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6. ”あのエンド”について考えてみました。

7/1 改稿しました。内容が微妙に変わってます。

 




「ふー……」



 浴槽に浸かりながら長く息を吐く。やっぱりお風呂は熱々のお湯が一番だよね。41度以下じゃ満足できない体に仕上がっております。そんな私の体は今日も一応女の子のだ。さんざん真白さんにドキドキキュンキュンしてたからもしかして男の子になっちゃったかと思ってたのに。


 そんなどうでもいい思考をある程度終えた後、今日の真白さんとの会話を思い出す。驚きすぎて最後の方は会話にもなっていなかったが……。



 わかりやすいように結論から言おう。


 真白さんは《聖女》の生まれ変わりであるのは間違いない。 


 そして、なぜ彼女が《聖女》の生まれ変わりだと確定するに至ったか。


 それは、彼女が宝玉を持っていたからだ。


 それは完全に【今キミ】の設定と一致している。



 ゲームの中では、攻略対象と主人公はそれぞれのイメージカラーに合わせた宝玉を持っている。《聖女》である主人公は白い宝玉を持っていた。つまり、それを持っていた真白さんは《聖女》の生まれ変わりであり、【今キミ】の主人公ということになる。

 もちろんゲームでは主人公の女子生徒は無個性かされているので、固定の名前はなかったわけだが、どうやら私が今生きているこの世界は【今キミの主人公が固定化した世界】ということらしい。

 


「ん?するとゲームクリアしたら、私が元の世界に戻るってパターンもあるのか?」



 それはそれで楽しそうだけど、でも、ゲームクリアとかそういう話はゲームの主人公として生まれ変わった場合にされるものだよね?真白さんが攻略対象とくっついたら私が元の世界に戻るって……なんか意味不明だな。


 え?私が真白さんと争って、対象キャラを攻略すればクリアになるって?

 なーにをおっしゃいますか。年季の入ったこのオタクの私に、真白さんに勝てる算段が存在するとお思いですか?私の恋愛偏差値の低さを舐めんな。

 そりゃ、前世で大人の階段は上ってたとはいえ、モテなかったし恋愛上手では決してなかった。若くなったからって、そこをリベンジしようという気にはなれない。


 ちなみに、よくある悪役転生という可能性はゼロだ。なぜなら【今キミ】にはライバルキャラがいない。《聖女》様の独壇場だ。

 私がこの世界に転生したことでそのポジションが確立しちゃったって可能性はあるのか?それも考えられなくはないけど……。

 でも、ねぇ、私の名前は平野奈美だよ?



「”平”の”並”キャラなんて、《聖女》のライバルとしてどうなのよ」



 あぁ、自分で言ってて涙が……。両親につけてもらった名前なので文句はいいまい。しかし、知識とはなんと残酷なのだろう。成長するごとに周りの人間から名を名乗るたびにちょっと笑われていたあの感じの正体を知った10歳の私の心傷を誰に理解してもらえるというのだろうか!きらっきらな名前に負けてる奴よりかはよっぽどマシだけどな、けっ。


 あ、また脱線してた。修正修正。

 とにかく、今言えることはこの世界は【今キミ】の舞台となる学園が存在し、主人公である《聖女》の生まれ変わりがいる世界ってことだ。

 そして、真白さんの話によれば、この世界には【セント・ファンタジア】のファンタジー要素というのも、きちんと存在しているらしい。



 真白さんが夢で出会ったという《創造主》がまさにそれだよね。



 一応現代でも《創造主》みたいな神様を崇めた宗教が残ってるけど、《創造主》の存在は前世の世界でいうところの神様の類と同じ扱い、つまりいるかどうかわからないけど一部の人は本気で信じてる、程度の迷信めいたものでしかない。私だって今までその程度にしか考えてなかった。



 でも、それは違った。この世界に《創造主》が実在している。



 真白さんがあの宝玉を持ってたことが何よりの証だ。だいたい、”あの”真白さんが「夢で、創造主様の啓示を受けたの」なんて、言うはずがない。真白さんが私みたいな厨二病属性なわけないし、意味のわからない冗談をあんな場面で言う人でもない。

 なんでそう言い切るか、なんて聞かれたら自信ないんだけどさ。実際に対峙したフィーリングといいますか。《聖女》の生まれ変わりだって先入観もあるかもしれないけどね。


 ともかく、真白さんは《聖女》の生まれ変わりだってことと、《創造主》はこの世界に実在してるってことが、真白さんと話したおかげでわかったわけだ。これは仮病を使った甲斐があったってもんだな。



「なんて、呑気に喜んでる場合じゃないよね……」



 思わず呟いた言葉が風呂場にこだまする。

 昨日、私はこの世界がゲームの世界であろうとなかろうと、一生懸命生きて行くだけだって、そう思ってた。今実際に呼吸して、息を止めれば苦しいわけだし、多分心臓に包丁を突き立てられたら死んでしまう。それくらい前世で生きていたのと同じように”生きてる”ことを感じられるからだ。

 

 一方で、1つだけ気になってたこともあった。それはこの世界に前世の世界とは違うファンタジー要素、具体的には魔法なんてものが存在するかどうかってことだ。

 そして、その答えは出た。答えは”イエス”だ。《創造主》が存在するのだからここは間違いなく魔法なる類のものが存在する世界である。

 



 と、いうことは、”あのエンド”が再現される可能性があるということだ。




 それは、ちょっと……いやかなり不味い。ファンタジーで魔法を使える世界なんて、オタクの私なら両手を挙げて喜びたいところなんでけど、それが【今キミ】の世界だというなら諸手を挙げて喜ぶ気にはなれない。

 だって、”あのエンド”はやばすぎる。誰にとってやばいかって?



 少なくとも、この星に住む全ての生物にとって。



 もしかしたら全宇宙にまで影響を及ぼすのかもしれんが、そこまでは私にもわからん。”ヤツ”なら宇宙を手中に収めようなんてことも考えそうではなるが……。

 その”ヤツ”とは一体誰なのかって?



「《冥王》様のことですよ」



 のぼせてきた。そろそろ上がろう。ちなみに髪や体は浴槽に浸かる前に洗っておいたのでご心配なく。



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