BEAST
続きが欲しい!という声がありましたら、連載も考えています。
私は、早朝、テイクアウトのブラックコーヒーを片手に。建物を背にして立っていた。トレンチコートを羽織るように気崩す、東洋系の女である。黒髪を長くゆるく、束ね、毛先がふんわりと胸のあたりで羽上がっている。
私は今日、はじめて会う男を待っていた。若い実業家で、このアメリカ東岸の都市にいくつもオフィスをもつ。そして、ゴシップ誌を賑わせるイイ男。私も人となりを知るためにも、彼を取り上げるいろんな種類の本や雑誌に目を通した。内面も外面も人を寄せ付けるみたいね。
だけど、私にとっては仕事。遊びにきたわけじゃない。私は大手企業の秘書課にいた。でも合わなかった。自分でいうと、出来ないやつに聞こえるかもしれないけど、自分の能力が少しもいかされている気がしなかった。高い身長も浮いていた。そこで、会社の集まりで仲良くなったアメリカ人に声をかけられ、今日という日が設定されたのだ。メールアドレスのみ、そのアメリカ人を通して交換している。
今の私と違って忙しい人のため、朝食を一緒にとることにしたのだ。彼に合わせた場所と、この早朝という時間に。そして、大通りを歩く人たちの中に交じった。都会でも東京とは全く違うこの海外ならではの雰囲気、皆忙しそうにしかしいきいきとしている。私は今日だめならば、日本にまた帰る。日常へと戻るのだ。コーヒーを片手に、もう一方にメモを器用に開いて確認した。
『……んっ。』前の人が止まり、私はぶつからないように避ける。そして、周囲の違和感に気付いて私も立ち止まる。そう、まるでこの瞬間を切り取ったかのように周囲の人たちがある一方を向いて止まっているのだ。それはハリウッド映画の撮影さながらだ。
そして人々の視線の先を私は追った。浮き世めいた男が豪華絢爛なホテルのエントランスからゆっくり出てきたところだった。
そう、彼はまるで魔物。彼の存在が私たちの視界に入ったとき、無視できないものになる。暗い艶のある髪と硬質そうな白い肌、彫りは深くて眉は鋭角、切れ長で繊細に睫毛に縁取られた目に植え込まれた宝石はミステリアスさを増させる。その均整な顔に長い首、180を越えるだろう身長に、男性らしい肩幅と腰幅、手足はしなやかに筋肉が発達している。生物学的にも美しい彼の裸体は非合理的な贅肉や装飾となる筋肉はなく、厚い冬のコートをきていたって誰も彼もを魅了してやまないのだ。きっと誰もが彼に目を奪われ、鼓動を早くし、何も考えられなくなる。そしてその事実に気づいたき時、千差万別の行動を起こす。
ただ、どの行動を選んだとしても、変えられないことが一つ、それは彼の姿を目にしたとき、勿論それは自分の心の中に描いたものでさえも、感情が抑えきれなくなる、その感情をしまっておくことはできても忘れることはできないということだ。
そして、その彼の目が私を捉える。私はそれだけで、捕らわれた気がした。ラフな面接みたいなものだから、私服でと言われていた。勿論、彼も私服だ。だが、スーツで来ていれば、仕事の戦闘服を着て、私服だと言い張れば良かったのだ。
私は恐ろしかった、彼と仕事をすることが。
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