コンビニに行ってたら超お嬢様が来てたことについて
さらに面倒くさいことになってる気がする。嫌な予感以外何もしない。
「ただいまー!」「おかえり。」
居間の方から母の声が聞こえる。
自分の部屋に上がると鞄を下ろして中からテキストを取り出しシャーペンをノックしようとした。察しの通り芯はなく、替え芯も空っぽである。家族は全員鉛筆族だし家にあるということは考えづらい。私は嫌そうな顔をして残った一つの選択肢を実行することにした。
「コンビニ、行くか。」
あいつ(リカ)とか来ると面倒くさいからとりあえず釘を刺しとおくことにした。
「誰か訪ねて来ても絶対に家に入れないでね。」
階段に自分の靴下が触れるたびカン、カン、カンと音が淡々と響いていく。上着を羽織るとガチャリとドアノブを回し外に出る。しばらく歩いて行くと肌寒さを感じ始めた。道の端にある温度計を見るとなんと三度。こりゃ本当に冷蔵庫だよ。吐く息は白い。
家から十分もするとコンビニが見えて来る。ウィーンと鳴る自動ドアを潜ると中はもう天国だった。目的のものを買っても私はでれずにいた。外は地獄だもん。出れないよ。そんな馬鹿馬鹿しい脳内会議を行い無駄な時間を食ってしまったことに後悔したのはまだ後の話である。
自分の部屋に入ると異変は起こっていた。ガチャ。無言でドアを閉める。
なぜなんだ!なぜあいつがいる!
「おかあさーん!」
裏切りやがったな。本当に本当に…
「あ、伊織。」
「!?」
母は大金を手にもってホクホク顔でスキップをしていたのだ。あれが札束というやつだろう。初めて見る。
「お母さん何した?詐欺、強盗?」
「あんたねぇ、どんだけ母に失礼なのよ。これはね、由緒正しく…」
母の話は無駄に長いからまとめるとこうだ
一、ユカリが来た。
二、断った
三、七十万くれると言った
四、喜んで入れた
要するにまんまと金につられたというのだ。ユカリ、って確かリカが話してた時にいた1人だったな。そんで、社長一族で超お金持ちだかなんだかっていう話だとか。
「十万やるから相手してあげて!」
……
「二十万。」
「買った!。」
「じゃあこれユカリちゃんと食べてね!」
とだけ言い残しそそくさと去っていった。何のオークションかわかんないけどこんな大金見るだけで目が腐るよ!
嗚呼、あの子羨ましい。この辺でも有名だもんね。もてなす、ってこれ?お母さんこんなの隠し持ってたの?その菓子を一枚手に取り口に含むと
「美味しいっ」
それはクッキーのようで歯で噛むたびにサクサクと音が鳴り甘味が舌を撫でる。
今度こそ入ろう。