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4. 入学式




「春の暖かな日差しに包まれ、桜の花も満開に咲き誇っています。この佳き日に、聖亜細誕巫亜学園に入学できることを心から嬉しく思います」



 今年の学年代表である男子生徒の答辞を聞きながら1年前のことを思い出す。

 あの時は真白が学年代表って答辞が始まるまで知らなくて、すごくびっくりしたんだよね。入学式の前なんかにはなんかカッコつけちゃって決め台詞まで言っちゃってたのに、しょっぱなからゲームと全然展開違うんだもん。

 それにしても、この学園に入学してから丁度1年か。時間たつの早かったなー。




 なぁんて、ひたすら1人で感慨にふけっていたら、あっとう間に入学式は終わった。




 え?なんで2年の私が入学式に出席しているかって?それは生徒会メンバーだからです。入学式の準備とか受付とか、そういうのは生徒会のお仕事だったみたいですよ。んで、どうせ登校したなら先輩代表として入学式にも出席してけー、という学園側からの指示で入学式に出席しておりました。他の生徒は休みなのにわざわざ休日出勤させられるなんて、とほほすぎる。



 ま、確かめたいこともあったから、よかったちゃよかったんだけど。



「なんか、私たちの入学式の時のこと思い出して懐かしくなっちゃった」

「私もだよ。1年というのはあっという間に過ぎてしまうものだね」



 真白と《女騎士》も私と同様に去年のことを思い出してたみたいだ。2人ともすでに花びらが散ってしまって緑の葉っぱが見え始めた桜を見上げながら、しみじみと言ってみせる。


「なんでそんなしんみりしてんだよ。後2年あるんだし、思いっきり楽しめばいいだろう?」


 《勇者》め、なんて前向き発言。確かに半分以上残ってるとはいえ、色々振り返って感慨深くなることもあるんだよ。 


「ふふふ、武蔵野君はポジティブだね」

「うん、でも勇気君の言う通りかも。生徒会にも後輩が入ってくるし、去年以上にがんばろうね」

「おう」



 真白の言葉に満面の笑みで応じる《勇者》。うんうん、青春ーって感じだね。結構結構。その調子で恋の方も是非頑張っていただきたい。

 《魔王》は真白と同じクラスってとこで一歩リードしてるし、《王子》は最近姿を見せないけど真白をみればガンガン攻めてくるし、おまけに今日の入学式でもう1人攻略対象が入学してくる。

 ずばり、君の新学期の目標は真白と恋人同士になることだよ、《勇者》!



「平野、お前またロクでもないこと考えてんだろ?」

「失礼な。今学期の抱負について真剣に考えてただけだよ」

「素晴らしい心構えだね。目標を設定するで日々の生活に締まりが出てくる。武蔵野君も平野君を見習うべきだ」

「や、馬場……こいつが考えてる目標はそんなたいそうなもんじゃなくてだな……」

「うーん、奈美がそんな真面目に目標考えるとは思えないけど」


 こっちを見て苦笑する真白。かわいい。そんな真白になら何を言われたって私は構わない。だいたい当たってるし。

 が、《勇者》、お前にはそんな風に言われる筋合いはないぞ!

 文句の1つでも言ってやろうと、口を開きかけた時だった。



「きゃっ!」



 真白が高い声を上げる。どうやら誰かにぶつかっちゃったみたいだ。真白はふわふわしてるけどド天然って感じじゃないから、普段なら廊下で人にぶつかったりしない。今回も去年の入学式の時も《女騎士》にぶつかったのはゲームの主人公ゆえの性だろうね。


「真白、大丈夫か?」

「う、うん……ありがとう。あの、ぶつかっちゃってすみません」



 《勇者》に支えられながら真白はぶつかった相手に謝罪を述べる。それに反応して私もぶつかった相手の方へと視線をやる。 





 あ、やっぱり《暗殺者》だ。





 ……なんか、ゲームよりえらく派手な見た目だけど。ゲームでは真っ黒い長めの髪に光のないぼやぁっとした黒い瞳のつり目ってかんじだったんだけど……。この《暗殺者》は長めの黒髪っていうのは一緒なんだけど、パープルのメッシュが何本か入っている。髪からわずかに見える両耳にも3つずつピアスがついてて、いくつもの指輪と腕輪、おまけにベルト型のチョーカーまでつけて、なんかすごくジャラジャラしてる。

 うちの校則って進学高の割にはゆるい方だけど……これ、さすがに校則に引っかかるんじゃないか?


 てか、真白が謝ったっていうのに、《暗殺者》はただこっちをじーーーーーぃっと見て何も言わない。ゲームでは確かに無口なキャラだったけど、そっちだってぶつかったんだから、謝罪くらいしようよ。



「君、ぶつかっておいて、何か言うことはないのかい?」

「……すいません」



 《女騎士》の言葉に、やっと《暗殺者》はそれだけ言ったかと思うと、さっさと背を向けて歩き出してしまった。そんな彼の背を《勇者》が睨みつける。



「なんなんだ、あの態度は?」

「まぁ……見た目が見た目だし、あぁいう奴なんだろう」

「髪の色やアクセサリー類に関しては寛容な校則とはいえ、あれはやりすぎじゃないか?」

「きっと担任の先生が注意するよ」



 んー、無愛想に素っ気なく立ち去っていったところを見る限り、彼はゲーム通りの性格っぽいかな?なんかすっごいジャラジャラつけてるのは気になったけど。

 てか、《暗殺者》がつけてたアクセ、多分ほとんどグレーロードだ。あんだけジャラジャラつけてるのはあんま私の好みじゃないけど、でも《魔王》に張るぐらい似合ってたな。


 ともかく、これで《冥王》以外の攻略キャラと真白が出会ったことになる。ゲームで出会うのは入学式の日じゃなかったから今日は何も起きないかもと思ってたけど、多分、真白と《暗殺者》が同時に学園にいる1日目に起きるイベントとして起こったんだろうな。


 《暗殺者》は好感度は上がりやすいけど、学年が違うこともあって積極的にアプローチをかけないとイベントが起きないキャラだ。真白から《暗殺者》に絡んでいくとは思えないけど……果たして、この世界で彼はどんなふうに立ち回ってくるのか?

 《勇者》や《魔王》のようにすでに陥落済みでややこしやな四角関係、なんてことにならないことを願うばかりだ。是非ともひっそり、学園生活を楽しんでいただきたい。



 そんな願望を抱きながら、《暗殺者》が去って行った方に目を向ける。




「ん?」


「……」





 あれ?背中に向かって念を送るつもりだったのに……目があった?


 あ……おまけになんか、あからさまに睨まれたんですけど……。


 なんで?




現状整理。【今君】の攻略キャラは8人。

遭遇済:勇者、魔王、魔術師、吟遊詩人、暗殺者、王子、女騎士

未遭遇:冥王

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