す。
次に解毒したおじいさんも目を覚ます。
ミューミューのジャンプを見てか、彼女の周囲に人が集まりだして来た。
ミューミューが立ち上がり、近くにいた1人の青年に声をかける。
ミュー「すみません。私、警備隊の関係者です。
手伝っていただけませんか?」m(_ _)m
内ポケットから腕章を取り出し、彼に見せる。
そして左腕に腕章を装着させた。
青年 「何をすれば、いいですか?」
ミュー「ありがとうございます。
救助者リストを送りました。
そのリスト順にしたがって
救助していただけると助かります。
対処方法は簡単です。
体温が下がらないよう、
何かを身体に掛けるだけでいいですから。」m(_ _)m
青年は、ミューミューからの通知を許諾しリストを拝見する。
そして周囲を見渡す。
青年 「近い人から順に救助した方が効率がいいのでは?」(‥ )?
ミュー「その順は、すぐに対処が必要な人達なんです。
対処が遅れれば死亡する恐れがあります。
面倒ですが、そのリスト順で対処するようお願いします。
できれば回りの人と協力し合ってくれると助かります。」
ミュー「皆さーん。
少し私の話を聞いてください。
私は警備隊関係者です。
放送で聞いたかも知れませんが、
この場で倒れている人達は健康に問題はありません。
ご安心ください。
しばらくすれば政府の方から会見があり、解毒剤が打たれます。
ですが、この場で眠り続けると体温が下がり危険な状態となります。
どうか体温が下がらないよう、厚手のも掛けてあげるよう
協力お願います。
あと。
隣にいる彼が、至急対処が必要な人のリストを持ってます。
手が空いてる人は、リスト者を優先しますようお願いします。
お願いします。」 \(>o<)/
ミューミューは両手を伸ばし、大きく手を振り
大きな声で、出来るだけ注目を集めて訴えかける。
さっそく、周りの人達は、救助を始める。
ミューミューはうれしかった。
自分の発言に何の疑いを抱かずに動いてくれたから。
すこしホットする。
こうしている合間にも、オレンジから赤へと
危険者がポツポツと増え初めて来た。
まだまだ絶望的な状況は変わらない。
だが、こうして協力者を募れば、少なくとも
テオンビル周辺の人々は一人も命を落とすことなく
救助できる希望が見えて来た。
ミュー「では、ここをお任せします。」
青年 「あなたは?」
ミュー「私は別の場所で作業します。」
青年 「分かりました。ここをお任せてください。」
ミュー「いい人ですね。あなたに声をかけてよかった。」
本来ならば周囲の人達へ強制的に救助者リストを送るべきなのだろう。
リーダー的な人を作った方が統制とれて効率がいいのでは、
と考え青年に託すことにした。
ぼーっとはしていられない。
ミューミューは、青年に深くお辞儀をする。
助けたお母さんと、もう少し会話をしたいところではあるが、
意を決して、次の場所へと大きくジャンプしたのだ。
周囲の人は、少女が尋常でない高さと飛距離でジャンプしたことに
驚くのであった。




