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13. 体育祭準備①




 真白の周りでは色々と起こって大変だけど、学園行事はそんなの御構い無しにやってくる。ただでさえ毎日毎日学園内を歩くのに気を配って気疲れしてるっていうのに、体育祭の時期がやってきてしまった。

 去年はひたすら敏腕副会長の指示に従っていればよかったが、その副会長はもういない。今年物資調達班となったのは3年のおっとりとした先輩。誰がこの人選したよ、と文句を言いたくなるほど、向いてない。いい先輩なんだけど、そのおおらかで細かいことを気にしない性格が、この仕事には向いていない。



「先輩、これについてなんですが……」

「それはまだ先でいいんじゃないかなぁ?」



 よくないです。去年は真っ先に決めた事項をその言葉1つで後回しにしようとするなんて、なんて恐ろしい先輩なんだ!



「いやぁ、平野さんがいるから、仕事がはかどって助かるよ」



 毎日毎日、体育祭に必要な道具をリストアップし駆け回っている私を見て、先輩はのほほんとそんなこと言う。その言葉に、私ははっとした。

 ……もしかしてこれって謀られたのか?去年、異様に私ばかりに色々と指示出してくるなーと思ってたけど、もしかして去年の副会長はこの状況を見越してたっていうのか!?後輩たちの仕事が捗るように1年前から手を打っていたなんて、さすが敏腕副会長と言われて卒業していった先輩だけある。それに巻き込まれちゃってる私は全然嬉しくないですけどね!



「おい、平野!」



 ぐあぁぁぁ!!!あ、あと1クラス分打ち込めば、赤組に必要なタスキの数が出たというのに……!話しかけられたせいで間違って電卓のリセット押しちゃったじゃないかーーー!!せ、せめてただの打ち間違いだったら1回戻ることができたのに、なんで、なんでよりによってリセットボタン……!無駄に金持ちな学園なんだから、電卓じゃなくてノートパソコンくらい用意してよ!表計算のソフト使った方がどんだけ楽だと思ってんの!?



「聞いてんのか!?」

「もう!なんなんだよー!こっちはほぼ1人で動いてるから大変なんだよ!」

「だったら他の奴に仕事振ればいいだろ?」

「班長でもなければただの平要員、しかも超絶ビビリな私がどうやって他のメンツに仕事振れと!?」

「あー……わかった、その辺は俺も手伝うから」


 え?マジで?そこ手伝ってくれるとほんっと助かるんですけど! 先輩はともかく後輩からも舐められまくってる私が「これやって」てお願いしても「あーん?」みたいな視線が返ってくるだけだけど、 《勇者》から言ってくれたらみんな従ってくれるに違いない!

 ふん、そういうことなら今私の仕事を邪魔したことは水に流してやろうじゃないか。《勇者》と仲良くて本当に良かった!



「それよりも、どうも真白が1人で体育館に向かったらしい」

「え!?」

「最近は何事もないし、人気のない場所にはいかないから大丈夫だって言ったから、一緒にいた奴はついていかなかったらしい」


 ちょ、このクソ忙しい時に、マジですか!!!確かに最近は前に比べたら真白に向かってものが飛来してくることも減ったけど、それでも心配は心配だ。攻撃の手を緩めて油断させておいて、隙を見せる機会をうかがってるに違いない!真白、思いっきりその罠にかかっちゃってるってことじゃん!


「真白と一緒にいたのって誰だったの?」

「鈴木って後輩だ」


 鈴木だとぉぉぉ!!?

 鈴木といえば、未だに私の名前を正確に覚えようとしないあの憎たらしい後輩か!?あの後輩、遠足の時一緒に真白のところまで言ったのに、いつの間にか逃げ去ってたからな!後で聞いたら他の人を呼びに行ったとか言ってたけど、絶対怖くて逃げただけだろうよ!

 もーーー……人の名前は間違えるは、女子2人が襲われてるところ放置して逃げるは、真白が狙われてるの多少は知ってるくせに1人で体育館行かせるとか、ちょっとはシャキッとしてくれよ!



「俺はこの後先生たちとの打ち合わせがあるから生徒会室離れられないし、馬場は校内動き回ってすぐには捕まりそうにない」

「わかった。私が急いで追いかけるよ」

「全速力以上の速さでいけよ」

「……君、全速力の意味わかってる?」

「いや、あんまり遅すぎるから、いつも手を抜いて走ってるのかと思ってたんだけど……やっぱ、違うのか?」



 おい、《勇者》!一刻も早く真白の所にたどり着かないといけないこの場面で、真顔でボケをかますんじゃない!てか、本人としては全く本気で聞いてきてるのがわかるあたり、私に喧嘩売ってるとしか思えないんですけど!

 言いたいことはいろいろありすぎるけど、ともかく今回は緊急事態だから聞かなかったことにしてやるよ!



 

 兎にも角にも、この鈍足が真白の所にたどり着くまで、どうか何も起こりませんように!




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