1
山崎は、今日も教室の隅の方で弁当を食べている。
少し焦げた卵焼きをきれいな箸の持ち方でつまみ、そのはじっこの方をもそもそと口にしている。
隣ではクラスのムードメーカー的存在の金成がまくしたてるように昨日のサッカー日本代表の話。中学の時から仲が良いらしい。クラスのHR委員を努める金成と「友達? なんですかそれ」とでも言いたげな奴がどうして馬が合うのかは不明だが、二人はずっと一緒に昼休みを過ごしている。
私は楽しげな(?)二人を見て、すぐにサンドウィッチを頬張る友人に向き直った。黙ってサラダスパゲッティのトマトをかじってから、私はもう一度友人の後方にいる山崎を見た。
やはり、昨日近所の子供たちと遊んでいた「元気のいい優しいお兄ちゃん」には見えない。
「……どしたのさ亜紀。意識が飛んじゃってるけど」
友人の声で我にかえった。しまった、さすがに怪しまれたらしい。
「ううん、何でもない」
そう返したが、亜紀が何でもないっていうことは何かあるのね、とすぐに見透かされてしまう。嘘をつくのは、苦手なのだ。
どーしたんかねえ。友人が私の視線を追おうとするので、慌てて目線を下げた。が、間に合わない。小さく声をあげた友人の方を悪戯がばれた子供のようにそうっと見ると、見事に山崎彼女のと視線がぶつかっていた。すぐに私に向き直る。興味と驚き、真剣さの混じった表情で、まさか、と言った。
慌てて横に首を大きく振り、否定する。
「違う違う違う。勘違いしてるって」
怪しいなあ、と言う友人に、私は慌てて笑顔を浮かべ、首をふる。