3-18 行く先々に悪い人がいるよ
~~~ マリンビル:SNT社第二開発部 ~~~~~~~~
ミューミュー率いるシルキー小隊は、
マリンビル内のSNT社支部資料室を目指し
エレベータで上へと登っていた。
マリンビルは、SNT社所の有物ではない。
テナント貸出のオフィスビルである。
このビルの4~6階の3フロアを借りていた。
SNT社の拠点は分散されていて、
このビルを本部としており、事件の型番D505系
タグはここで開発されたものだった。
型番D505の開発は既に終了しおり、
現在は、後継機にあたる型番D506の試作中である。
隊員達は無言のまま、次の作業に向け
各人がすべきことを脳内で整理している。
エレベータ内は静寂に包まれ息苦しい中、
ミューミューはタグを使ってサララとの
無言の会話を楽しんでいた。
サララがOTM社のテーマパーク内で、
興奮しているのを聞いて、ついニヤついてしまう。
ロワ 「隊長、楽しそうですね。」 ( ^_^)
ミュー「やだ恥ずかしい。不細工顔だった?」(^-^;
モエニ「いやいや。
隊長は、どんな顔も可愛いですよ。」
ルソン「お前、何言ってる!」
ロワ 「良いことでもあったんすか?」
ミュー「内緒です。」 (*^_^* )
ルソン「どうせ、いつものだろ。」
ロワ 「あー」
ライト「私語は慎め!遊びに来ているんじゃない。」
ロワ 「固いなー。」
スコビィ「・・・」 (--#)
ミュー「ごめんなさい。
私が和を乱してました。」m(_ _)m
ライト「その通りだ。」
ミュー「すみあせん、
ここから気を引きしめます。」(^^;
♪チン
エレベータは目的地の6階へ到着する。
扉が開き、シルキー小隊の6名はSTN社の
フロアーへと降り立つ。
降りたのはいいが、フロアー全体は消灯されており、
周囲は薄暗らく、視界がはっきりとしない。
正面に会社の入口があるのは分かる。
左右には、まっすく伸びた通路があるだけのようだ。
ミューミューはネロを使って、
6階の照明を点灯させる。
フロア全体の視界は良くなる。
先ほどは気づかなかったが、正面入口には
侵入禁止の看板が立ててある。
軍が事件の調査のため出入りを封鎖しているのだ。
静寂と冷たい空気は依然全身を襲い、
明るくなっても不安は消えなかった。
ミュー「寂しいね。
なんか背中がゾクゾクする。」( ..)
モエニ「隊長でも恐怖を感じることあるんですね。」(^^ )
ミュー「あるよ。でも今は恐怖というより、
私たち以外この世界に人が
居ないみたいな感覚かな。」
ロワ 「分かるー」(^^ )
スコビィ「・・・」(--#)
ミューミューは、スコビィの険しい表情を見て、
モエニとロワにこれ以上は禁止と無言で
ジェスチャする。
現在、SNT社が占有する4~6階は
現場検証により軍が封鎖している。
許可がない限り社長ですら立ち入ることは
できない状況にある。
SNT社はこのビルだけでなく、
国内に数回所に支部と販売店舗を持っている。
テロにより、1週間の営業停止ならびに
入出禁止が発令され、全国の支部および店舗に、
従業員が立ち入ることが出来なくなった。
事件の被害者からは、昨日からの問い合わせが
殺到していることから、SNT社は各地に緊急の
特設会場を作り、24時間体制で
クレームの対応に専念している。
マリンビル自体は、多数の企業も利用されていて、
全フロアが利用されている。
封鎖している4~6階以外の利用に関しては、
特に規制はしてなく、通常通り営業しても
構わないことになっていた。
だが、1年に一度の国を挙げてのお祭りとあって、
ビル内の全社は3連休としたためか、
休日出勤している箇所だけが灯りが付いている。
現場検証の方は1時間ほど前に完了し、
調査団は引き上げた後である。
現在4~6階はだれも居ない無人だ。
そこへミューミュー率いるシルキー小隊が
現れたということになる。
ミューミューの視界左上にアラートモニタが
表示された。
危険を知らせる通知だ。
これは、ネロが脳内に割り込んで視覚情報に
手を加えているためミューミューにしか見えてない。
ミューミューは左腕を挙げて真剣な顔へと変わる。
隊員達は、隊長の顔から危険な状況が
起こったことを察知し、銃を構え左右を警戒する。
なんという、あうんの呼吸だろうか、
隊長が何も言わなくとも状況を理解し瞬時に
対応する素晴らしいチームである。
警告アラームの内容は、4階に武装した7名が
現れたというものだ。
そして、地下1階の停車中の車内から
4階と通信していることも確認出来た。
武装集団は、監視カメラ、温度センサーや
赤外線センターなどのあらゆる計測器に偽情報を
流し、そこまで進入して来たようだ。
今のところ、彼らの存在はミューミュー以外には
知られてはい。
どうやら地下から、ここの管理システムを
乗っ取って情報を改ざんしている。
ミューミューのタグは、この改ざんを検知し
逆に彼らの存在を知ることができた。
ミューミューはしまったと感じている。
自分たちの存在が、彼らにもばれていると。
~~~ マリンビル4階 ~~~~~
武装集団は、1人が技術者で、残り6名は
武器を持った戦闘員の構成である。
彼らは、監視カメラがにらみを利かしている。
だが、地下からのハッキングにより、
その映像は管理室には送られてはいない。
武装1「想定外のことが起こった。
6階に警備隊が現れた。」
技術者「ちょっと待ってくれ話が違うじゃないか。」
武装2「想定内だ。
予定通りにいかないのは普通だろう。」
技術者以外、笑みを浮かべる。
武装2「むしろ軍じゃなかったことに
ラッキーだと思わないと。」
武装6「たかが警備隊だろう、大したことない。」
武装3「確かに!オレらを見たらビビって
逃げるかもな。」
技術者「取引は中止だ。おれは抜けさせてもらう。」
武装1「それはかまわない。
だが左腕のそれ!何だか知ってるか?」
技術者「生体センサー無効化というのは嘘か?
騙したな。」
武装4「嘘ではないぜ。そこから10万ボルトの
電流が流れる機能も備わってるってことさ。」
技術者は、自前の道具を使って、左腕に装着した
リンクの解析を始めようとする。
武装1「1つ忠告すると、それを無理やり外そうと
したり、俺から100m離れると、
そのもう1つの機能が作動するから
注意した方がいい。」
武装2「く、ははは。」
武装4「引き返すならご自由に。お前が居なくとも、
むりやり破壊して進むだけだからな。」
技術者「くっそ!」
武装1「取引をしないか。
次のサーバ室への認証も解除してくれたら、
そのリングを外すことを約束しよう。
報酬も倍出す。どうだ?」
技術者「契約はここの認証を解除するだけのはずだ。」
武装4「だから、2つ解除してくれれば報酬、
倍出すって言ってるじゃん。
お前、ラッキーだよな。」
技術者「何が取引だ。
受けなければ死ぬしかないじゃないか。」
武装1「・・・」
技術者「分かった。次の扉までな。」
技術者は、ロック解除の作業を再開する。
武装4「なんだ、帰らねーんだ。つまんねー。」
武装3「上に居る警備隊って何人だ。」
武装1「6名だそうだ。」
武装3「OK。俺1人で十分だ。片づけて来る。」
武装1「待て!軍を呼ばれたら面倒なことになる。
上の連中がここに来るまで我慢しろ。
その時は好きにしていい。」
武装3「へいへい。」
武装集団は、手に銃を持ち監視カメラの前に
堂々と立ちながら四方を警戒する。
武装4「(扉を)壊した方が早いんじゃないのか。」
武装2「バカか。軍の応援が来る。」
武装4「んなこと、分かってる。
オレ様が全員、ぶっ殺してやる。」
武装5「そうだ。オレたちが盾になるから、
そんな物(扉)壊しちまえ。」
武装3、5、6は誰もいない廊下の奥へ
照準を合わせ、
早く戦闘が始まらないかウズウズしている様子だ。
~~~ マリンビル6階 ~~~~~~~
ミュー「全員ちょっといい?」
ミューミューは、小声でなく通常のトーンで
隊員達に現在の状況を説明し始める。
隊員立ちは周囲の警戒を続け、
真剣な顔で隊長の話に耳を向ける。
ミュー「たった今、4階に7人組の不審者が
現れました。
SNT社に進入しようと現在通用門の
ロック解除をしています。」
ロア 「きっと事件に関係する人達ですよね。
向こうから情報提供者が現れるとは
オレたちはラッキーだ。」
ミュー「そうね。ここで調査するよりも
彼らを捕まえて、何しに来たのか
問いただした方が有益かも。」
ミュー「このビルのセキュリティ監視を騙す
方法があるらしく。
管理室には武装集団の存在は、
まだ知られてません。」
スコビィ「ここの監視レベルは高い。
高度な知識と技術力を持った
連中と思われる。
プロ集団だと思った方がいい。」
ミュー「そうね。その通りだわ。
しかもここの監視システムの情報を
乗っ取っているみたいだし。
地下1階の駐車場にも仲間がいて
車からハッキングしてて、
4階へ情報提供してます。」
ライト「つうことは、我々の存在はバレてい
るってことか?」
ミュー「そうなの。幸いなことに、
私たちはまだ武装集団に気づいていない
と思われている。多分。
軍の情報もハッキングされている。」
ライト「なるほど、応援を呼んだらやつらが
何をしでかすかわからないということか。」
ミュー「理解が早くて助かるわ。」
ミュー「だから軍への要請は、彼らが暴れ
出した時にします。
立て込まれる前に、ここは私たちだけで
対処しましょう。」
隊員達「了解」
スコビィ「状況からして実力揃いと見た。
彼らを捕まえるのはかなり危険度が高い。」
ライト 「オイオイ、お前がびびるとは珍しいな。」
スコビィ「慎重に行動しろと言ってるんだ。
特に隊長!」
ミュー 「私?」
ライト 「隊長は大丈夫だ。
むしろ自分の心配をした方がいい。」
ライト 「地下は任せろ!」
ミュー 「分かりました。
地下はスコビィとライトに任せします。」
ライト 「いや、…」
オレ1人で十分だと言いたかったのだろう。
ミューミューがライトに向かって
それ以上しゃべるなとジェスチャする。
ミュー 「これは危険なミッションです。
彼らが、どのような武器を
装備しているかわかりません。
一人で行かせるわけにはいきません。」
ミュー 「地下のミッションは、4階へ情報提供
の断絶と、軍の応援が駆けつけるまで
逃げられないよう閉じ込めておく。
いい?」
スコビィ「隊長の指示に従え。」
ライト 「わかった。わかった。あんたと行って、
足止めすりゃいいだけだろ。」
スコビィ「封鎖とは、具体的に出入り口を破壊して
身動きを取れなくしてもいいと
理解しましたが。」
ミュー 「それでいいです。
逃げられなければ破壊しても構いません。
とにかく、身の危険を優先してください。」
ロア 「そんな事言っていいんですか。
本当にメチャクチャにしますよ。
この人達。」
ライト 「適当なこと言ってんじゃねー。」
ロア 「怒られるのは隊長なんです。
そこをわきまえて行動してください。」
ライト 「捕まえてもいいんだよな」
ミュー 「出きればだけど。無理はしないで。
危ないと思ったら逃がしても
かまわないです。」
スコビィ「了解した」
ミュー 「残りのメンバーは、私と一緒に4階に
降りて、7人を捕らえましょう。
応援も呼ぶので無理せず、
身の危険を優先にしましょう。」
ミュー 「ちょっとまって。」
ミューミューは沈黙する。
その間、ネロによってビル内の情報が脳内に
送られ視覚となって目に写りだされた。
ミュー 「3階、西棟2ブロックに人が3名います。
あと4ブロックに1名。
爆破物を使われたら危険にさらされる
可能性があります。
彼らには避難していただきましょう。
ロワ、願いします。事情を説明して、
東棟から1階へ避難させてください。」
ロワ 「階段を使えばいいですか?」
ミュー 「エレベータを使ってかまいません。」
ロワ 「地下のやつにバレるのでは?」
ミュー 「安心して。
私もここのシステムにハッキング
してるから、彼らには私達が6階に
留まっているよう仕向けてる。
なので、もう行って。」
ロワ 「了解」
ロアは、ミューミューを先頭にメンバーと順に
拳を会わせ「幸運を」と言って走り去った。
ミューミューは残りのメンバーを見る。
隊員立ちは、理解したというようなジェスチャで
首を縦に降った。
ミュー「今から5分後に作戦を開始します。」
拳を輪の中心へ突きだす。
隊員全員「幸運を!」