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短編集  作者: 柚樹
3/30

バス

気が付くと、私はバスに乗っていた。

バスの一番後ろの席。そこに、私だけが座っている。

車内を見渡しても私以外の乗客はいない。

運転手くらいはいるだろうが、ここからでは仕切り板が邪魔で姿は見えなかった。


路面がきちんと舗装されていないのか、ガタガタと車体全体が揺れている。

快適とは程遠い揺れを感じながら、窓の外を見てみるが、窓から見えるのは青々と茂る木々のみ。それをぼんやりと見つめながら、このバスはどこに行くのだろうかと考えてみるが、分からない。

では、自分はどこに行きたいのだろうか。

思いだそうとするが分からない。

次はどこに止まるのかくらいは分かるだろうか。そう思って車両の前方にある表示機を見るが、そこには何の文字も表示されていなかった。

さて、これからどうするべきか。

何故かは分からないが、近くにある降車ボタンを押せば今すぐにでもバスは止まり、降車出来ると知っている。

行き先の分からぬバスなど今すぐにでも降りてしまえばいいと思う一方、特に行き先がないならば乗り続けていればいいじゃないかとも思うのだ。

窓の外をもう一度見と、先程より周囲の木々が増えた気がする。

もし、ここで降りた場合どうすれば良いのだろうかと考える。

近くに民家1つ無さそうな森の中。こんなところで降りても行き先など、決して自分には分からないだろう。どうせ、バスはいつかは止まるのだ。目的地が無いのならば、行き着く先まで乗っていても支障はない。もしかしたら、乗っているうちに興味を引かれる場所を通るかもしれない。そうすれば降りればいいではないか。

そこまで考えついて、私は停車ボタンに伸ばしかけた手を下ろす。


窓から見える景色は未だに変わらず、青々と茂る木々のままだった。

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