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短編集  作者: 柚樹
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明晰夢

気が付くと、私は夢を見ていた。


目を開けて見えるのは、普段から使っている自室の天井で、自分はいつも寝ている布団に寝転んだままそれを見ている。

いつも寝起きに見る景色と何1つとして違いが思い当たらないはずなのに、不思議と今の私には、これが夢であるという確信があるのだ。

そっと手を伸ばし、枕元に置かれた携帯電話の画面を見て、今の時刻を確認する平日のいつもの起床時間が映っていた。

これが夢である事は確信しているので問題ないはずだが、万が一これが夢ではなかった場合はどうなるのか。

そんな事が頭に浮かんで、私は急いで身支度を済ませると、家を飛び出した。

不思議なもので、自室にいた時にはこれが夢であると確信していたというのに、家から離れるにつれて、これが夢だという確信が薄らいでいく。


これは夢か、現実か。


それを考えながら私は、普段通りの通勤ルートを歩いていく。

まずは、薔薇や桜やコスモスなど、花にに溢れる道を抜けて公園へ。

近道として通る公園には、元気に二足歩行で走る犬と、リードに引かれる飼い主が散歩をしていた。

公園を抜けて大通りに出ると、流行っているのか自分の頭を小脇に抱えた小学生達が私の横を走り抜けていく。

最寄りの駅に到着後、赤や青や緑などのカラフルなドレスを着た人々で混み合う電車に乗り込み、会社近くの駅まで揺られる。

つり革につかまり、ぼんやりと外を眺めると雲ひとつない青空を真っ直ぐに飛んでいく人が見えた。

混雑する電車に乗らなくても通勤出来る事が羨ましくて、自分が飛んでいるイメージをするが、残念ながら身体は浮かない。


あまりにも普段通り過ぎる道中の光景と、どんなに望んでも空が飛べない理不尽さから、私はようやくこれが夢では無い事を理解した。

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