ローザン王子とスーラ様
「兄上、怪我はございませんか?最上といいましたね。もうしわけないのですが兄上をこちらの馬車に運んでいただきたい。報酬は宮殿にて支払います。あなたも馬車に。」
顔が整った、10歳程度であろう白髪の女の子が言う。紫色の半透明なリボンで長い髪をポニーテールにしている。逆光でやけに大人びて見えるその顔は、眼だけが色がついたように紫色だった。肌は日焼けなどしたことがないように白く、透明感があった。
「ス-ラ、私にけがはないよ。最上さんは着地の時にうまく衝撃を吸収してくださった。馬車へは歩いていけます。最上様も宮殿に。あと、異世界救命特務係異能科の皆様もテレポートで宮殿に来るようにお伝えください。最上様には私からとある任務を依頼したい。」
ローザン王子が起き上がりながらその女の子に言った。女の子は隣にいたショートヘアの青髪のスーツを着た女に、馬車のドアを開くよう指で指示を出す。
「こちらライラ、宮殿に向かえと指示が出た。お前も同行するか?」
「俺は王子と馬車で宮殿に向かう。先に行ってくれ」
通信機から聞こえるライラの声に言葉を返した。
青髪スーツがローザン王子の鎧と剣を運び、俺の荷物を持とうとした。
「ミラ、人の荷物を運ぶときは本人に許可を取った方がいいよ。それと、荷物は見た感じ少量の工具と拳銃だろう。拳銃は特務科と王族と一部の兵士以外が持つとポリスアントが飛んでくる。申し訳ないが最上様、私は側近を前科持ちにしたくはないから荷物は自分で持ってくれるとうれしかな。」
少し微笑みを浮かべ、ローザン王子が言った。どうやら青髪スーツはミラというそうだ。俺は荷物をとり、肩にかける。ショルダーバックの中には、王子が言ったように拳銃と弾、そして工具が入っていた。
歩き出したローザン王子に俺は付いていく。青髪スーツの横を通ると、先ほどは失礼いたしましたと済ました声で言われ、一礼された。中身を教えなかった僕が悪いですよと笑いかけ、少し小走りで馬車に向かう。
馬車が走り出すと、王子と女の子が真剣な表情で言った。
「最上様、あなたに頼みがあります。」