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Why Did You Choose Me?

 明け方、新聞配達員の運転するバイクの音に目覚めたとき、僕はすぐに世界を脚色してしまおうと考えた。そう、それは夜明けを告げる口笛吹きの仕業だ。そうして目覚めた僕の隣には、白鳥に導かれて迷い込んできた異界の姫君が眠っている。僕らが眠っているのはアオガエルの設えてくれた青葉の屋根の下で、まるでアダムとイヴのように――

「ああ、だめだ!」

 僕は己の想像する世界にセンスが欠けていることを嘆いた。どこから間違えたのだろう、最初は良かったはずのだ。夜明けを告げる口笛吹き、ここまでは大丈夫なはずだ。

 いや、そういうことではないのかもしれない。僕は静かな熱狂のうちに過ごした昨夜のことを思い返すと、自分がもはや子供ではないと自覚すべきだった。だというのに、どこかで純朴さを引きずってしまっている。そのことを嘆くべきなのだ。

 新聞配達員のバイクはどこかの角を曲がって遠ざかっていく。僕の家に新聞は届かない。しかし、この家にはきっと新聞は投函されているだろう。

 僕は文字との付き合いは苦手だ。食い入るようにして文章を読むというよりは、眺めるように、受け流すようにして文字と接してきた。だから僕の想像力には限界があるのだろう。しかし、僕より少しばかり歳上の彼女は、世代が違うというわけでもないのに、文字というものと親しんでいる。僕はそんな彼女に憧れ、そして、選ばれた。

「早起きなのね」

 上体を起こして窓の外を眺めていた僕に、彼女は優しく声をかける。ささやくような声の使い方をする彼女の言葉を、僕はいつも懸命に拾ってきた。……ああ、そうか。僕は彼女の声を通して言葉と、そして世界と向き合っている。そう思い至ったとき、僕は彼女に抱いてきた疑問をなおさら強くした。

「ねえ、どうして僕を?」

「分からない」

 これも一時の戯れか。そう落ち込みかけた僕の肩に、彼女は手をかける。

「これから探していけばいいじゃない」

 僕は、彼女の瞳に映る窓の外の風景を、いつまでも見つめていたいと思った。

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