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短編集  作者: 柚樹
8/30

歯車

気が付くと、私は歯車の前に立っていた。

いや、前というのは少し違う。

私は歯車達の中に立っていた。

前後左右、上下まで。

どこを見ても歯車ばかり。

私の周りには、いつくもの歯車が噛み合い回っているのだ。

色も、形も、大きさも、一つとして同じものがない歯車達。

それを私は、一際ゆっくりと回る歯車に乗りながら見つめていた。


回りはじめの0度。

目の前で、ひび割れた歯車が軋んだ音をたてながら回ってた。


回りはじめて90度。

目の前で、綺麗に噛み合っていたはずの歯車が大きくズレていった。


回りはじめて180度。

目の前で、小さな歯車達が歪んだ大きな歯車をムリして回していた。


回りはじめて270度。

目の前で、大きな歯車達に挟まれた小さな歯車が少しづつ潰されカケていった。


回りはじめて360度。

目の前で、最初に見たひび割れた歯車が小さな音をたてて砕ける。

突然歯車同士にぽっかりと空いた隙間。

歯車は動力を伝えるために噛み合い回っているのだ。

駆動部と繋がっていない方は、きっと止まってしまうだろう。

そう思って見つめるが、不思議な事にどちらの歯車も止まる事はなかった。

それどころか、元々ボロボロの歯車など無かったように綺麗に回りはじめてしまった。

私は理解する。

あの歯車は不要になったのだと。

全体が正しく回る為に壊れたのだろうと。


よく見ると、どんなに綺麗に回っているように見えても、全ての歯車が大なり小なり傷つきながら回っているのに気がついた。

全体が正しく回るように、全ての歯車がズレて、ムリして、カケながら回っている。

それを私は、一際ゆっくりと回る歯車に乗りながら見つめていた。

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