5. 確定しました。
7/1 改稿しました。内容が微妙に変わってます。
「あのー、ちなみにどの学校か聞いてもいいかな?」
「うん、聖亜細誕巫亜学園だよ」
キターーーーーーーーーーーーー!あれ?古かったかな。いやうん、なにはともあれ本当にキちゃいましたよ。まさかの展開。これひょっとするとひょっとするんじゃないですか、奥さん!?心の中で叫んでいる私のことなどつゆ知らず「変な名前だよね」と笑っている真白さん。うん、可愛い。
「私も興味あって見てたんだ」
興味あったのは違う意味でだけど、ここは話を合わせとかないとね。なんて思ってたんだけど、真白さんは私が想像した以上に嬉しそうな顔をした。
「本当に?よかった。この学校すごくいい学校だと思うの。みんな名前が変だってバカにしてるけど、大事なのはどんなことが勉強できるかだと思わない?」
これぞ模範解答。不真面目学生の私には耳が痛いお言葉でございます。そんなヒリヒリする耳を気にしながら曖昧な笑みで頷いておく。この笑顔を前に嘘でも「そうだね!」なんて言ったら私の良心が崩壊してしまいそう。すごいな真白さん。きっと何人たりともあなたの前では嘘をつけないと思う。あ、私仮病使ったんだった。
そんなことはどうでもいいとして、真白さんの言い分を聞く限り、これはもうかなり学園について調べ終わっていて、受験するのは確定していると言った様子だ。真白さんのことだからカリキュラムが気に入ったとか、素晴らしい先生がいるからという真面目な理由だろう。まぁ、想像は想像だから、一応理由も聞いておくか。
「なんで真白さんはその学園に行きたいの?」
すると、真白さんはちょっと表情を硬くした。キョロキョロと辺りを見渡して誰もいないことを確認している。お、これはなんか面白そうな答えが聞けそうだ。「私の前世は《聖女》でね」なんて話が始まったら私はこの場で小躍りをし始める自信がある。もしや「好きな先輩がそこに進学してて……」というよくある恋する乙女パターンだろうか?ともかく真白さんの様子からしてただただ真面目なだけの答えじゃなさそうだ。興味津々で身を乗り出す。「実はね……」と勿体つける真白さん。焦らされるのも嫌いじゃないよ。
「夢で、創造主様の啓示を受けたの」
……えっとー。あ、わかった、聞き間違い?聞き間違いなのか?そうだよね、私が聞き間違っちゃんだよね。あ、「賞状主さんの提示を受けた」って言ったのかな?うん、意味わかんないけどそっちの方がまだ許容でき───。
「や、やっぱり変だよね。ごめんね!変なこと言って……」
あ、やってしまった。真っ赤な顔をしてうつむく真白さんを見ながら自分を叱咤する。
真白さんは意を決してそのことを話してくれたことは仕草を見れば簡単に分かることなのに、あまりの衝撃にそれを失念していた。多分、真白さんは私がそっち系の人間だとちゃんと知ってて、だからこの話をしても大丈夫と判断してくれたのだろう。いや、期待に応えられなくて不甲斐ない。このままでは魂に刻まれたオタクの名が廃る。私はすぐにこの挽回しにかかった。
「あ、ごめんごめん。ちょっとびっくりしただけだよ。創造主様の啓示かぁ。なんて言われたの?」
嘘なんて疑ってはいけない、ましてや「真白さんがそんなこと言うなんて」的なことは絶対禁句だ。ツッコミどころは満載だけどあえて突っ込まない。ここは女神と呼ばれるほどの真白さんだから創造主様から啓示を受けるのも納得できるなぁ、くらいに思っとく。女神である真白さんにはなんでもありだ、最強なのだ。
しかし予想していた「前世が《聖女》なの」よりも衝撃発言だった。普通じゃない答えがくるって構えてはいたけど多分、真白さんからそんなセリフが出てくるわけないと根本的には思ってたから、やっぱり驚いていたのかもしれないけど……、”創造主様の啓示”ねぇ……。うん、ちょっと信じられん。
心の中ではそんなことを思っていた物の、表にはそれを全く出さないように努めた。罰が悪そうに顔を下げていた真白さんはおずおずと顔を上げて不安そうにこちらを見ている。上目づかいが可愛すぎます。
「ほ、本当に変だと思わない?」
「思わないよ。私も似たような……ちょっと違うけど、体験したことあるし」
「え?」
「実は私、最近前世の記憶を取り戻しちゃってね……」
「平野さんもなの!?」
「え?」
すごい勢いで立ち上がった真白さんの顔を見上げる。「ちょっと驚いただけで、真白さんのことを変なこと言う人だなんて露ほども思ってませんよ」という態度に信憑性を持たせようと、昨日うっかり前世のことを思い出してまったことをコミカルに話してみようかと思っていたのに、予想をはるかに上回る食いつきで焦る。
言っておくが、食いついてくる真白さんも、もちろん可愛い。
「すごい!創造主様の言った通りだ!!」
「えっとー、真白さん?」
「実はね、夢で創造主様に会ったときにこの宝玉ももらったの!」
そう言って勢いよく制服の首のところに手を突っ込んでなにやら引き出してきた真白さん。なかなかエロい動作だったな、なんて思っている余裕は残念ながらなかった。
目の前に出されたのは紐をくくりつけられて、縦に細長い3センチくらいの石。
それは白かった。透明感はあるものの、石の中心は混じりっけのない真白。まさに真白さんを表すかのような色だ。
真白さんが”宝玉”と呼んだそれを見つめて、私の思考は停止する。
「それで、前世で出会った仲間たちとあの学園で会えるって。きっとそこで素敵な再会を果たすって言ってくださったの!」
「……」
「まさか学園に入る前にその1人に会えるなんて嬉しい!」
「……」
「ねぇ、平野さんも宝玉をもらったの?」
「……」
「平野さん?」
「……は、ははは」
「?」
うん、いろいろ説明したいことはあるんだけどさ。
とりあえず、真白清華。
【今キミ】の主人公、もとい《聖女》の生まれ変わり、確定。