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鏡
気が付くと、私は鏡の前に立っていた。
私の背丈より大きな鏡。
豪華な縁取りをされたその鏡に映るのは、ぼんやりとした表情を浮かべる人間と、その背後に広がる真っ白な空間だけだった。
この人間はおそらく私だとはおもうのだが、はたして私はこんな顔だっただろうか?
不思議に思って首を傾げると、鏡の中の人間も同じように首を傾げる。
顔をぺたぺたと触ってみると、鏡の中の人間も同じように顔をぺたぺたと触っている。
今度は右手をあげて振ってみる。そうすると、鏡の中の人間も同じように右手をあげて振っている。
同じ動きをしているようだし、どうやらこれは私なのだろう。
そう納得して、そっと鏡に触れてみる。
すると、鏡の中の人間も同じように鏡に触れる。
何がおかしいのか、鏡の中の私は笑っていた。