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2. 生徒会新メンバー②




「改めまして、1年C組の馬場翔子だ。さっきも新生徒会長が言った通り、正確に生徒会メンバーになるのは来季が始まる1月からだが、少しでもみんなとの協力体制を強固なものとできるように、積極的に仲良くしていきたいと思っている。よろしく」



 うーん、出会った当初もかっこいいと思ったけど、やっぱりかっこいいな。長い髪の毛を高い位置で1つに結ってるんだけど、それをポニーテールという可愛い名称で呼ぶ気にはならないのはなぜだろう。

 どっちかというと侍っぽい雰囲気が出ているのは、間違いなく《女騎士》が醸し出す宝塚オーラのせいだよな。なんか、ゲームの《女騎士》より男らしさに磨きがかかっているような……。



「ほら、お前の番だぞ、平野」



 おっと、《女騎士》に見とれていて、自己紹介のターンが回ってきたことに気づかなかったらしい。隣の《勇者》に肘で突かれてようやく現実へと戻って来た。

 しかし、《勇者》よ。私がぼーっとしていたからって、「また変なこと考えてたんだろう」って決めつけるような目で見てくるのはやめてくれないか。今のは普通に《女騎士》の魅力に気をとられていたという、どっちかというと普通の女子の感覚でぼーっとしてたんだからな。いつも私が異次元のことを考えていると決めつけるんじゃない。



「君は、入学式の時、真白君と一緒にいた子だね?」

「はい。A組の平野奈美と申します」

「ははは、同じ学年なんだから、敬語を使うことはないよ。私のことは気軽に翔子と読んでくれ」


 むしろ”翔子様”と呼ばせてくれ、と心の中だけで叫んでおく。微笑んだ《女騎士》はまさに麗しの騎士様って感じだ。女子で言えば真白に毎日のようにときめいているが、このときめきはまた違った感じだ。新たな扉を開いちゃわないように気をつけないと……。


 

 あ、状況を説明するのが遅れたけど、今は全体の生徒会が終わって、1年のメンバーだけで改めて顔合わせをしているところだ。さっきも全体で自己紹介はしたんだけど、本当に名前を伝えたものだけの簡易なものだったので、新メンバーが入ってきた1年は改めて自己紹介の時間をとった。

 《女騎士》以外にも新たに生徒会に加わった1年は2人。特段特徴のない、ゲーム内で言えばモブと呼ばれるようなキャラの2人だった。

 生徒会なにのモブキャラが3人もいるって……大丈夫なのか?まぁ、真白と《勇者》が規格外のハイスペックで、多分2人と同じ前世組の《女騎士》も同程度のスペックと考えれば、モブすぎるモブキャラ3人でちょうどバランスは取れるのかもしれない。


 そんなことを考えていたら、モブキャラ2人の名前を聞きそこなって、自己紹介が終わってしまった。同じモブキャラなのに、なんか申し訳ない。後で真白にこっそり名前を確認しておこう。


 自己紹介が終わって、結局1年のメンバーもそれで解散ということになった。あくまで活動が始まるのは新学期からだし、新学期は生徒会が気張る行事はこれといってないしね。



「真白君とはゆっくりと話してみたいと思っていたから、同じ生徒会に入れて嬉しいよ」



 教室に帰る間、宣言通り《女騎士》は積極的に私たちに関わろうとしているのか、《勇者》と真白と4人で固まって教室に帰ることになった。

 ちなみにモブ2人は学園で男女それぞれに人気ナンバー1である真白と《勇者》に恐縮した様子でさっさと教室へ帰ってしまった。

 私も真白と同じ中学を卒業していなければ、きっとあんな感じで真白と《勇者》を高嶺の花と思い、話すことも憚っていただろう。気持ちはよく分かる。真白も《勇者》も分け隔てなく接してくれる人だし、私もこうしてなんとかなってるわけだから、君達も大丈夫だよー、と心の中でエールを送っておく。



「なんだ、真白と馬場は知り合いだったのか?」

「うん、入学式の時、少しだけ話したことがあったの」

「あの時は本当にすまなかったね。私としたことが、か弱い女性に体当たりをかましてしまうなんて」

「体当たりなんて、大げさだよ。ちょっとぶつかっただけだったし。私の方こそ、あの時は驚いて大きな声だしちゃって、ごめんね」

「とんでもない。君みたいな可愛いこと知り合えたんだから、私はあの時の出来事を幸運なことだと思っていたよ」



 う、うーん……なんか、見た目や雰囲気だけじゃなくて……セリフまでもが宝塚?《王子》ほどではないけど、《女勇者》もキラキラエフェクトのスキルを身につけているらしい。《勇者》も同じことを思っているのか、若干身を引いている感がある。


「馬場って、いつもそんな話し方なのか?」

「あぁ、そうだが。何かおかしいかい?」

「いや、女っぽくない喋り方だなと思って」

「兄が3人もいるからだろうな。家が道場をやっているというせいもあるかもしれない」

「道場?」

「うちは代々、天翔流てんしょうりゅうという300年続くと言われる剣術を受け継いでいるんだ。私も子供の頃からずっと父に教えを請いているし、女らしい生活は送ってこなかったな」


 その1つ結びがポニーテルに見えないのは、やっぱり剣士様だからか!妙に納得。


「へー。武術は一通りやったけど、剣道はかじった程度だったから、そんな歴史のある流派があるなんて知らなかった」

「興味があるならいつでもうちの道場に見学に来るといい」


 武術の話になったからか、先ほどまで引き気味だった《勇者》が前のめりで《女騎士》に話題を振っていく。相変わらず順応するの早いな。

 《勇者》と《女騎士》の武術談義に耳を傾けていたら、あっとう間に教室についてしまった。



 あれ?《女騎士》が前世の記憶を取り戻してるかどうか確かめてみようと思ったのに、私自己紹介以外何も話してないぞ!?


 こ、これはまずい……!!



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