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2020/08/20

 トルコの露店で買ったエメラルドの指輪を眺めやりながら、その辺のコンビニに売っていた缶ビールを飲みながら、暑い夏の夜をやり過ごす堀端の女は私だ。無線イヤホンから流れてくる音楽は涼し気なエレクトロ・ポップで、スマートフォンの発するろくでもない通知を冷ややかに押し流す。本当にろくでもないのは私かもしれないけれど、そんな自嘲をしなくて済むようにビールを飲んでいるのだから、意識の外に追いやるように努めた。夜風が足元をくすぐるけれど、そのぬっぺりとした感触に辟易する。

 こんな暑い夜も、誰か一緒に笑い合える友人でもいれば変わるのかもしれないなあ。まあ、私のように付き合いの悪い女には一緒に笑い合う関係なんて望み得ないのかもしれない。トルコに行ったのも一人だった。友人なら同性でも異性でも良いけれど、なんてことを呑気に考えている間は寄ってくるものも寄ってきはしない、というよりも自分から追いかけていかないといけないんだろう。はあ、それはとても面倒なことだ。

 相変わらずのっぺりとした風が堀端を通り過ぎていく。風はどこへでも行ける。しかし、トルコへ行っても変わらなかった私はどこへ行けるだろう。エメラルドの呪縛を感じながら、私はその濃い緑の指輪を投げ捨てる勇気もないままに堀端に佇んでいる。指輪の代わりに缶ビールを投げ込もうか、なんて拙い考えをしたときに、ふとノンアルコールの文字が目に入った瞬間、私の身体から全ての力が抜けてしまった。笑い合える友人もないけれど、それでも良いかもしれない。だって一人で笑って生きていけるのだから。

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