2. 図書館①
「うわっ、思ったより人いるね……」
「うん。あの窓際の席に座ろっか」
小声でそんな会話をしながら空いている席を目指す。放課後の図書館はは初めてきたが、結構席が埋まっていた。これだけ人がいる理由は明白。
この季節、放課後エアコンが効いているのはこの教室だけなのだ。
来月になれば普通の教室でも放課後エアコンが解禁になるらしいが、今は授業中先生の判断で使用可能、という段階。私はあまりエアコンは好きじゃないけど、こうジメジメしてるとそうも言っていられない。勉強に集中するために、寒すぎたときのためにカーディガンを持って、こうして図書館にやって来たというわけだ。
「結構寒いね。奈美に言われた通り、上着もってきてよかった」
「うん、ちょっと効きすぎかも」
今の時期からこんなガンガンエアコン使って、真夏は一体どうするつもりなんだろうと疑問になる。って、今はそんなことより勉強勉強。早速カバンの中から今日やろうと思っていた外国語の教科書とノートを出して復習に取りかかろうとする。
「あ、私一冊借りたい本があったから、先にそれ借りてくるね」
小声でそういった真白は席を立つ。私も漫画やラノベ以外の読書も結構する方だが、真白もかなり本を読む。あれだけ成績が良くて嗜好として本も読んでいるっていうんだから、もう頭の成り立ちから違うんだろうなと思うしかない。羨ましい限りだ。
そして、真白が読む本は面白いのが多い。たまに小難しいやつとかもあるけど、外国で出版された本とかはいつも真白からおすすめしてもらってる。
今日のもおもしろかったら後で教えてもらう、なんて思って教科書を開いたときだった。
「きゃっ!」
え?真白の声??
静まりかえった図書館に響いた真白の短い叫び声に、私もおもわずガタリと音を立てて立ち上がってしまう。何事かと、みんなの視線が真白がいるであろう本棚のほうに向けられている。
なぁぁぁぁんか、……嫌な予感がする。
小走りで、本棚に近寄る。すぐに真白の後ろ姿を見つける。真白は並んだ本棚の間にいた。そこにいたのは真白だけじゃなかった。冬服を着た男子生徒が真白の正面に立っている。
あ、《魔術師》だ。
って、えぇぇぇぇえぇぇぇぇえぇ!!!なんでぇぇぇぇ!?
「あんた、こんなところで突っ立って何やってんの?」
「あ、いえ……そこの本を取ろうと」
「僕がいるのにとれるわけないでしょ?少し待つとか、僕に声かけるとか考え付かないわけ?」
「す、すみません……」
「次から気をつけてよね」
なっ!真白に対してなんて口の効き方するんだこいつ!って憤慨していた私の前に《魔術師》がやってきた。
「そこ、邪魔だからどいてくんない?」
んだとー!!!?てか、《魔術師》なんでそんな嫌味な性格になってんの!?あんた、ゲームではメガネかけた典型的な奥手男子だったでしょうが!ちょっとおかしな発言は多かったけど、決してそんな人を見下すようなキャラじゃ……。
「……あんたの聴覚、ちゃんと機能してる?」
しとるわー!てか、なんで衣替えしたのにお前が出てくんだ!?メガネすらかけてないのはどういこと!?文句言いたいのはこっちだっつーの!!!
「な、奈美、私は大丈夫だから」
「そういう問題じゃなくてっ!」
「僕、忙しいんだよね。あんたみたいな脳みその使い方間違ってるやつに、かまってる暇ないの。じゃあね」
……脳内読まれた!?こいつも《勇者》と同じく特殊能力持ちだというのか!?てかてかてか!本当になんなのその態度はー!!!なんでお前が出てきたんだー!
真白が着てるのは夏服なのに、なんでなんだーーーー!!!