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16. 文化祭2日目①




 文化祭1日目は特に大きな問題もなく終えることができた。個人的にはいろいろあったんだけども、まぁ、こっちも《魔術師》によるいびりと《王子》による威圧を受けたくらいで、致命傷になるダメージを受けたわけではないからよしとしよう。2日目も何事もなく過ぎ去ってくれるといいなー。

 なぁんて思っているんですけれども……。



「なんか、今日は外部の人が多くない?」

「そう言われてみれば……」

「あれじゃない?昨日真白さんのメイド服見た誰かがネットでその写真流して、お客さん増えちゃったとか」



 うん、大いにあり得る話だ。今日も相変わらずメイドカフェの行列整理に勤しむ代表と絹島さんの会話に、心の中で大きく頷く。あれだけ可愛いメイドさんと会って写真をとったとなれば、みんな自慢してくてたまらなくなるのは寧ろ自然な感情だろう。


「……柄が良くないのも混じってるな」

「何事も起こらないといいけどねぇ」


 ため息まじりに言った絹島さんの言葉にも、私は同意せざるをえない。柄が悪いと言ってもちょっとチャラチャラした不良っぽい高校生が混じっているくらいだから、大丈夫だとは思う。学園の中で騒ぎを起こす頭の弱い人間はいないはずだし……。



「おい、平野!」



 ん?今私を呼ぶ声がしたような……。



 あ、なんか壁に半身を隠しながら必死にこっちに手招きをしているあれは《勇者》様ではありませんか。



 絹島さんたちの様子を伺いながら、ばれないように近づいて《勇者》と一緒に、素早く壁に身を隠す。

 渡り廊下に続くその廊下は比較的人通りが少なかった。にも関わらず《勇者》はしきりに首を動かしてあたりを警戒している。その姿が燕尾服なもんだから、なんだか余計に怪しく見える。さしずめ隠密執事と言ったところか。


「どしたの?こんなところで執事さんがコソコソしちゃって?」

「お前……わかってて言ってんだろ?」

「まぁ、だいたい想像はつくけど。昨日は当番表無視してクラスに釘付けにされちゃって動けなかったから、今日は隙をついて逃げ出してきたんでしょ?真白のメイド服姿を見るために」

「……」


 うん、その顔は図星ということだよね。まぁ、真白もほぼ同じような状況だから簡単に想像はついたけど。

 とにもかくにも、目的が真白を見に来たということなら話は早い。


「最後尾はあっちだよ」

「……なんのためにお前を呼んだと思ってるんだ?」


 指をさしてわざわざ教えてあげたのに、返ってきたのは非常に不服そうな声と表情だった。人が親切に教えてやってるのに、なんてやつだ。


「残念だけど、君に順番抜かしさせてあげられるほどの権限を私が持ってるはずないでしょ」

「生徒会の好だろ!なんとかしてくれよ」

「なんとかって言われてもねぇ……」



「あ!平野こんなところにいた!」



 どうやって《勇者》のわがままをかわそうかと思っていると、代表が勢いよく廊下に飛び出してきた。どうやら職務をサボって《勇者》とだべっていたとばれてしまったらしい。


「あ、代表。ごめんごめん、別にサボってたわけじゃ……」

「そんなこと言いに来たんじゃないんだ!真白さんが大変だ!」

「え?」



「真白が大変って……どういうことだよ……?」



 一瞬では状況が飲み込めなかった私の後ろで、地を這うようなレベルの低さの声が問いかける。うん、さすが《勇者》。《聖女》の危険に大変敏感な様子だ。




 ひとまず、代表を睨みつけるのはやめてあげてくれるかな?


 じゃないと代表が怯えきっちゃって話が聞けないから、ね?




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