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1. 衣替え




 カーテンを開けると今日も雨が降っていた。やれやれ、今日もか。体育祭が終わった途端、雨の時期がやってきた。私の誕生日はこの月にあるのだが、私はこの季節が大っ嫌いだ。雨が降ってるくせに暑い。晴れてもジメジメする。ジメジメしているのは性格だけで十分だっていうのに。あー、早くこの時期が終わらな いかな。

 こんな感じで、私のテンションは非常に低かった。おかげで無駄思考もちょっと勢いが落ちている。うーん、本当にこの季節は苦手。


 そうさせている理由は他にもあったりする。それは月末にやってくるテストのことだ。真面目に勉強はしてるものの、やっぱりこの学園の授業のレベルは高く、ヒィヒィ言いながらついていってるのが現状だ。課題も真白に手伝ってもらってなんとかこなせているといった感じ。

 こんな状態でテストを受け、赤点をとれば準特待生は普通の一般生に降格し、奨学金の補助が受けられなくなってしまう。そうなったら、私は学費が払えなくなるから最悪他の高校に編入しないといけなくなるかもしれないのだ。


 それだけは是非とも避けたい。《冥王》は今のところ現れてないし、”滅亡エンド”なんて私の考えすぎだとは思うんだけど、《冥王》のことを抜きにして学校を変えるのは嫌だった。


 前世の学生生活と比べても、今世での学園生活はとても楽しい。それも一重に真白がいてくれるからだし、大変だったけど生徒会の仕事もやり終わった後の達成感はなんとも言えなかった。前世ではそういう”達成感”という物を感じる機会が少なかった私には新鮮で心地のいいものだった。清々しいとも言えるかもしれない。また頑張ろうという気にさせてくれるのだから、不思議な物だ。



 ……ま、生徒会っていう名目があれば大学受験にも有利になるしな。あ、本音が。



 そんなちょっと意地汚い思惑もあるけど、最近は《勇者》とも打ち解けてきたから、本当楽しくなってきたんだ!こんな素敵な学生生活、絶対他じゃ送れない!意地でも準特待生を維持せねば!!!


 テスト週間に入るのはまだまだ先だが、来週からは真白と一緒に放課後残って図書館で勉強して帰る約束をしている。これでテスト対策はばっちりなはずだ!

 ……え?勉強する気があるなら今日から頑張れって。もちろん、私だって出来ることならそうしたい。しかし、今放課後の図書館に真白と行く分けにはいかないのだ。



 あそこは《魔術師》との出会いイベントの場所だから。



 じゃあ、なんで来週ならいいかって?



 ふっふっふ……それはね、来週から”衣替え週間”が始まるからさ!





 ■ □ ■





 次の週になりました。



「おはよう、奈美」



 か、かわいいいいいいいいいぃぃ!!



「おはよう、真白。夏服似合ってるね」



 興奮を心の中に押し込めながら普通の挨拶を返す。これ、真白と付き合うようになってから発現した私のスキルだ。しかし、今日はさすがの私もついつい口元を緩めてしまいそうになる。なぜって!?



 真白の夏服姿が可愛すぎるからです。



 うちの学園の夏服は白いワンピース型と結構珍しいタイプだ。これ、結構着こなすの難しい。夏服を作るためにお店で試着させてもらったのだが、これ、お腹が出てたらすごく目立つはず。幸い私は今世では細すぎる太すぎずという超平凡体系なので、悲惨なことにはなっていなかったが、前世の私がこんなの着てたら完全に妊婦扱いだ。今世の体が平凡であったことを私は心の底から感謝した。



 そんなちょっとくせのある制服を、真白は完璧に着こなしていた。



 特に、腰のラインが素晴らしい。ついついきゅっと抱きつきたくなるラインだ。さっきから男子も鼻の下を伸ばして真白の方を見てくる。うんうん、気持ちはわかる。可愛いもんな!白っていうのがまた真白にぴったりだ。まさに聖女って感じ。こりゃ《勇者》が見たら喜ぶだろうなー。



「ありがとう。奈美も似合ってるよ」



 うん、ありがとう。でもわかっている。私はやっぱり制服に着られてる感が抜けきれない。これが抜け切れる頃にはまた冬服の時期が巡ってきているであろう。とほほ。



「それより、なんで1日目から夏服にしようと思ったの?なんか、すごい気合い入ってた感じしたけど……」


「真白の夏服姿が早く見たかったんだよ」


「またそんな適当なこといってー」



 いやいや、真白さん。これ正真正銘の本心ですよ?まぁ、他の思惑があったのは確かだけれども、私の真白さんへの愛を侮ってもらっては困りますよ。



「それより、今日放課後図書館大丈夫?」

「うん、もちろん。テスト、いい点取れるようにがんばろうね」



 ひとまず私は赤点にならないように頑張ります。低い目標。でもいいんだ!この学園に残留することがまずは最低ラインなんだから!……こんな調子で大学受験大丈夫かな?今からすごく心配だ。


 いや、きっと真白と勉強を頑張っていたらそのうち軌道に乗るはずだ!最近入学した頃よりかは勉強のコツがつかめてきたし、ノートの取り方のデフォルメも出来上がった。この調子で頑張ればきっと大丈夫!多分!



 ……ひとまず、今日は放課後真白との図書館初デートを目指して授業を頑張るとしよう。



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