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5. 入学2日目①




 学園生活2日目の朝はすこぶる普通の目覚めとなった。うん、本来こうあるべきだよね。ほんと昨日は身悶えすぎて大変だった。

 ちゃっちゃと支度を済ませて玄関を出る。朝早いこともあって人通りはかなり少なかった。ちなみに、私は学園まで自転車で通うことにしている。自転車で20分。遠すぎるということもなく、近すぎることもなく、ちょっとした運動にはちょうどいい距離だろう。

 自転車のカゴにカバンを入れて、ペダルを踏み出す。まだ朝はちょっとひんやりとしているけど、その風も気持ちいい。うん、なんか今日の私はすごく普通だな。まぁ、たまにはこんな日もないとね。




 上履きに履き替えた私は、一番に購買部に向かった。もしかしたらまだ空いてないかと思っていたが、この学園の購買部のスタッフの方は働き者らしい。もう完璧に商品が並べられていた。驚いたことにすでに他の生徒の姿も見える。私のような人混み嫌いがここにもいたようだ。


 必要なものを抱えて教室に戻る。1年生の教室が1階でよかった。この量を持って3階まで行くなんて冗談じゃない。全ての科目の教科書が中学の比べてに倍くらいある。多分この学園の授業のレベルが高いということも関係してはいるのだろうが、あまりにも重い。絶対置き勉だな、と思いながら私はなんとか教室までたどり着いた。


 教室にはまだ誰もいなかった。誰もいない教室はしんっ、としてて居心地がいい。どこもかしこもこれくらい静かだったらいいのになぁ……あれ?これ《冥王》の野望と被ってる?いやいや、私はちょっと静かになったらいいなー、くらいでさすがに全生命がいなくなったらいいなんてこれっぽも思っていませんとも!

 ……あ、いつもの調子が戻ってきちゃったみたい。


 そんなことを考えながら今日ある科目の教科書を机に、使わない教科書を廊下に並んでいるロッカーの中に入れた。さて、あとは読書でもして真白が来るまで時間を潰────




 って、えーーー!!真白のカバンがある!!!




 誰の姿もないからといって完全に完璧に油断していた!まさかもう真白が来てるなんて!しかも教室にいないということは……。



「……まさか!」



 慌てて教室を飛び出す。目指すは音楽室だ。もしかしたら間に合うかもしれない!




  ……なんて、私のこの鈍足でそんな奇跡が起こるわけない。




 運動不足な私は教室から音楽室まで(途中に階段あり)を駆け抜けたおかげで、軽く呼吸困難になるくらいぜぇぜぇいう羽目になった。人間、無理をするもんではない。

 そして、そんなに急いだにもかかわらず、私の淡い期待は儚くも消え去った。わずかに開いた扉の隙間から見える音楽室の様子。




 ピアノの椅子に座った《吟遊詩人》とその隣に立っている真白。


 《吟遊詩人》との音楽室イベントだ。




 ゲームでは音楽のステータスアップを繰り返していると季節に関係なく起こるイベント。《吟遊詩人》がピアノを弾きながら軽く歌を口ずさむところを目撃するという内容だ。

 残念ながら2人が何を話しているか、ここまで聞こえてこないから、話している内容がイベントと一致しているかは確かめられなかった。しかし、1つ確かなことがある。



 せっかく早起きして学校に来た私の努力が、水の泡とかしたということだ。



 いや、人の少ない購買部に行くという目的もあったからそれは言い過ぎかもしれない。けどけど、昨日夜中にあるアニメを我慢してまで早く寝て、朝早く起きたのは、真白にこのイベントを発生させまいとしてたからっていうのもある。このイベントを発生させないと《吟遊詩人》との恋愛は発展していかない。

 《勇者》の恋を応援をしようと決めた時点でこのイベントの阻止を決意していてたのに、その決意はなんの意味もなしてくれなかった。

 てか、真白なんでそんなに来るの早いんだ!てかてか、まだ入学2日目だぞ!?すでに《王子》との出会い確定、《勇者》は陥落済みで《吟遊詩人》とのキーイベントも起こしちゃうってどういうことだ!?そんなところにハイスペック発揮しないでよー!



 心の中で真白に恨み言を言いながら、ピアノのそばに立つ真白を眺める。窓から差し込む光に照らされた真白。うん、今日もすっごくかわいい。だから許す。



 私は全力疾走(だけど駆け足程度のスピード)したおかげで疲れ切った体を文字通り引きずり、廊下を這うようにして教室に戻った。……人の少ない時間帯でほんとよかった!



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