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7. 新入生歓迎遠足③

2015/12/2 この前の場面がごっそりと抜け落ちてたので割り込み投稿しました。申し訳ありません。




 鈴木君と一緒に公園のかなり奥のほうまで来た。私が去年、一昨年と危ない目にあった場所よりもっと奥だ。これは声をあげても遠足やってる広場には絶対届かないだろうな。

 てか、ずいぶん歩いたけど、全然真白の姿が見当たらない。見失っちゃったのかなと思ったけど、鈴木君はどんどん先に進んで行っちゃうし。もしかして、見失ったって言いづらくてひとまずまっすぐ歩いてるのか?だとしたら、急いで手分けして探すように言わないと。


「ねぇ、本当にこっちであってるの?」

「間違いありません」


 即答ですか。こんな自信に満ちた鈴木君、今まで見たことない気がするんだけど……。けど、全然人が通った気配とかないんだよなー……。

 無理やり連れて行かれてひどいことされそうになってるなら、それなりの音とか声とか聞こえてもいいと思うんだけど。


「もうすぐ公園の端っこだけど……もしかして見間違いってことはないよね?」

「僕が真白先輩を見間違えるはず無いじゃないですか」


 またもやなんという自信だ。それに関して言うなら、私も真白を見間違えない自信はあるけどね!負けないぞ!!……なんて、張り合ってる場合じゃないな。

 それにしてもやばいな。もし、本当に真白が連れて行かれたなら急いで探さないといけないのに……やっぱ他の人も連れてくるべきだった。それもこれも、考えなしに私を引っ張ってここまで突進してきた鈴木君のせいだよ、もう。



 鈴木君の背中に文句をこめた念を送っていたら、突然、彼は足を止めた。



「どうしたの?」


 とまったかと思ったら、下をうつむいてだんまりしちゃった。え?やっぱ見間違いだったとか?今まで意地張って言い出せなかった手前言い訳考えてるとか……?

 もしそうなら勘弁してくれよって感じだけど……まぁ、真白に何もないならそれに越したことはない。さっちゃんとの約束破っちゃったのは怒られるだろうけど、今回は私が悪いんじゃないからね、うん。

 そうと決まればさっさと広場に戻ったほうが良いよね。そう思って鈴木君に声をかけようとした。


「……見間違えるなんてありえないですよ」


 まだそんなこと言ってるんか。別に、見間違いを責める気はないんだけどね。ここまで自信満々で来ちゃったから、言い出しにくいっていうのはわからなくもないけど。名前間違われたりで憎らしくはあるけど、後輩だからな。ここはフォローしてあげてさっさと戻―――――




「あの、憎たらしくて仕方ない女を見間違えられないですよ」




 …………え?えっと……い、今の……聞き間違い、だよね?《暗殺者》ならともかく、こんな思いっ切りモブキャラポジションの鈴木君が、真白に対してそんな言い方するなんて。

 この距離でこんなひどい聞き間違いをするなんて、いかんな。耳だけ急速に老化を始めてしまったのか?と、ともかく、なんていったのか聞き返してみるか……。

 そう思っていた視線の先で、鈴木君はニヤリと形容するしかない不敵な笑みを浮かべる。


 

 その表情のまま鈴木君がパチンッと指を鳴らすと、木の陰から4人の男子生徒が現れた。



 ちょっ……こ、これ……もしかして、やばい感じですか……?さっちゃんとの約束破って移動した挙句、めっちゃピンチに陥っちゃうとか……。そんなことがさっちゃんにばれたら大変なことになっちゃうじゃないかーーーー!!!

 い、いや、待てよ……まだそうと決まったわけじゃない!もしかしたら真白を探すために鈴木君が呼んだ助っ人かもしれないじゃないか!!

 ひとまず、一縷の希望を込めて鈴木君に問いかけてみることにしよう……。


「えっとー……この人たち誰?」

「僕たちは裏勇気ファンクラブです」


 勇気ファンクラブってことは……《勇者》のファンクラブってことか。


「え、てか……裏って……?井之上様達の”勇気様を愛でる会”とは違うの?」

「あんな目障りな集団と一緒にしないで下さいよ。邪で汚らわしい思いを押し付けようとする女どもの烏合の衆とは、天と地ほどの差があります」

「……と、言いますと?」




「僕たちは勇気先輩に純粋な愛情を抱く、神聖な団体です」



 ……つまり、あれか。ガチのあれなのか。




 うん、なんか鈴木君の言葉にすごく誇らしげな顔しつつ顔をほのかに赤く染める男子たち。そうかー……、5人の同性からも同時に愛されちゃうなんて、本当に《勇者》の人気、っぱねーな。

 そういえば、《勇者》が始めて真白に会いにきた時に、そんな妄想をして戯れていた気がするけど……まさかそんな男子が同時に5人も存在していたなんて、さすがの私もびっくりだわ。



「だからこそ、僕たちは勇気先輩に気安く近寄る真白って女を、心底許せないんですよ」



 なるほどね。それなら真白へのヘイトもちょっと納得。っていうか、鈴木君の発言を考えると、もともと女子に対する嫌悪感が高いんだろうな。それが《勇者》と仲のいい真白には割増になってるって感じか。



 まあ、その辺の事情は何となく見えてきたけどさ……問題はなぜに私が囲まれてるのかってことですよ。



「真白が嫌いなこととかその事情とかは呑み込めたけどさ……なんで私をここに連れてきたの……?」

「平尾先輩をたたいたほうが、あの女には効果的だって教えてもらったからです」

「だ、誰から!?」

「それは秘密です」


 秘密、ねぇ……。そんなこと吹き込むのはまぁ、間違いなく《冥王》か《王子》だろうな。あいつらの場合、タダ単に私のこと再起不能にしたいだけだろうけど……。

 それで、鈴木君は真白が連れていかれたなんて嘘をついて、私1人をここまでおびき寄せたってことか。真白の名前を出せばのこのこついてくるっていうのも、《冥王》か《王子》が吹き込んだんだろうな。



 つか、今は冷静にそんなこと分析してる場合じゃないわ。



 今の会話から、この状況はめちゃくちゃピンチってことが確定してしまった。喧嘩止めに行く《暗殺者》に動かないから大丈夫的なこと豪語してきたのにだよ……。それなのにのこのこ移動してこんな状況に追い込まれちゃって……《暗殺者》が鬼神のごとく怒っている姿が目に浮かぶんですけど……。




 今すぐ、タイムマシンであの時に戻って自分に強く忠告してやりたい。



 新入生歓遠足は完全に不吉フラグ化しちゃってるよ!って……。




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