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4. 始業式




 春休みが終わって今日は最初の登校日。つまり始業式。とうとう私も3年、つまり受験生となってしまった。今年はガチで勝負の年。ゲーム、アニメ、漫画三昧人生への第二関門がすぐそこまでやってきている(第一関門は高校受験ってことで)。

 新年早々大凶とか引いちゃうわ、《冥王》は降臨しちゃうはでひどい出足だったけど……。なんもしなかったら、それこそなんも変わらないで終わっちゃうからね!おみくじの内容なんかにへこたれないでしっかり勉強するぞ!!!

 ってな感じで気合いを入れてたら、始業式はあっと間に終わった。



 そして、そのまま新任教師の紹介へと移行する。



「最後に、保健医として1月から赴任されてきた久永空人先生です」



 《冥王》も紹介された。年度の途中にやってくるなんて異例だから、始業式にまとめて紹介することになったらしい。

 こっちは沈痛な心持ちだって言うのに、女子から黄色いが上がったりしてる。非常に複雑な気持ちにさせられるよ。知らないって本当に幸せなことだと思う。

 思わずため息を付きながら壇上で会釈する《冥王》を見る。ぱっと見ただただ不健康そうなイケメンにしか見えないんだけどねぇ。

 去年は新任できた巻駒って先生が《冥王》かと疑ったりしてたけど、まさか本当に《冥王》があそこに立ってるのを見ることになるなんて……。受験もあるし気は重いけど、あいつの好きになせないようにこっちもしっかり気を張っていかないとね!



 ちなみに、今年は真白とだけ同じクラスだった。クラス分けの神様はこの3年間常に私の見方だったようだ。哀れなのは一度も一緒のクラスになれなかった《勇者》。クラス分けの神様にちゃんとお供え物をしないからこんなことになるんだよ、ドンマイ。

 ちなみにちなみに、担任はまたもや《吟遊詩人》だ。


「さっちゃんは何組になったの?」


 始業式が終わって新しい教室を目指す。隣で歩く《暗殺者》にたずねるとなぜか不機嫌そうな表情を浮かべる。


「知らねえ」

「え、知らないって……」

「奈美と同じになることなんてないんだし、興味ない」


 どんな理屈だよ!てか、今からホームルーム始まるのに、どうする気なんだ!?興味ないとかそんな問題じゃないのに……まぁ、2年の教室の前うろちょろしてたら先生が声かけてくれるよね。

 迷惑かけて、本当にゴメンナサイ。……って、別に私が悪いわけじゃないんだけどね、なんとなく謝りたい気分になったんだよ。



「あ、てか、思ったんだけどさ」

「ん?」

「最近襲われることもなくなったよね」

「そうだな。俺がもみ消すような動きも今はなくなってるな」



 もみ消すって……。裏社会チックな言い方しなくてもいいじゃん。実際、私が襲われないようにって事前にいろいろと手回ししてくれてるのは確かだから、間違ってはないんだろうけどさ……。

 それにしても、登山以来特に目立った行動は見られない。《冥王》いわく、あれは陽動だったらしいから、もしかしたらもうあぁいう手は打ってこないつもりなのかも。



 だからね、私は思うんですよ。そろそろ《暗殺者》にべったりも卒業していいんじゃないかなぁって。



 前に比べたら一緒にいるのがやだなとか思わなくなったけど、私もとうとう受験生な訳だし。勉強の邪魔された訳じゃないけど……ほら、学校で1人になりたい瞬間も出てくるんじゃないかなぁ、とか思ったりするわけですよ。


「あのー、だからね、さっちゃん」



「なんだ?」



 うっ……この無駄ににっこにこな癖に、後ろに影の見えるこの笑顔は……言いたいこと筒抜けってことですか。そして、ざけんじゃねぇぞ、それ言ったら本気で怒るからなってことですか。

 1年も経つと、表情だけで大体言いたいことがわかってくるようになってきましたよ。地雷ポイントとかは相変わらず謎のままなんだけどね。

 ともかく、さっちゃんのほうは全くひっつくのを止めるつもりはないらしい。私に決定権はないのでここはおとなしく引き下がっておく。


「……なんでもないです」

「《聖女》の記憶取り戻そうとしてるのを邪魔だと思うなら、また奈美が狙われる可能性はあるだろ」


 あ、やっぱ言いたいことばればれだったみたい。確かにそれも一理あるんだけどさー……さっちゃんにロックオンされてから、そろそろ1年なんですよ。

 

「さっちゃんの言ってることはもっともだと思うけど……」

「けど、何?」

「そろそろ飽きない?」

「全然」

「……なら、いいんだけど」


 即答ですか。まあ、さっちゃんが良いって言ってくれてるなら良いんだけどさ。私なんかとばっかりつるんでないで、もっと友達作ったりすれば良いのに、と思ってるのも本当なんだけど。

 


 来年は私も《魔王》卒業して、さっちゃん1人になっちゃうんじゃないかって、ちょっと心配なんだよ。



 まぁ、余計な心配なんだろうけどさ。やっぱ1人っていやじゃんねえ?避けるに越したことはないんじゃないかなーって思うんだけど……。



「もう、1年経つな」

「え?あ、うん。そだねー」



 突然足を止めてそんなことを言う《暗殺者》。廊下からすでに葉っぱがちらほら見える桜を見下ろしてるみたいだ。

 去年もそうだったけど、今年も入学式に見えるのは緑色の混じった桜ばっかりだろうな。



「奈美のことは、俺が守るから」



 ん?どうしたんだ?なんかすごい哀愁漂う顔でこっち見てるんですが……。この1年のことでも振り返ってたのかな?

 考えてみればここまでいろいろあったもんね。さすがの《暗殺者》もこんな感じになっちゃうのは無理ないのかも。



 来年もこんな風に1年経ったねって笑えるように、絶対に《冥王》の思い通りになんかさせないんだからね。




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