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16. 体育祭②




 開けてびっくり玉手箱。……あれ、ネタが古すぎ?それ以前の問題??驚きの気持ちを表現したいなと思ったらとっさに出てきた言葉だったんだけど、イマイチ今の驚きを表しきれてない気がする。誰も聞いてないから別にいいんだけさ。



 結局のところ何が言いたかと言いますとね、体育倉庫を開けた途端、何もかもがヒッチャカメッチャカだったってことですよ。



 もともと手前にあるはずのボール籠は一番奥にいっちゃってるわ、跳び箱の向きは揃ってないわ。それでも十分ひどいっていうのに、綱引きのロープなんか綺麗に置こうとした誠意が全く伝わってこない置き方だ。ここが体育倉庫でなかったら、あのロープは捨てられていると確実に判断されてしまうような、絶対に放り投げただけだろう!って感じで床に横たわってる。

 哀れ、綱引きのロープ。両側から反対方向に散々引っ張られた挙句、こうして打ち捨てられるなんて……。綱引きのロープを何だと思ってるんだ!!


 ……って、綱引きのロープにガチで感情移入してる場合じゃないわ。なんかかっこつけて先に帰っていいよ、とか《勇者》に言っちゃったけど、これ元に戻すの結構時間かかるし。見なかったことにして帰りたいところだけれども、任せて的なことを豪語しちゃったし、放置して帰るのは忍びない……。

 仕方ない。ひとまずいけそうなところまで片付けて、暗くなる前に切り付けて帰ろう。次の登校日に朝一で事情を話して、その後片付けを終わらせれば先生たちも許してくれるだろうし。お小言の一つや二つや三つや四つは降ってくるだろうけど、それくらい耐えてみせようじゃないか。

 ともかく、少しでも片付けられるようにちゃっちゃと働こう。まずはやっぱり、この無残に打ち捨てられた哀れな綱引きのロープから……。


 


 バタンッ!!!



「え……?」



 なんか、今すごい音が背後からしたんですけど。とっさに振り返ると、私が入ってきて、そして開けっ放しにしておいた体育倉庫の扉が隙間なくピシャリとしまっている。あー、今のは扉が閉まった音だったんですね。



 ガチャン!!!



 そして、続いては鍵の閉まる音…………。



「は!!?」



 冷静に現場中継を頭の中で繰り広げてる場合じゃなかったよ!!今のが本当に鍵の閉まる音だったとしたら……それってつまり……。

 いや、まだ決めつけるのは早いぞ。人間はすぐに先入観と思い込みで物事を決めつけがちだ。しかし、事実っていうのは実際には色々な側面を持っているものであるからしてですね、ただただ風で扉が閉まって、その衝撃で鍵が揺れて音がしただけかもしれないじゃないか!!

 ……なんて、一縷の淡い望みをかけて思いっきり扉を動かしてみたんですけども。ピクリとも扉、動きませんでした。



 はい、閉じ込められたの確定。

 


「……まじかー」



 うん、さすがにため息でるわ。体の力抜けて、思わず地面に座り込んじゃったわ。お役目ゴメンになったからとはいえ、今まで溜まりまくってたヘイトが瞬時にゼロになるわけないし、今まで散々首突っ込んでたつけがチャラになるわけないとは思ってたけどねー。まさか体育倉庫に閉じ込められるとは思わなかったわ。

 それもこれもさ、私が鍵を扉に挿しっぱなしにしちゃってからなんですけれども、何故そんなことになってしまったかと言いますと、開けた途端に視界に飛び込んできたあまりにもヒッチャカメッチャカな倉庫の状況に驚き、綱引きのロープに感情移入してしまったからであって……。

 え、もしかして、ヒッチャカメッチャカだったのも全て計算だったというの?綱引きのロープを打ち捨てたのも、私がうっかり同情して鍵の存在忘れちゃうってことを予測してたってことなの!!?何て手強い敵なんだ……。


 って、関心してる場合じゃないわ。倉庫ってだけあって、鍵かけられた扉以外出入り口はない。窓はあるんだけど、格子がしてあって人が出入りできないようになってる。ってことで、自力で脱出は不可能だ。

 外に誰かいることを願って扉をドンドン叩いてみるけど反応なし。近くには誰もいないみたいだ。もうしばらくしたらまたやってみようと思うけど、学校の端っこの方だし人がたまたま通るのはあんまし期待できない。

 待ってたら誰か助けに来てくれるかなー……。生徒会の人たちはみんな帰っちゃっただろうし。夜になったらさすがに両親がおかしいと思って連絡してくれるはずだから、大丈夫だと思うけど。あー……こんなことなら《勇者》に先に帰っていいなんて言わなければよかったな。


 そうやって悔いてみたところで閉じ込められてしまった事実は変わらない。腹をくくって助けが来るのをおとなしく待とう。

 本来の私なら、閉じ込められたってだけで騒ぎたてるところだけど、崖から突き落とされるのに比べたら全然余裕だし。ここまでにあってきたひどい目に比べたら、閉じ込めプレイなんてへでもないわ。




 まぁ、数々の危ない状況をかいくぐれていたのはさっちゃんのおかげだから、偉そうには言えないんだけど。




 ………………………………。



 あ、うん。いや、今のなし。他のこと考えよ。えっとー、うんとー。



 ……あ、格子越しに見える夕日が綺麗だなー。




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