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14. 体育祭準備②




 数分後、なんとか体育館の前までたどり着いた。だけど、この体育館がまた無駄に広いし、部活してる人で溢れかえってるからむやみに走り回って探したら時間がかかり過ぎてしまう。

 そうと決まれば聞き込みだ!ちょうど体育館から校舎の方に歩いてきている2人組の先輩に聞いてみよう!



「すっ、ぜーぜー……まっ、ぜーぜー……みまっ、ぜーぜー……」

「ん?うちの学園留学生とかいたっけ?」

「さぁ?それ以前に、こんな言語聞いたことないけど」



 当たり前です。ちゃんとこの国の母国語しゃべっていまるんですから。ただ全速力でここまで走り過ぎて息が上がって言葉が続かないだけです。

 てか、どこをどう見たって、私の外見はこの国の超一般的外見でしょうよ!……なんてツッコミも今の状態じゃ言葉になってくれない。と、ともかく、息を整えて……。



「す、すみません!この辺で真白見ませんでしたか!?」

「あぁ、なんだ、普通に喋れんじゃん」

「顔色気色悪いし、まさか宇宙人!?とか考えちゃったよ」



 すみませんねぇ!気色悪くて!!!前もそうだったけど、全速力で走ると体調悪くなっちゃうくらい体力ないだけですよ!宇宙人ってなんじゃそりゃ!私はその辺によくいるただのモブキャラですよ!!

 くっ、話しかける相手を間違えたか……でもすぐ近くには他に人もいないし、この人たちに聞くしかないか。



「そ、それよりこの辺りで真白見ませんでした?」

「あぁ、そういえば体育館の裏に女子たちと歩いていくのを見たような……」

「ありがとうございます!」



 先輩の言葉が終わりきれないうちに体育館裏に向かう。最後まで聞いてたらまたわけわかんない会話に突入しちゃう恐れがいるからね……。

 全く、鈴木といいさっきの先輩たちと言い、なんか最近モブキャラ運悪いな。てか、モブキャラのくせになんか変なキャラ多すぎなんだよ。一体この世界はどうなってるっていうんだ!?

 

 なぁんて、文句を頭の中で繰り広げてたら、体育館裏に到着した。体育館裏のグラウンドに一番近い所に外の部活生が使える水場がある。その辺りに、制服姿の人集り。明らかに部活生じゃない。

 そっちの方に駆け寄ると、予想通り4人の女子に囲まれて体育館の壁に追い詰められた真白がいた。そして、そのうちの1人が手にしているのはホース。そのホースは女子たちの後ろにある水道につながれている。

 よくわかんないけど……真白に水ぶっかける気?それで何の意味が……って考えてる場合じゃない!!!


 


「真白!!」




 私が真白の前に立ちはだかるのが一瞬早かったみたいだ。



「ブフッ!」

「奈美!」


 

 おかげで、思いっきり顔から首にかけて水を浴びる羽目になった。水の勢いでメガネが微妙にずれる。一瞬よろけるけど、でもたかがホースから出てくる水だ。ホースの先を潰して勢いよく飛び出してはくるけど、ちょっと冷たいくらいでどうってことない。



「ちっ、また邪魔が入ったか」



 私が割り込んだことに気づいたホース女子は、ホースを下に向けながらこっちを睨んでくる。相変わらずぼうっとした虚ろな目をしてるけど、でも持ってるのはホース。最初に出会ったバッド女子に比べたら、全然怖くないもんね!



「花瓶やらボールやらの次は水攻めですか……。残念ながら、いくら水攻めしたってこの季節じゃ風邪ひいたりしないと思うけど?」

「………………」



 返ってきたのはハッとしたような表情と長い沈黙。

 その反応……つまり図星ってことですか。まさか水攻めしてるのって真白に風邪を引かせてぶっ倒れさせようと思ってるのか?とか適当なこと考えてたんだけど、まさか当たっちゃうなんて。

 てか、冬ならまだしも、初夏がすぐ目の前で衣替えが待ち遠し過ぎるこのポカポカ陽気の時にそれやっても、ただ気持ちいだけでしょうよ。実際、走った後で冷たい水浴びて気持ちよかったですよ!

 ……もしかして、《冥王》って結構頭弱いのか?



「やってみなくちゃ、わからん」



 おいおい、結構諦めが悪いというか、ポジティブ思考というか。でも、やってみても同じだと思うよ?

 まぁ、真白が濡れないことに越したことはないか。幸い、ホースから逃げるなら水道から離れればいいから簡単な話だ。



「真白、逃げよう!」

「させるか!」



 真白の手を取ってさっさと水道から遠ざかろうとしたら、ホース女子がホースを勢いよく引っ張った。てっきり蛇口からホースが抜けるとおもったら、どうやらホースはかなり長いらしく、今まで水道の底に隠れてた余ってた部分が地面に落ちる。

 これは、急いで体育館裏を抜け出さないと、逃げてる間に後ろから狙い撃ちされるかも。まぁ、ただの水だし、もうすでに濡れちゃってるからこれ以上濡れてもそう変わらないし。



「くらえ!!!」



 真白が濡れないように先に行かせて、私はホース女子の気でもひいとくか。私が濡れてあげればホース女子的には満足するだろうしな。



 なぁんて思いながら水が来るのを待ち構えててんだけど……。



「あれ?」

「な、何……?」



 さっきまで勢いよくホースから出た水が突然ちょろちょろとした勢いになった。……普通に考えると、ホースが蛇口から抜けちゃったってことだと思うんだけど……。




 そう思いながら水道の方に視線をやると、案の定、そこにはホースを蛇口から引き抜いた人物がいた。


 相変わらずジャラジャラという音が聞こえてきそうなほどアクセを満載につけた男子生徒。


 でたな、《暗殺者》。




「また、お前か……」



 ホース女子も《暗殺者》がホースを蛇口から引き抜いたのに気づいたらしい。口惜しそうに唇を噛み締めながらホースを投げ捨てる。

 表情だけ見てたらバッド女子に負けないくらいの迫力があるんだけど、今回の武器がホースっていうのがなんだかねぇ。気が抜けちゃうというか……まぁ、バッドなんか持った相手にうまいこと立ち回れないから、ホース相手でも文句はないんだけどさ。



「……行くぞ」



 ホース女子がそれだけ言うと、周りを取り巻いていた女子たちも黙って彼女について体育館裏の奥の方へと歩いて行った。




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