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7. 文化祭準備①




 やっと秋らしい気候になってきたかなぁ、と感じられるようになってきた頃、学園内は文化祭準備期間へと突入した。

 前世の頃からこういった学校行事ではクラスのみんなの反感を買わない程度に傍観していた私なんだけど、生徒会に入ってるとそういうわけにもいかない。文化祭準備期間に入る前から、準備期間中や当日の行程を話し合ったり、それを学級代表に伝えたり、ともかくやることは山ほどあった。

 何度でも言っとくが、生徒会は決して安請け合いで入るようなものじゃなかった。



「平野さんは体育祭の時もよく働いてくれたら、今回も物資調達班をお願いね」



 メガネをかけた清楚系敏腕副会長に名指しをされてしまえば、平要員である私が断れるはずもない。前世では立派な社畜として働いていた私だ。この文化祭でも余すことなく雑用係としての本領を発揮してやろうじゃないか!



「真白たちのクラスは何するんだ?」



 放課後、生徒会を中心とした文化祭運営委員会の役割分担会議が終わって、靴箱を目指していると《勇者》がそんなことを尋ねてきた。文化祭運営委員会の体制が整ったところで、いよいよクラスごとの出し物を決める段階となったから、そんな話を始めたのだろう。私としては生徒会のことで手一杯でクラスのことなんか気にしてる余裕は皆無だけどね。


「うーん、みんな色々話してるけど、カフェって案が一番多い気がする」

「一番無難だよな。準備もそんなに大変じゃないし」

「勇気君のクラスはどう?」

「クラスにオカルトマニアがいるからお化け屋敷って案が出てるけど、文化祭でできることって言っても限られてるだろ?微妙な感じになるならやめたほうがいいんじゃないかって意見も出てるんだよなー」


 確かに、所詮高校生が考えて準備できるお化け屋敷なんてタカが知れてる。前世の時もそれっぽいものを出し物に選んでいたクラスはあったが、もちろん全然怖くなかったというか、なんか虚しさすら感じたのを覚えてる。おばけ全般がダメな私にそんな思いをさせるんだから、ある意味なかなかの出来だったと言えるだろう。



「確かに難しそうだけど、この間のキャンプの肝試しを参考にしたら面白くなるんじゃない?」



 ま、真白さん……。お願いだからその時の話はしないでください。せっかく忘れかけてた腹黒《王子》の記憶が蘇ってきてしまう……。

 文化祭は一般の人も学校に自由に出入りできるようになるから、《王子》も絶対やってくるだろうなとビクビクしてるんだ。あの時は調子に乗って『じょうとうだ!』なんて啖呵きっちゃんたんだけどさ、もちろん私があんな怖い人にかなうわけはないんだよね、えぇ。



「平野はなんか面白い案ないのか?いつも変なことばっか考えてるんだから、こんな時ぐらい活かせよ」

「私のアイディアに賛同してくれる人がいたら考えるけど、そんな人いないって分かりきってるから言わない」

「……どんだけ変なこと考えてんだよ」


 ふん、貴様なんかには理解できまい。だから語ってやる必要もないんだよ!


「ともかく、スムーズに出し物が決まってくれたらいいよね。そこで躓いちゃうと先に進まなくて、後が大変になるって生徒会長も言ってたし」

「そうだな」


 うん、出し物が決まらないと必要なものもわからなくなって、ギリギリになって無茶振りで色々揃えろとか言われたら、ほんっと面倒だからやめてくれ。

 基本的に必要なものは学級代表がまとめて物資調達班まで報告して、どんなものにいくらくらいお金をかけたか管理するんだけど、大掛かりなものやまとめ買いできるものは生徒会経由で購入することになってる。つまり、直接的にこの私にしわ寄せが来るということなのだ。そんなのご勘弁願いたい。



「ま、うちのクラスはもう決まったようなもんだから、心配はいらないと思うけどね」

「え?そうなの?」

「なんで平野が知ってて真白が知らないんだよ?」



 真白が不思議そうに首を傾げて、《勇者》は怪訝そうに私を見てくる。うちのクラスの出し物がほぼ全校生徒一致で決定していることを知らないのは、多分この2人くらいだろうな。



「まぁ、明日になればわかるよ」



 はてなマークを飛ばしている2人にあえて曖昧に答えてさっさと靴箱を目指す。後ろから《勇者》と真白が答えをせがんでくるが、頑として答えない。

 だって、ここで私が教えちゃったら全校生徒の約半分、特にほとんどの男子生徒を敵に回すことになるのだから。《冥王》の野望は打ち砕きたいが、青春真っ盛りの男子高校生の野望を打ち砕く気はない。



 なぜって、彼らの野望は私の野望でもあるのだから。


 やっぱさ、みんなにとって夢なんだよ。


 メイド服っていうのはさ。




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