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8. 保健室①




 昼休みの騒動はあっという間に学園中に広がったらしい。休み時間のたびに、廊下から教室をチラチラと伺う視線が絶えなかった。なんと、先輩たち(リボンの色が違うのでわかる)まで真白を観察しにやってきていた。男女比率は五分五分。多分、真白のことが気になってた男の先輩と《勇者》のことが気になってた 女の先輩がやってきたからこうなったのだろう。きっと《勇者》のクラスの前も同じ状況だったに違いない。


 同じクラスの子で《勇者》と同じ中学だったという子を発見したので事情を聞けば、予想した通り、彼は真白に張るくらいの人気者らしい。もちろん、ほとんど女子かららしいが、人当たりも良く、分け隔てなく人に接するので男子からも人気なんだとか。


 うん、絶対にその中に《勇者》に恋心を抱いている男子が1人はいる。今日の手持ち全部賭けてもいいくらい自信がある!

 その少年には大変申し訳ないが、私は真白と《勇者》が急接近するお膳立てをしてしまった。許してくれ少年。素敵な王子様が君の目の前に現れることを私は切に願うよ。



 なーんて、戯言はこれくらいにしときましょうかね。私にはちょっとやらないといけないことがあるのだから。



「真白、私ちょっと行きたいとこあるから先帰ってて」

「あ、私も今日も生徒会室に行こうと思ってたから。まさかこんなに早くもう1人が見つかると思ってなかったから昨日散々先輩に弱音吐いちゃったんだよね。変に心配させちゃったから報告も兼ねて謝ってくるよ」

「てか、ごめんね。私1人で勝手に決めちゃって」

「ううん。武蔵野くんいい人みたいだし、私も困ってたから奈美がいい人見つけてくれて本当よかったよ」



 あ、うん。喜んでもらえて嬉しいんだけど……どうか私が見つけてきたということはご内密に願いたい。じゃないと、色々と怖いことが起きそうで……。ど、どっかに《勇者》ファンクラブの密偵が隠れてたりしないよな!?大丈夫だよな!?



 ビクビクしながら周りを見渡していると「どうしたの?」と真白がキョトンと、可愛い顔を見せてくる。うん、真白さんは周りの様子に全くお気づきでいないご様子だ。これぞ女神の貫禄なのか。中学の頃から注目されすぎてもう慣れちゃってるのかもしれないな。

 私は永久に慣れる気がしないんだけど……生徒会にも入るし、おまけに《勇者》まで引き入れちゃったし、飛び火で注目される道からは逃れられないんだろうな。誰か私に気配、いや存在を消す術を伝授してください!今、今すぐ!なぅ!!ぷりーーーーず!




 ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎




 1人脳内遊びを堪能した後、私は真白と別れて1人、目的の場所に向かっていた。その場所とは、ズバリ。



「保健室だ!」



 誰もいないことをいいことに叫びながら扉の上に設置してあるプレートを指差す。誰かに見られてたら一発で病持ちなのがバレるな。誰もいなくてよかったよか────



「こらー、保健室の前で騒いじゃダメよ?」



 あ、そりゃ廊下に誰もいなくても、中にはいらっしゃいますよね。なんせここは保健室なんだから、そこには保健医がいらっしゃいますよね。……今の聞かれてたよな?あー、恥ずかし。廊下に穴を開けていいなら、今すぐここに自分の墓場を作りたい。



 なんて、そんなこと考えてる場合じゃない!敵視視察に来たんだからしっかりしなきゃ!



「あの、ちょっと気分が悪いので休ませて欲しいんですけど……」

「……あなた、今思いっきり元気よく叫んでたわよね?」


 あ、しまった。



「そ、それは、気分が悪くて気持ちが昂ぶってたんです!」



 我ながらわけわからんいいわけだ。案の定、保健室から出てきた白衣をきた女の人も呆然と私を見て……。



「あら、あなた電波系?そういうことなら大歓迎よ」



 あれ?歓迎された。よくわからないが、こうして私は敵地への侵入へと成功したのである。

 や、てか待てよ。敵地とか言ってるけど、保健医さん、思いっきり女の人じゃん。でも、よくよく考えれば《冥王》が降臨する前は確かに前任者がいるはずだから、この人がその人ってことか。ん?こそあどばっかでよくわからんくなってきたな。



「入らないの?お茶くらい出してあげるわよ」


「あ、入ります」



 お茶まで出してくれるのか。そういうことなら喜んでたまに利用させてもらおう。……いや、真白が近づいたら困るからダメか。多分私が保健室にいるの知ったら心配して確実に来てくれるだろうしな。真白は半分どころか、全てが優しさでできてますから。

 そんなことを考えながら、私はやっとこそさ保健室へと足を踏み入れた。



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